| 教壇に立つ教授らしき人物が淡々と書類を読み上げている。重要な連絡でなければ退屈で眠ってしまいそうな単調な声だ。 ポイントポイントをメモしながら、月は隣に座った人物をちらりと盗み見た。 流河、Lと名乗るこの男は、話は真面目に聞いているようだが書類を机の上に広げたままメモを取る気配はない。 よほど記憶力に自信があるのか、それとも大学に入った目的が月の監視だから大学の規則などどうでもいいと言うことか。 ガイダンスが終わって学生達がぞろぞろと講堂を出て行く。月も書類や筆記用具を片付けはじめると、それまで黙っていた流河が口を開いた。 「夜神君」 「何、流河?」 「あの方は何を説明していたのですか」 「…は?」 月は一瞬耳を疑った。 ちょっと待て。お前も全教科満点でこの東大に合格したんじゃないのか。 絶句している月を前に彼は恥ずかしそうに頭を掻いた。 「日本の大学は初めてなので一生懸命聞いていたのですが、良く分からなかったので…」 「えーと、まずは卒業の条件、それと試験の日程、それから受講したい授業の選択…」 月は一度片付けた書類をもう一度取り出した。 ざっと説明すると、流河は今度は理解できたらしく素直に頷いた。 「ありがとうございます、良く分かりました。あの方も最初から夜神君のように説明してくれれば、私も理解できたのに」 「うーん…教授って言うのは研究が仕事だから。説明はあんまり得意じゃないのかもね」 「…先が思いやられます」 それは僕のセリフだよ、と月は胸の中でそっと呟いた。 数日後。 一限目の授業を終えた月はあえて休講になっている二限目の教室に向かった。 全教科満点で入学、という肩書きのおかげで注目を集めることが多いので、一人になりたい時は休講の教室と言うのは穴場なのだ。 ガラッと教室のドアを開けて、月は顔を引きつらせた。 いるはずのない先客がいた。 「ああ、夜神君」 「流河…どうしてここに?」 「どうしてって…二限目はここで授業ではないですか。誰も来ないので変だなぁとは思っていましたが」 「…………」 月は本気で頭が痛くなって来た。 いくら日本の大学が初めてだからって、『休講』の意味すら分からないのか?それとも僕を試しているのか? 「夜神君?」 「流河、掲示板は見たか?」 「はい、見ました」 「休講のお知らせを見なかったのか?」 「見ましたが」 流河は親指を唇に当てて首を傾げた。 「『休講』の意味が分からなかったので、どんな授業内容なのか知りたくて楽しみにして来たのです」 「…………………………」 「夜神君?」 「あのなぁ、流河…………」 ああ、頭が痛い。 僕が闘っている『L』とはこんな奴なのか?世界警察トップがこれでいいのか? 月は軽いめまいすら感じながら言葉を押し出した。 「『休講』って言うのは、『都合により授業はお休みします』って意味なんだよ…」 |
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