| 「できたできたっ」 弥子が数種類の料理を山のように皿に盛って台所から出て来た。漂う香りは食欲を刺激されるそれなのだろうが、あいにくと人間ではないネウロにはその魅力は分からなかった。 既に応接スペースに用意してあった炊飯ジャー(それにしても妙な構図だ)から飯をよそって、弥子は幸せそうな顔で手を合わせた。 「いっただっきまーす!」 平均よりも細いはずの体の一体どこにあれだけの食糧が入るのか、いつもの事ながらネウロは半ば呆れ半ば不思議そうに弥子の食事風景を見ていた。腹の膨れない謎であったから深く追求する気にもなれないが、それにしても謎だ。 本当に幸せそうにずらりと並んだ料理を胃袋に入れながら、弥子はネウロを見遣った。 「やっぱりさ、ご飯はひとりで食べるより皆で食べた方がおいしいよね」 「そうか?」 「そうだよ。家で一人でTV見ながら食べるより、ここでネウロやあかねちゃんと喋りながら食べた方がずっとおいしいもん」 「そんなものか…」 分かったような分からないような顔をしているネウロに、お変わりをよそいながら弥子は続けた。 「ネウロだって、一人で食事するより誰かと一緒の方がおいしいでしょ?」 「…考えたこともないな」「 だから、ネウロが食事する時は、私が側にいてあげるね。そしたらきっと、倍おいしくなるよ」 「………」 ネウロは一瞬呆気に取られたように眼を丸くして、そして笑い出した。 どうして笑うのか分からずにきょとんとする弥子の前で、ネウロは心底おかしそうに声を出して笑っている。 「…何?どうして笑うのよ」 「全く…人間の考えることは面白い」 親しい者が近くにいるだけで食事の味が変わるなどと、魔界生物は考えもしないだろう。 人間は不思議で、不可解で、非力で、複雑で、不器用で、非合理的で、深い謎に満ちている。 だからこんなにも、彼の興味を惹いてやまないのだ。 深い深い闇の奥に慈愛を隠して、ネウロは目の前の人間の食事風景に視線を戻した。 なんて愛おしい、ちっぽけな人間よ。 |