真実の行方
西暦2032年??月??日  サイキッカー部隊基地研究棟

 マイトに背を向けたまま刹那は叫んだ。…顔を見る事は出来なかった。

「さぁ行け!マイト!!」
「……っ!」

 マイトが結界の脇を駆け抜けるのが見えた。
 親友は振り向かない。ただ前だけを見て全力で走っていった。

(一緒に行けなくて…ごめんな)

 深紅の瞳に深い悲しみを沈めて刹那はその背中にテレパシーを送った。
 …返事はない。
 一度眼を閉じて彼は目の前の創造主を見据えた。
 勝てる相手ではない事は百も承知、マイトが時空を超える機械に辿り着く時間さえ稼げれば。
 身構える様子すら見せないウォンに刹那は唇をまげた。

「…余裕だな。慌てて俺を倒さなくてもマイトを止める自信があるということか」
「………。上官に対する口のきき方がなっていませんねぇ…」
「何を今更」
「馬鹿な真似はやめなさい、刹那。今あなたが大人しく引き下がるなら、何も見なかった事にしてあげます」
「随分と寛大なお言葉だな」

 そんな言葉が信じられるか。
 本心ではそう思ったが、おしゃべりで時間が稼げるなら儲けものだ。
 警戒をとかない刹那にウォンはため息をついた。

「いいですか、刹那。あなたはまだ軍規を犯してはいませんし私に反逆もしていません。タイムマシンの噂を聞いて好奇心を押さえ切れず覗きに来ただけなのですよ。ですから現時点ではあなたを処分する理由はありません。わざわざ己の首を絞めるような行動は慎みなさい」
「パティの死もマイトの犠牲も見て見ぬ振りをしろと言うのか」
「いつ誰が、パトリシアを『殺した』と言いましたか?」
「………」

 刹那は眼を見開いた。
 ウォンがパティと同じ色の髪を持っていた事と話の流れで彼女は殺されたと思い込んだが、確かに殺したと断言されてはいない。
 幾つかの言葉と状況が、刹那にひとつの答えを導かせた。
 …まさか。

「あんた…もしかしてマイトに歴史を変えて欲しかったのか?」
「……。全く…初代の刹那といいあなたといい、どうしてそういう勘だけは鋭いんでしょうね」

 ウォンは刹那から視線を逸らして苦くため息をついた。
 事実上の肯定だった。
 しかしそれはマイトを見逃す理由にはなっても、マイトと刹那を引き剥がし、過去の存在とは言えウォンを殺そうと考えた刹那を見逃す理由にはならない。
 たった今彼自身が言ったではないか、『主に逆らう作品を処分しない理由がどこにあるのです』と。
 油断なく睨み付けて来る刹那に、ウォンはもう一度ため息をついた。

「分かりませんか?私はあなたを失いたくないのですよ」
「何…?」
「経緯はどうあれ、あなたはブラドが私に遺して行った、いわば彼の忘れ形見なのですから」
「…………」
「刹那。疑問に思った事はありませんか?何故自分だけ10年以上生きているのか。他の『刹那』を見た事がないのは何故なのか。誰もオリジナルの刹那を見た事がないのは何故なのか。そしてブラドは何故、自分をあんなにも可愛がっていたのか…その理由、知りたくないですか?」
「…………」

 刹那は押し黙った。
 確かにそれは彼にとって長年の疑問だった。ブラドが目をかけてくれた理由は、彼の親友だった初代の刹那に似ているからだろうと何となく思ってはいたが…それだけでは説明できない事もあった。
 沈黙を肯定と解釈したウォンはゆったりと背中で手を組んだ。

「マイトはもう過去の世界に旅立ったでしょう。結界を解きなさい、刹那。答えを教えて差し上げます」
「…………」

 マイトの気配を探ったが、もう感じられなかった。
 少なくとも時を超える機械には乗れたのだろう。
 ウォンを足留めする理由がなくなったので刹那は結界を解いた。

「こちらです。ついていらっしゃい」

 歩き出すウォンの後を大股に追い掛けた。

 

 ウォンが向かったのはブラドの私室兼個人研究所だった。
 懐かしい場所だった。十数年前、刹那はここで生まれたのだ。ブラドが失踪してから一度も足を踏み入れていなかったが、何もかも当時のままだった。
 ウォンは研究所の一番奥にある厳重な扉のロックを解除して刹那を呼んだ。

「刹那。この扉を開けて御覧なさい」
「………」

 刹那はウォンを睨んで扉に手をかけた。
 この研究所で生まれ、頻繁にここを訪れていたにもかかわらず、一度も見た事がない扉の向こうには。
 …自分がいた。
 一瞬そう錯覚した。
 天井まで届くカプセルの中に、刹那と全く同じ姿形の男が佇んでいる。
 金色の髪、薄い蒼の眼、真っ白な軍服。初代の刹那だ…と直感した。
 カプセル一杯に満たされた特殊な液体の中で、初代の刹那はふわりと浮いていた。
 薄く開いた唇と伏せた眼は、何だかひどく………。

「悲しそうな顔をしているでしょう」

 ウォンが言った。
 見ると、いつもつかみ所のない微笑みを浮かべている彼が悲しそうな顔で初代の刹那を見ていた。

「刹那が最後に感じたのは『悲しさ』だったのですよ。己を殺した私に対する怒りではなく、ね」
「どうしてそう断言出来るんです」
「眼の色ですよ」
「……?」
「初代の刹那は、感情によって色が変わる不思議な眼をしていました。普段はダークブルー、怒りなどで感情が昂ると紫に、悲しい事があって気持ちが沈むと薄い青になるのです」

 刹那は改めて初代の刹那を見た。
 金色の髪の陰に見える瞳は確かに薄い青をしている。彼が悲しみを抱いて逝った何よりの証だった。
 刹那は眼を眇めた。
 初代の刹那はウォンに反逆して殺されたらしいが、彼はウォンの相棒、ブラドの親友だったはずだ。ウォンに反逆する理由があったとは思えないが、一体何が原因だったのだろう?

「…司令官、教えてくれ。初代の刹那はあなたに反逆した原因は何だったんだ?」
「私達は『我々の対等な同志としてあなたを仲間に迎え入れる』と刹那に言いました。にもかかわらず、私が彼を道具扱いする発言をしたので猛反発したのですよ」
「何故そんな事を言ったんだ?初代の刹那の寿命はどっちみち長くなかったはずだ、それなら最後まで仲間として接した方が都合が良かったんじゃないのか?それに、親友を道具扱いされたらブラドさんだって嫌だろうし」
「無論、私もそのつもりでした。…全ては予想外で、初代の刹那の死は不幸な偶然が幾つも重なってしまった結果なのですよ」
「一体、何があったんです?」
「あの日…新生ノアを滅ぼして今後の方針を話し合うはずだったあの日……」

 白い手袋を填めた手をカプセルに食い込ませるように強く掴んで、ウォンは血を吐くような悔恨を込めて言葉を吐き出した。
 強すぎる感情が思い出す記憶は刹那にも視えた。
 金と赤で彩られた部屋の中、金色の髪とダークブルーの眼の男の姿。

「ブラドは所用があって約束の時間になってもまだ来ていなくて、私と刹那はブラドが来るのを待ちながら今後の方針を話し合っていました。話し合うと言って も真面目な意見交換ではなく雑談のつもりでした。その雑談中に刹那はこう言ったんです。『いい機会だから司令官も腹黒悪人キャラを演じるのは辞めて、素の 自分に戻ったらどうですか?むしろこれが最後のチャンスだと思いますけど』とね」
「…キャラ?」
「私だってね、『いい人になりたい、いい人だと思われたい』という人並みの願望はあるんですよ。しかし『いい人』では生きていけない、生きる為には悪人で なければいけない、そんな世界で30年以上も暮らして来たのです。今更『悪人を辞めていい人になります』と言ったところで誰が信じてくれるのか。『良い人 になりたい、良い人だと思われたい』という願望と苦悩は、誰も知らない私とブラドだけの秘密でした。なのに刹那は、私とじっくり話す機会などほとんどな かったにも関わらず、私の心の奥底にある願望に気付いていたのです」

 初代の刹那といいあなたといい、どうしてそういう勘だけは鋭いんでしょうね。
 先ほどの言葉はこういう意味だったのか。
 ウォンは強い悼みを浮かべた表情で淡々と続けた。

「心を見抜かれた事に私は冷静さを失い、動揺し、狼狽え…思わず口走ってしまったのです。『黙りなさい。道具は道具らしく、余計な事を言わずに私の指示に 従っていればいいのです』とね。その時の刹那の顔は今でも鮮明に覚えていますよ。彼は紫に染まった眼で私に尋ねました。『それが本音か?俺は道具のひとつ に過ぎないのか?』と」
「…それで、あんたは何て答えたんだ」
「何も言えませんでした」
「………」
「私は自分でも驚くほど動揺していて、正常な判断が出来なくなっていました。今でも悔やまれてなりません。即座に発言を撤回し謝罪していれば、私に挑んで 来た刹那の相手をしなければ、ブラドが来るまで刹那に反撃しなければ…歴史は変わっていたかもしれないとね。後から悔やむから後悔、よく言ったものです」

 ウォンは寂しげに自嘲した。
 ぼんやりと視える、歴史を決めたその日の記憶。
 己の存在意義とプライド、全てを賭けて、掛け値無しの本気で戦いを挑んだ刹那を時の大剣が貫き、12本の短剣が襲う。吹き飛ばされて結界に叩き付けられた彼が崩れ落ちて動かなくなる。同時に部屋に入って来たブラドの顔色がさぁっと変わった。
 ウォンは独り言のように言葉を吐き出す。

「刹那が倒れて動かなくなった時、私は目の前の現実が信じられませんでした。部屋に入って来たブラドが倒れた彼に駆け寄って泣きじゃくるのを、ただ突っ立って呆然と見ているしか出来なかったのです」
「それで、ブラドさんは?」
「泣きながら刹那の名前を呼んで、必死に蘇生しようとして、しかし既に手遅れで…亡骸に縋って随分長い間泣いていました。ブラドは刹那の死を悲しんだ…それだけでした」
「…『それだけ』?」
「何があったのか尋ねる事もせず、何故こんな事をしたのかと問い質す事もせず、何て事をしてくれたと私を責める事もせず、ただ、刹那の死を悲しんだだ け…。それが逆に私は辛かった。私と彼の間には決定的な溝が出来てしまったのだと嫌でも気付かされましたからね。あの時刹那はブラドの心の中で永遠にな り、私は彼に見捨てられたのです」

 刹那。
 時の一瞬を表す名を持った彼は親友の心に永遠に残り、時の支配者は唯一の理解者から切り捨てられた。
 悠久が刹那に敗北したのだ。

「そしてブラドは刹那の亡骸を自分の研究所に運び込み、そのまま研究所に閉じこもりました。新生ノアが崩壊してサイキッカー部隊のこれからを決める重要な 時期に、自他共に認める善人の彼は表舞台から降りてしまった。舞台上に残されたのは自他共に認める悪人の私、一人だけ。それでも私は必死に努力しました。 ブラドが望んでいだ『サイキッカーが平和に暮らせる世界』を造れば、大きなヒビが入った私達の関係を修復出来るかもしれないと思って…計画を邪魔しそうな ものを徹底的に排除し、自分達が脅かされないように力を貯え、飼い犬に手を噛まれないように忠実な兵隊を造り出して…。そして、ブラドがようやく研究所か ら出て来た時には、この国は私達が望んでいた姿とは遠くかけ離れた歪んだ独裁国家になっていました」
「そんなになるまでブラドさんは何も言わなかったのか?」
「私がしている事は定期的に知らせていましたが、何も言ってはくれませんでした。彼の事ですから、手を出さないのに口を出すのは卑怯だとでも思っていたのでしょう」
「それにしても、国ひとつの仕組みを変えるには相当な期間が必要だと思うが…。ブラドさんは一体どのくらい研究所に閉じこもっていたんだ?」
「初代の刹那が死んでからあなたが生まれるまでですよ」
「な……」

 刹那は息を呑み、驚愕に眼を見開いた。
 ウォンは静かに彼を見ている。
 初代の刹那の死、その亡骸を研究所に運び込んだブラド、そしてブラドの研究所で彼によって生み出された自分。
 震える声を押し出した。

「…つまり、俺は………」
「もうお分かりでしょう?ブラドが失った親友を取り戻そうと生み出した、初代刹那のクローンなのですよ」
「………!」
「初めてあなたに会った時は心臓が止まる程驚きました。髪と眼の色が違うだけでまさに私が殺した刹那がブラドの隣にいたのですから。今でも、不意にあなたの声が聞こえるとドキリとしますよ」

 全ての疑問に答えが出た。
 自分以外の刹那が存在しない理由。オリジナル刹那を見た者がいない理由。他の人工サイキッカーより遥かに長く生きている理由。ブラドが可愛がってくれた理由。ウォンが彼を失えない理由。
 刹那は、マイトや他の人工サイキッカーとは根本的に違うのだ。
 あなたの変わりはいないのだから。
 ウォンの言葉はそういう意味だったのだ。
 言葉を失う刹那にウォンは寂しげな笑みを見せた。

「ですがあなたは、私が殺した刹那ではない。ブラドの親友の刹那ではない。姿形、声、性格、仕種、気性までも初代の刹那と全く同じ…それでも彼とあなたは 違う、別人なのです。仮に初代刹那の記憶をあなたに植え付けたとしても、決して同一の存在にはならないでしょう。ブラドもそれを分かっていたからあなたの 髪と眼の色を変えて生み出したのでしょうね」
「そうか…そういうことだったのか……」

 刹那は深紅の眼を伏せた。
 自分のオリジナルに手を伸ばしてカプセルに触れる。
 …今でもはっきりと覚えている、ブラドが失踪する前日に彼に見せた寂しそうな顔、不思議な言葉。

『僕は君に謝らなくちゃいけない』

 何の事だか訳が分からなかった。
 怪訝そうな顔で首を傾げる刹那の姿、その仕種に彼はますます悲しそうな顔になった。

『外見も声も性格も、何気ない仕種まで君は初代の刹那とそっくり同じだ。本当に、本当によく似てる。でも、やっぱり、君は僕の知ってる刹那じゃない』
『俺と初代の刹那は別人なんだから、それは当たり前でしょう?大体、同じオリジナルから生まれたクローンだってそれぞれ性格が違うんだし』
『うん、そうだね。そんな事は最初から分かってた、だから君の眼と髪の色は刹那と反対にしたんだ。そう、僕は、分かっていた。はずだった、のに…』
『ブラドさん?』

 ブラド『さん』か…と呟いて、刹那の創造主は心が痛くなるような笑顔で眼を伏せた。
 無理矢理に微笑んだ唇と握りしめた拳が小刻みに震えている。
 理由も原因も分からないが、ブラドは苛立ち腹を立てているらしいと感じた。
 か細い声で彼は続けた。

『分かってる、それでも僕はどうしても期待しちゃうんだ。明日になったら、僕の知ってる刹那がいるんじゃないかって。そして毎朝、分かり切った事実にがっ かりするんだ。もう何年も、僕は刹那がいる事を期待して、刹那がいない事にがっかりしてる。僕の親友だった刹那は僕の目の前で死んだのに、まだ諦め切れず にいる…』
『……………』
『ごめんね刹那。君と初代の刹那は別人なのに、僕は勝手に君を生み出して、勝手に君と初代の刹那を重ねて見て、君達は別人だと気付いては勝手に苛立って…。僕はそんな自分に我慢できなくなったんだ』

 刹那の創造主は、言葉を失う彼の前で涙を零して謝罪した。
 あの時のブラドの言葉と顔は忘れられない。
 最後にもう一度『本当にごめんね』と言い残し、彼は新生ノアの残党鎮圧に出撃し…そして帰って来なかった。
 紅い眼の刹那の心にしこりを残したまま、本当の事は何も告げずに、全てを一人で抱え込んで。

「自分に我慢が出来なくなった…彼らしい言い方ですね」

 刹那の記憶を視たのだろう、ウォンが呟いた。
 金髪の刹那になれない銀髪の刹那、歪んでしまった世界、変われなかったウォン。理想郷の夢の残滓のような世界に耐え切れなくなったブラドは、『自分に我慢できなくなった』という言葉で理想から遠く離れた現実を捨てたのだ。
 しかし…とウォンはカプセルに触れた。

「私はまだ諦めていません。この世界を歪みから強制することも、ブラドが帰って来る事も」
「ブラドさんが帰って来るって…何を根拠に?」
「ここに『刹那』が残っているからですよ。親友の刹那と自ら生み出した刹那、二人を完全に捨てられる程ブラドは非情ではないし、無責任でもない」
「………」
「それに…過去に行ったマイトだって帰って来るかも知れませんよ」
「さっきの『過去に行けても戻って来るのは不可能』って台詞も嘘なんだな」

 刹那は横目でじろりとウォンを睨んだ。
 過去に行けたとしてもこの時代に戻って来る事は不可能、過去の世界で待っているのは遠からぬ死。
 さっきは雰囲気に飲まれてそんなウォンの言葉を信じてしまったが、試運転すらしていないのにそんな事が断言出来るはずがない。
 ウォンはしれっと答えた。

「人聞きの悪い事を言わないで下さい。『試してないから分からない』だけです」
「つまり嘘だろうが」
「手厳しいですねぇ…」
「じゃあマイトが帰って来るとしたら、どの時点に帰って来るんだ?過去に行った時間か?それとも過去の世界で過ごした時間がこの時代でも経過してからか?」
「ですからさっき言ったでしょう?試運転すらしていないから何も分からないと。現時点ではっきり分かるのは、私とあなたが本気で戦う事に何の意義も意味も無いと言う事だけです」
「………」

 刹那は複雑に黙り込んだ。
 ほんの少し前まで心を支配していたウォンに対する憎悪や敵愾心は気付けば綺麗に消えていた。むしろ沈みかけていた心を軽くしてもらったとすら思う。
 つまりは彼が命がけでウォンと戦う理由がなくなったのだが、死を覚悟してマイトを送り出したのにこれでは拍子抜けだ。戦う覚悟が行き場を無くして戸惑っていた。
 そんな彼の内心のモヤモヤを察したのか、ウォンが口元に薄く笑みを浮かべた。

「あなたが御希望なら、模擬戦の相手をして差し上げますよ」
「……。偉そうに」
「ええ、偉いですから」

 ふざけた返事に刹那が眉根を寄せて唇をねじ曲げた時。
 ドォォーーーーーン!!
 轟音が響いた。
 …刹那は返事を保留して研究室から廊下に出た。
 職員達が慌ただしく動き回っている。どうやら轟音はウォンの私設研究所で起きたらしい。
 手近な職員を捕まえて尋ねた。

「おい、凄い音がしたが何かあったのか?」
「聞いた話ですけど、研究所に雷が落ちたらしいんですよ」
「は?室内で雷?」
「電気系統のトラブルじゃないかと思うんですけどね。ウォン司令官の私設研究所ですから、雷の能力を持つサイキッカーが暴走したとも考えられないし…」
「……!」

 刹那はハッとした。
 ウォンの施設研究所にはタイムマシンがあったはずだ。雷の能力を持つマイトはそれを使って過去に行った。
 そして今、タイムマシンのあった場所に雷が落ちたと言う事は…。
 まさか。ひょっとして…。
 わずかな希望の可能性を信じて、刹那は雷が落ちた研究所に向かって走り出していた。

END
  



サイキ部屋
総合目次


 10年前は、マイト主役小説の外伝として入れた話です。最初、刹那の小説を出した時は『パティも刹那もウォンに殺された』という考えで話を書いていまし た。が、マイトと刹那の因縁を気にいってくれた方がいらしたので二人がまだ生きている可能性を示唆する話を作ろうと思ったのこのエピソードです。小説本編 では残っていた謎をこっちで解明してみました。ブラドの失踪の理由、ウォンが初代刹那を殺した理由、そして銀髪刹那の正体。
 書き始めた当初は、『この世界の未来もまだ変えられる』からと、刹那とウォンが闘うという結末で〆ようと思ってました(10年前に出した本の外伝では、 刹那とウォンの対決で終わりました)。が、書いているうちにだんだん話が逸れて来て、こんな結末に…あれぇ?(笑)無論、マイトが帰って来たとは限らない し、帰って来ても生きているかどうか分からないし、ウォンは言葉を濁していましたがパティが生きている証拠もない…というわけで結末は御自由に想像して下 さいって感じで終わらせてみました。