拍
手お礼SS・2012
| 聖域との和解が成立してしばらく。 激変した地上に対する好奇心を押さえきれないタナトスは足しげく地上に通い、目に付き気に入ったあれこれを次々と冥界に運び込んでいる。さほど地上に興 味のないヒュプノスの神殿にもテレビとゲーム機が導入された程だ、タナトスの神殿など言わずもがな…そんな、平和なある日。 冥王ハーデスが片手に酒、片手にラブロマンス映画のDVD(名作らしい)を持ってヒュプノス神殿を訪れた。 ヒュプノス 「ハーデス様!お体はよろしいのですか?」 ハーデス 「今日は調子が良かったのでな、散歩を兼ねてアポ無し訪問だ。…という訳でヒュプノスよ、妻がいるのに何故か事実上ヤモメな男同士で酒を酌み交 わすと言うのはどうであろう?(にっこり)」 ヒュプノス 「それはそれでアリではないでしょうか(微笑)」 名作と噂のラブロマンス映画は、主人公とヒロインが泡だらけの風呂に一緒に入るシーンに差し掛かっている。それを見ながらハーデスは何気なく呟いた。 ハーデス 「タナトスとヘカーテも今頃こんな事をしているのかも…というのは考えすぎか。帰ってきたら聞いてみるかな、フフフ(酔)」 ヒュプノス 「は?何ですか、それは」 ハーデス 「お前は聞いていなかったのか?タナトスの此度の地上行きにはヘカーテが同行しているぞ」 ヒュプノス 「初耳です…何故ヘカーテ様が?(何故か焦ってる)」 ハーデス 「地上に行く時はタナトスひとりか連れがいてもお前かエリスばかりなので、天馬星座に『タナトスサマ、こーゆーことに付き合ってくれる彼女もい ねーの?』と聞かれたらしい」 ヒュプノス 「はぁ…それでヘカーテ様を…(呆)」 ハーデス 「『ヘカーテ様を同伴すればぐうの音も出なかろう!』と息まいておったぞ」 ヒュプノス 「(ちょっと安心しつつ)タナトスの見栄に付き合わされて、ヘカーテ様は何とも思っていないのでしょうか」 ハーデス 「ヘカーテ様を同伴するからにはそれなりにもてなしをしなければあとが面倒、と言って計画を立てていたから要らぬ心配ではないか?カブキという 演劇を鑑賞して、アテナお勧めのレストランで食事をして、天馬星座達と飲みに行って、有名ホテルに宿泊して、地上で一番人気の遊園地で遊んでくるらしい ぞ。そうそう、余は土産にネズミのぬいぐるみを所望したのだが…(にこにこ)」 ヒュプノス 「ちょ…ハーデス様、それはまるでデートではないですか!(真顔)」 ハーデス 「……ヒュプノスよ…真顔でそういうコメントをするから、お前は『小姑』とか『通い妻』などと揶揄されるのだぞ…」 ヒュプノス 「…………」 |
| 冥界と聖域の和解が成立してしばらく。 星矢達と、彼らの誘いに快く応じた双子神が庶民的な居酒屋で(思いっきり異彩を放ちつつ)酒を飲み交わし、程良く軽い酔いが回った頃。 星矢 「そーいやお二人さん、前にも日本に来たことあったって言ってたっけ」 タナトス 「前聖戦の頃だから三百年ほど前だな」 星矢 「特別印象に残ってる神様とか、誰かいる?」 双子神 「………(微妙な顔で顔見合わせ)」 星矢 「お、いるんだ!誰?誰?」 双子神 「「(…かなり微妙な間…)アメノウズメだな」」 その返答でなんとなーく理由を察したのは一輝と瞬、きょとんとしているのは星矢。 星矢 「アメノウズメって、メガテンのゲームに出てくる女神だよな。天照大御神が天岩戸にひきこもった時に岩戸の前で舞いを踊ったって言う」 タナトス 「やはり彼女は踊り子なのか。…しかし…(複雑な顔)」 瞬 「一体どういう経緯で彼女が印象に残ったんです?」 ヒュプノス 「当時の冥闘士に日本出身の者がいてな。彼から話を聞いて日本に興味を持った我々は、高名な神が住むという場所まで出向いたのだ。そこで我々 を最初に出迎えたのがアメノウズメだった。いや、『出迎えた』というより『偵察に来た』と言った方が正確か…しかし凄まじいインパクトであった…(遠い 目)」 星矢 「??一体どんな出迎え方だったんだ?」 タナトス 「いきなり服を脱いで上半身裸になって、かなり際どいところまで服をずり下げてから『お前達は何者だ、名を名乗れ!』と言ったのだ。流石の俺も 度肝を抜かれたぞ。あの行動にどんな意味があったのか、未だに分からぬ」 星矢 「………(口あんぐり)」 瞬+一輝 「(大体予想通りだと思いつつ)それで?」 タナトス 「余りに驚いたせいで、『我々は怪しい者ではない』などと胡散臭いセリフを口走ってしまってな。即座に『怪しくない者を自称する時点で十分怪し い』と返されて…危うく『いきなり脱ぐお前も十分怪しい』と言うところだった」 ヒュプノス 「まぁ、正直に我々が名乗りを上げて訪問の理由を告げたら、すんなりと納得して服を着てくれたのでほっとしたがな」 タナトス 「その後、他の神々も一緒に我々を歓迎する宴を開いてくれたのだが、アメノウズメはまた脱いで踊っていた」 ヒュプノス 「他の神々は何も疑問に思っていないようだったので、我々は『アメノウズメは脱ぎたがりの女神なのだ』と無理やり自分達を納得させて帰って来 たのだが…この認識は正しいのだろうか?」 …眠りの神の真剣な質問に答えられる元聖闘士はいなかった。 |
| 冥界と聖域の和解が成立してしばらく。 星矢達と、彼らの誘いに快く応じた双子神が庶民的な居酒屋で(思いっきり異彩を放ちつつ)酒を飲み交わし、程良く軽い酔いが回った頃。 星矢 「なーなー神様、和解の記念って事でさぁ、日本の不況を何とかしてくれちゃったりしてくれませーん?」 タナトス 「無理だな、管轄が違う」 星矢 「んーな二つ返事で却下しないでくれよー。おふたりさんに無理でも、知り合いにいねーの?富の神様みたいなの」 ヒュプノス 「いるにはいるが、彼は既に地上への干渉を絶ち大神ゼウスと共に天界に帰っている。そもそもタナトスの言う『管轄が違う』という言葉を誤解しておらぬか、天馬星座よ」 不思議そうな顔をする星矢。 星矢 「んん?」 ヒュプノス 「私やタナトスのギリシアの神が干渉できるのは我々が管轄するギリシアなど地上の一部。日本には日本を管轄する八百万の神がいる故な、仮に私 達が富を司る力を持っていたとしても日本経済に介入する事は出来ぬ。人間達で言うところの『内政干渉』となり、いわゆる国際問題に発展しかねぬのだ」 瞬 「神様にも国境はあるんですね。…あれ?じゃあ、日本人が死んだらハーデスの管理する冥界には行かないのですか?」 タナトス 「原則として、だが…日本人が死ねば、三途の川の水先案内人に先導されて霊界に行き、そこで閻魔によって裁かれる。他の国の人間が死ねば、その国を管轄する神の定めたシステムに則って天国なり冥界なり霊界なりに行くことになるな」 星矢 「ってーことは、俺が死んだら冥界じゃなくて霊界に行って、ルネじゃなくて閻魔に裁かれるのか?あれ?でも待てよ、冥界のコキュートスには歴代の聖闘士が閉じ込められてたけど、聖闘士って国籍バラバラだよな?なんで冥界に纏められてんだ?」 ヒュプノス 「『原則として』と言ったであろう。聖闘士や冥闘士になれば我々ギリシアの神の管轄下に入る。産まれた時にどの神の管轄下にいたかは関係ない」 不思議そうな顔をする一輝。 一輝 「聖闘士は自身の意思で志願しているからともかく、冥闘士は魔星が魂を選ぶのだろう?他の神の管理下にある人間を無断で引っ張ってきても問題にならないのか?」 タナトス 「己の意思と無関係に、あるいは何も知らずに、異なる神の管理区域に移住する人間は少なからずいる。二百数十年に一度、僅かばかりの人間が我々の管轄下に移動した程度でゴタゴタ言う神はおらぬ」 星矢 「ええと、つまり、要するにだ…(考え中)俺らが死んだら、タナトスサマがお迎えに来て、ルネかミーノスに裁かれて、冥界に行くって事か?」 タナトス 「その通り。神に弓を引いた罪でコキュートスかタルタロスに堕とされる。それは冥界の法によって定められている故、アテナであっても捻じ曲げる 事は出来ぬ。…つまりお前達のコキュートス行きは決定事項と言う事だ。必ず行くことが決まっている場所だ、せめて今のうちに自分好みに作っておいたらどう だ?」 星矢 「結局、冥界復旧のボランティアに来いって事かよっ!」 |
| 聖域との和解が成立してしばらく。 激変した地上に対する好奇心を押さえきれないタナトスは足しげく地上に通い、目に付き気に入ったあれこれを次々と冥界に運び込んでいる。さほど地上に興 味のないヒュプノスの神殿にもテレビとゲーム機が導入された程だ、タナトスの神殿など言わずもがな…そんな、平和なある日。 ヒュプノスは自身の神殿を出てタナトス神殿に向かっていた。彼が持っているのは魔法使いの少年が悪い魔法使いと戦うファンタジー小説だ。『何か面白い読 み物は無いか』とタナトスに尋ねたら、『地上で二番目に売れているだけあって面白いぞ』という解説と共に渡されたのである。半信半疑で読んでみたところ、 これが予想以上に面白く、早速続きを借りに行くことにしたのだ。 (この小説は映画になっているらしいし、映画のDVDも借りるか…いや、せっかくだからタナトスと一緒に鑑賞するのも悪くないかもしれぬ) そんな事を考えながらタナトスの私室に向かっていると。 「キャーーーーーーー!!」 女の悲鳴が聞こえてヒュプノスは思わず足を止めた。 (今の声は…ヘカーテ様?…ヘカーテ様はタナトスがお気に入りだし、奴の寝込みを襲って驚かせて楽しむことがしばしばある…だから寝室に結界を張っておけ と言っているのに、あの馬鹿兄貴は面倒くさがるから、ヘカーテ様の奇襲を受けて絶叫する羽目になるのだぞ。…うむ、タナトスが叫ぶのは分かる、しかし逆は ありえぬ。仮に、仮にだ、何かを血迷ってトチ狂ったタナトスがヘカーテ様にナニかしようとしたところで、戦闘に関する実力は段違いで彼女が上なのだから返 り討ちに遭うのが関の山のはずだ。そもそもヘカーテ様はタナトスなどに襲われかけて悲鳴を上げるような可愛げのある女性ではない、はずだが…あの方が亡者 や怪物などに今更悲鳴を上げるほど驚くはずなどないし、ひょっとして、いやしかし、まさか、万が一だったら、私はどうすべきなのだ?) …一瞬でそんな事を考えたヒュプノスが、普段ならノックもなしで開ける扉の前で考え込んでいると。 「ヒュプノス?何をそんなところで突っ立っているのだ」 気配を感じたらしいタナトスが扉を開けて怪訝そうな顔を覗かせた。 先ほどのヘカーテの悲鳴が空耳だったのではと思うほど、兄の様子に不審な部分は無い。 「あ…その、さっき、お前の部屋から、ヘカーテ様の…」 「キャーーーーーッ!!」 「あ、そうだヘカーテ様。そこのドアを開けると後ろからゾンビが来ますので、すぐ背後に視点を移動させないと危ないですよ」 「そういう重要な事は先に言え、馬鹿者ーーッ!!」 「背後からゾンビに襲われてビックリ、がそのゲームの醍醐味ですから敢えて黙っていたのですが…」 「黙ってないで教えてくれと何度も頼んだであろう!ああっ、死ぬ、死ぬ死ぬーーっ!」 タナトスの肩越しに部屋の中を見れば、真剣この上ない表情のヘカーテがゲームのコントローラーを握り締めていた。 悲鳴の真相に安堵するやら呆れるやらのヒュプノスに、タナトスは無邪気な笑みを見せた。 「亡霊にも幽鬼にも微塵も動じぬヘカーテ様が、まさかゲームのゾンビに悲鳴を上げるほど驚くとはな。意外に可愛い一面をお持ちだと思わぬか?」 「可愛い…ヘカーテ様が、可愛い…」 「タナトス!タナトス!もう駄目だ、ああっ、助けて!」 「はいはい、只今」 ヘカーテに頼られて何だか嬉しそうな兄の姿が、ヒュプノスはすこぶる面白くなくて。 次にヘカーテが悲鳴を上げそうになったら、即座に己の力で眠らせてやる、とヒュプノスはこっそり決意したのだった。 |
| 星矢部屋 |
総合目次 |
SS・2012
時代 |
SS・神話時代 |
SS・蟹座達 |