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その後は、神様達に『楽器の演奏は出来るか』と冗談半分に尋ねられたシラーが物凄ぇすまなそうな顔で『ピアノとバイオリンと、後はフルート程度しか…』
と答えて、ハービンジャーに『謝れ!タンバリンとカスタネットとリコーダーしか出来ない俺に謝れ!』とヘッドロックされたり(俺も本気でシラーに腹パンし
てやりたくなったぜ)、エルミタージュ洋菓子店にはグランドピアノがあるからちょっと弾いてみろと皆に煽られたシラーが『こんな事ならピアノ演奏のリハビリをしておけばよかった』と悔やみながらピアノの生演奏を披露して、バカに
してやろうと思っていたら唖然とするほど上手くて思わず拍手しちまったり、話が盛り上がって寿司とピザとトンカツという統一感の欠片もねぇメニューの出前
を取って皆で夕
飯食ったり、すっかり冥界の神様と打ち解けた四馬鹿が片付けを手伝ったり、まぁ結果的に楽しく盛り上がって茶会はお開きとなり、聖域メンバーは口々に礼を
言いながら名残惜しげに帰って行った。 そんなこんなで何となく帰るタイミングを逃した俺は神様達にお伺いを立ててみることにした。 「聞く必要ねーけもするけど一応聞いておくぜ。御感想は?」 「教養のあるお坊ちゃまで洒落が分かって頭も良くて凄いイケメンなんて、シラーさんてすごく美味しいキャラじゃないですか。良い意味で予想を裏切られました」 「前評判よりはマトモな奴だったが、味わい深くて面白い奴ではないか。外見も人間にしては申し分ないレベルだしな」 「顔、お育ち、頭の切れ、ギャグのセンス、教養、学歴…何を取ってもマニマニよりシラー君の方が上じゃん。同じ蟹とは思えないねっ」 「ベタ褒めだなアンタら。所詮はツラかよ、ツラなのかよ!!中身はあんなド変態だっつーのによー」 女神達がやたらシラーを褒めるのが面白くなくて俺が奴をくさすと、エリスが怪訝そうに首を傾げた。 「変態変態って連呼するけどマニマニ、シラー君はそこまで言うほどの変態かなぁ?単に憧れの兄貴からお茶に誘われて脳味噌沸いてただけなんじゃないの?」 「私も同感だ。舞い上がりすぎて訳が分からなくなって羽目を外したと言うか、床板を踏み抜いてたと言うか、そんな印象だな。実際、タナトスに会うのが二回目の今日は前回とは比べ物にならないほど行儀が良かったんだろう?」 「ねぇマニゴルドさん。人間って誰でも一つや二つ欠点があるものでしょう?ほんの一回の失敗で全人格を否定するような事を言うのは如何なものかと思 いますけど…。確かにシラーさんはちょっとズレたところはありますけど、それは個性の範疇に収まる程度のズレじゃないかしら」 「つーかマニマニ、同じ蟹なのにシラー君には彼女がいるのが羨ましいからやっかんでるんでしょっ!そういう器のちっちゃいことするから彼女が出来ないんだ よ!律儀にお土産持参したりお茶の準備を手伝ったり、女の子に気遣い出来る優等生かと思わせて天然ボケドジッ子アピールもできるシラー君を見習ったらどう なのかね、女運ゼロ人生のマニゴルドくん」 「う…うっせぇーーーーーー!!!!」 思いっきり痛いところをグッサリ抉られて思わず涙目になる俺を華麗にスルーして(フォローくらいしてくれよオイ!)、タナトス様は楽しげにヒュプノス様を見遣った。 「ヒュプノスよ。俺は、前回の茶会であの赤い蟹に会った時から妙な既視感を覚えていたのだがな、その理由が今日ようやく分かったぞ」 「ん?ひょっとして過去の聖戦にあの男が冥闘士として参加でもしていたのか?」 「いや、外見や小宇宙ではない。俺に対する行動、態度に何となく覚えがあったのだ」 タナトス様はごくごく親しい者にしか見せない柔らかな表情で銀色の眼を眇め、実に楽しそうに続けた。 「冥界に来てからと言うもの、『僕をタナトス様の弟子にして下さい!』と連呼しながら俺の後をくっついて歩き回っていたオルフェウス…あの頃の奴にそっくりなのだ」 「そう言えば、あの蟹座がお前に向ける眼差しはオルフェウスとよく似ているな。…ふふ、冥界史上ふたりめの『死の神を恋い慕う人間』がまさかお前と因縁深い蟹座の黄金だったとは…モイライはなかなか面白い仕掛けをしてくれる」 「あの蟹が冥界に来た後、オルフェウスのように俺の後をくっついて回ったらどうしたものだろうな?」 「何を言っているのだタナトスよ。お前の後をついて回ろうと思ったらエリシオンに来なければならぬのだぞ。お前はアテナの聖闘士をエリシオンに入れるつもりか?」 「お前こそ何を言っているのだヒュプノスよ。アテナの聖闘士ならもう何度もエリシオンに入っているではないか」 アンタ絶対分かって言ってるだろ的な笑顔で言葉を返すタナトス様に、ヒュプノス様はわざとらしく苦笑して見せた。 …まぁ要するに、だ。 何だかんだでタナトス様はシラーをお気に召して、ヒュプノス様は愛しの兄上に新しい気に入りの人間が出来たことに特に不満はお持ちでない、と言う事だ。 俺はガリガリと頭を掻いた。 シラーと違って俺はタナトス様を崇拝も敬愛もしてない…はずだ。けど、タナトス様の好感度みてーなもんが『シラー>俺』になるのは何となく面白くねーなーと感じてて、そんなことを感じる自分自身が気に入らなくて、俺はただアンニュイに溜息をつくしか出来なかった。 それからしばらく経って本格的に冬が到来した頃、俺はアテナの使いでエルミタージュ洋菓子店を訪ねていた。アテナが秋乃さんにケーキを注文したとかで、その引き取りを頼まれたからなんだが…。 店のドアに『OPEN』の札が下がってるのを一応確認して店に入ると店員に声をかけられた。 「いらっしゃいませ。…ってあれ?マニゴルド先輩じゃないか。ケーキを食べに来たのかい?それともアテナのお使いかな」 「………………」 俺は店に足を踏み入れた中途半端な姿勢のまま固まった。 …何でお前がここにいるんだ、シラー。 菓子を買いに来たところに偶然出くわしたのかと一瞬思ったが、確か今『いらっしゃいませ』って言ったよな?あとその、白いシャツに黒いスラックスに腰で縛る丈の長い黒いエプロンって格好は何だ。どう見てもカフェのギャルソンじゃねーか。 状況が飲み込めねー俺は、シラーの質問はスルーして根本的な疑問をぶつけた。 「シラー、お前…そんな恰好で何やってんだ?」 「何って…見れば分かるだろ?ギャルソンのバイトだよ」 「…何でやねん!!」 バシッ!!! ムカつく奴に右ストレートを叩きこむ事を正当化する掛け声とともに繰り出した俺渾身の拳は、シラーの左手で難なく受け止められていた。 …腐ってもド変態でもやってる事がとことんイミフでも黄金は黄金か。 俺の突っ込みを受け止めたシラーはケロリとした顔で笑った。 「さすが先輩、切れ味鋭いツッコミだね。でも残念だなぁ、根本的に間違ってるよ」 「何がだよ」 「だって僕はボケてないからさ」 「現役黄金がギャルソンのバイトしてるっつーのがボケでなければ何なんだよ」 「アテナに命じられた正式な任務だよ」 「…へ?任務?」 俺は続けて出しかけた左ストレートを慌てて引っ込めた。 そうか、任務か。 確かに秋乃さんは『アテナの名のもとに地上でお預かりしているハーデスの妃』だし、彼女に絡んで何らかの任務が発生することがあってもおかしくない。秋 乃さんの肩書きを考えれば黄金が派遣されるのも自然だし、聖闘士であることがばれると任務に不都合があるからカモフラージュとしてバイトの振りをして ると言うなら納得だ。日本ではシラーの容姿は結構目立つが、エルミタージュ洋菓子店でバイトができるスキルがある黄金と言ったらコイツくらいだろう し、タナトス様に惚れこんでるからトチ狂って冥妃様に危害を加えることも有り得ないし、そう考えれば至って妥当な人選と言える。 俺は引っ込めた左手をポケットに突っ込んで頭を掻いた。 「そっか、任務だったのか。いきなり突っ込み入れて悪かったな」 「気にしなくていいよ。僕もここは突っ込みどころだと思うし」 「で、何の任務なんだ?俺にも出来る事があったら協力するし、差し支えなかったら教えてくれねぇ?」 「さっきも言っただろ、ギャルソンのバイトだよ」 「…は?バイトの振りした任務でなく?バイトと任務がイコールなのか?え?マジで黄金のお前がバイト??」 「それっぽい建前は色々あるけど、結局は任務と言う名のバイトさ。まぁ、詳しい話は秋乃から聞きなよ。僕が説明したところで先輩は信用しないだろうし」 「おいシラー…仮にも冥妃様を呼び捨てかよ」 「本人のご希望だから問題ないだろ。…秋乃ー。アテナのお使いでマニゴルド先輩が来てるんだけど、ちょっといいかなぁ?」 「はぁい」 わざとらしい苦笑を浮かべて見せたシラーは店の奥に声をかけた。 厨房で何やら作業中だったらしい秋乃さんが粉まみれの手で急ぎ足に店に出て来ると、シラーは慣れた仕草で濡れタオルを差し出した。 「悪いんだけど秋乃、僕がここでバイトすることになった経緯を先輩に教えてあげてくれるかな」 「ああ。マニゴルドさん、びっくりしたでしょう?」 「そりゃまぁ。『何をやってるかって?見ての通りギャルソンのバイトだよ』って言われて、一体何のボケかと思いましたよ」 「うふふ、私も最初は冗談だと思ってました。あ、シラーさん、お茶を淹れてくれます?ちょっと早いけど休憩にしましょう」 「了解」 頷いたシラーは店のドアにかかっていたプレートを『CLOSED』にひっくり返して、当たり前のような顔で厨房に入っていくと飲み物の用意を始めた。秋乃さんとシラーはナチュラルに店長とバイトしてやがる。一体何がどうなってこうなったんだ、マジで。 我が目を疑ってる俺を面白そうに見ながら、秋乃さんはクスリと笑った。 「話すと長いんですけど、最初は本当に冗談だったんです。冗談で『お店のバイトにシラーさん欲しいなー』って沙織さんに言ったら、すんなりOK出されちゃって」 「へ?」 「詳しい事はお茶を飲みながら話しますね。さ、どうぞ」 トレイに飲み物と茶菓子を乗せてシラーが戻ってきたので、秋乃さんはにこやかにイートインスペースのカーテンを開けて俺を促した。 …秋乃さんの話によると、シラーがエルミタージュ洋菓子店でバイトすることになった経緯は、店が深刻な男手不足だった事に端を発するらしい。 俺も時々店を訪ねた時に力仕事を頼まれることがあるから知ってたんだが、小麦粉の袋だの缶詰の果物だの大量の乳製品だの、この店では重たいものを運ぶ事 は結構多い。ついでに店員が女性ばかりと見ると居丈高になってセクハラ発言やら嫌がらせやらをする面倒なオヤジもしばしば来店するらしい。マナーの悪い客 をちょいと店の裏に連れ込んで締めあげるのは簡単だが(秋乃さんも一般人の枠には収まらないレベルで格闘技を習得してるからな)、それをやると後始末が面 倒なのでマジで厄介な客が来た時は警察を呼んでるそうだが、勘違い客が面倒を起こすのを牽制するような男の店員がいれば助かるのに…と常々思っていたらしい。事実、 『いかにもガイジンサン』な外見の俺やタナトス様がスタッフと親しげに話していると、その手の客も借りて来た猫みてーに大人しいんだそうだ。 とは言え、エルミタージュ洋菓子店は『各界のお偉方』が高級料亭代わりに使う事もしばしばある店なので、店員にもそれ相応の身分っつーか教養レベルや口の堅さが求め られる。求められるのだが、エルミタージュ洋菓子店が求めるレベルをクリアできる有能な人材、しかも洋菓子や喫茶にそれなりに精通しててバイトに時間が割 ける男なんてまずいない。そんな有能人物はとっくに相当の組織内でそれなりの地位で相応の仕事をしてるからだ。 で、アテナが店に来た時に秋乃さんは話半分にそんな愚痴をこぼしつつ、冗談で『シラーさんは私が求める条件を全部クリアしているし、彼がバイトに来てく れたら最高なんですけど』と言ったら、アテナは『ではシラーをここのバイトに寄越しましょうか』と笑いながら答えたんだそうだ。無論、秋乃さんもその言葉 は冗談だと思って聞き流したんだが、後日アテナは本当に(エルミタージュ洋菓子店でバイトをさせる為に)シラーを連れて来たらしい。驚く秋乃さんにアテナ はこう説明したんだそうだ。 「『冥界との和平が成立したとはいえ、ハーデスの妃を地上で野放しにしておくのはいかがなものか。神の記憶は無いと言うが、自身に自覚があるかな いかは別にして彼女が冥界のスパイではないと何故言い 切れるのか。冥妃はアテナが人質に取っているも同然と言うが、彼女の身近に聖闘士のひとりも常駐していないのでは人質の意味が無いだろう。冥界が事を起こ すなら真っ先に冥妃を確保するはず、冥界の動向に探りを入れる為にも彼女の身近に聖闘士を派遣すべきではないのか』と主張する石頭の重鎮達がいますの。星 矢達やマニゴルドが秋乃さんやタナトス殿と交流していますと言っても納得せずに余りに も煩いので、『冥界に通じる力を持つ蟹座の黄金聖闘士シラーに、地上でお預かりしている冥妃の身辺警護の任務を与えます』と言って黙らせま したわ」 時代遅れで石頭の老害共がシラーを嫌っている事は俺も知っていた。シラーは聖域の伝統やら慣習やらに真っ向から逆らって型破りなことをしてるが、『アテ ナが定めた掟』に反してる訳じゃ無いし、キッチリと結果も実績も出してるから奴の好き勝手な行動を咎める口実が無いっつーのも大きな理由だろう。 …で、その老害共はアテナの提案をすんなりと了承したんだそうだ。 もし秋乃さんや冥界に絡んで不都合があった時は、冥妃護衛の任務を与えられたシラーの責任を追及して黄金の資格を剥奪できる絶好の口実になるからな。特に不都合が起きなくても、目障りな黄金を聖域から遠ざけておけるから反対する理由もないってことだろう。 老害共は体よく厄介払いが出来て、アテナは冥界と聖域双方に恩を売り、秋乃さんは理想のバイトをゲット、シラーは愛しのタナトス様に会う機会が増えて、冥界の神 々は冥妃にボディーガードがついたことを歓迎してる。八方丸く収まって皆がウィンウィンっつーわけだ。さすがはアテナ、知恵の女神の名は伊達じゃないぜ。 何せ、この一件で一番メリットを享受してるのは城戸沙織とシラーだからな。 俺はじろりとシラーを見た。 「なるほど。この任務は『城戸社長』やお前にもデケー恩恵があるって訳だな」 「一体何の事?」 「とぼけんなよ。お前の親 父さんの肩書きくらい俺も聞いてるぜ。世界最大の武器メーカー『ヘキサクス』の子会社であり世界屈指の製薬会社『グリーンX』の某国支社長なんだってな。 ヘキサクスもグリーンXも色々とキナ臭い噂が絶えない会社だ、次期支社長がグラード財団の代表や世界警察影のトップと太いパイプを 作っておけば半端ねぇ強力な武器になる事、その次期支社長を押さえておけばグラード財団にもメリットがあるくらい馬鹿でも想像できるだろ」 「…フフッ」 シラーは唇の端を持ち上げて微かに笑い、目にかかった前髪を払っていつものように飄々とした口調で言った。 「ねぇ先輩、日本には『好奇心は猫をも殺す』って諺があるんだってさ。どういう意味か知ってる?」 「用心深い猫でも、好奇心に負けて要らねぇ事を嗅ぎまわると命が無いぜ、って意味だろ」 「博識だねぇ。そんな先輩に敬意を表して、もうひとついい事を教えてあげるよ。この紅茶はね、甘くした方が美味しいんだ」 空になった俺のカップに二杯目の紅茶を注ぎ、俺に断りもなく勝手に砂糖を入れてかき混ぜながらシラーは話を続けた。 「そう言えばさ、先輩。世の中には『体内に痕跡を残さない遅効性の毒』ってものがあるらしいね。無味無臭ではないから考えなしに出せば感づかれてしまうけど、そ れぞれの特性を把握して、味や香りをカモフラージュする飲食物に混ぜれば、人間の感覚で異常に気付くのは不可能。毒を盛られた人間は何も知らないまま口を 封じられ、毒殺の事実は誰にも気づかれないまま闇から闇へ…」 「そりゃまた反則なシロモノだな。大病院の院長が薬を調達して、毒の知識が豊富な薬剤師が調合して、喫茶店の店長が毒を盛って、警察のトップが適当にもみ消したら、推理小説家泣かせの完全犯罪が一丁上がりだ」 「推理小説のオチがそれだったら、僕は間違いなく作家に苦情の手紙を送るね」 「私は名指しでブログに文句を書きますね、きっと」 「秋乃さんが名指しでケチ付けたら逆に話題になりそうですけどね」 シラーが勝手に砂糖入りにした二杯目の紅茶を、温度を確かめる振りをしながら俺は慎重に匂いを確認して口に含んだ。 …美味い。悔しいが、紅茶を甘くする嗜好はない俺でも認めざるを得ないほど美味い。このクソ生意気な後輩の喫茶の手腕など認めたくねーんだが、美味いもんは美味い。 思わず俺がしかめっ面になると、シラーは青い眼をスゥッと細めた。 「感想は?先輩」 「……………。嗅ぐのは美味い紅茶の匂いだけでいいな。わざわざキナ臭い物を嗅ぎまわるつもりもハナからねーけどよ」 俺のコメントにシラーと秋乃さんはにこりと笑った。何も言わず、ただ、柔らかく微笑しただけだった。 …一度目の生で波乱万丈の人生を送った俺の望みはただ一つ。お師匠の言った通り、平穏に平凡に人並みの幸せを手に入れて天寿を全うするっつーささやかなもんなんだけど…叶うのか、コレ? 面倒くさくてヤヤコシイ人間やら神様には無駄に縁があるのに、運命の恋人には縁が無いのはどういう事なんだよ…と、この場にいない運命の女神様に内心でお伺いを立てながら、無駄に美味い紅茶を啜って俺は溜息をつくしかなかった。 |
| 星矢部屋 | 総合目次 | SS・2012時代 | SS・神話時代 | SS・蟹座達 |
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近年まれに見るくらい苦労して、オチにも悩みまくったSS「溜息」もこれにて完結です。私の脳内にあったシラーさん絡みの設定もほぼ全て消化されたかなと思っています。 当初の予定では、ハビさんにヘッドロックされたシラーさんが『え、そうなの?ごめん!』と素直に謝って、振りあげた拳の持って行き所が無くなって『お、 おう…』と口籠るハビさんとか、「エリーゼの為に」とか「トルコ行進曲」を弾くシラーさんとかのエピを入れようかと思ったのですが、流石に蛇足かなと思っ て没に。 ヒュプの「アテナの聖闘士をエリシオンに入れるのか?」という問いに対してタナトスが「アテナの聖闘士は何度もエリシオンに入ってる」と答えてますが。 ヒュプの質問は勿論、「シラーが死んだ時は、アテナの聖闘士である彼をエリシオンに入れる(=オルフェウスのように永住させる)つもりなのか」と言う意味 です。タナトスはそれを分かった上で、「星矢やマニゴルドはエリシオンに何度も遊びに来てるじゃないか」とわざととぼけているわけです。そして、そんな兄 貴の意図的な『ずれた回答』にヒュプは抗議も突っ込みもせず苦笑するだけ。その理由はマニさんも察してる通り、『タナトスがシラーを結構気に入った』事に 特に不満は無いからです。シラーさんは『神と人間』の違いみたいなものをきちんと理解して分を弁えてるし、女神達にも気に入られてるし、ハーデスやオネイ ロイにも貢物持ってくるし、ヒュプのシラーさんに対する印象は決して悪くないと言う事です。 で、後半部分。「シラーさんがエルミタージュ洋菓子店でバイトしてる」というネタが今までチラチラ出てましたが、その経緯紹介です。シラーさんの養父に ついてはSS「拝謁」シリーズでチラと触れましたが、世界的大企業のお偉いさんです(シラーさんは養父の後継者=次期支社長)。星矢SSではほとんど触れ られてないですが、龍神秋乃は『DEATHNOTE』に登場した名探偵Lのお抱えパティシエ兼腹心の仲間と言う設定があります。そして彼女の兄龍神冬彦は 裏社会と密接に関係のある某大病院の院長で、Lの窓口と言う設定も…って、見事な厨二設定ですね(^^;)ついでにシラーさんは薬学部卒業で薬剤師の資格 を持っています。製薬会社の支社長候補なので持ってて当たり前の資格ではありますが、その目的は勿論、邪魔な人間を抹殺する手段の一つとして毒薬を作る知 識と技術を得るためです。 最後の方の蟹コンビのやり取りですが、シラーさんは「好奇心から僕や養父の裏の顔を探るなら、先輩と言えども毒薬を盛って抹殺するよ」と暗に言ってて、 それに対してマニさんは「平穏な人生を送りたいから妙なことに首を突っ込む気はねーよ」と暗に言ってます。で、そんなふたりの会話の意図を理解しながらた だニコニコ笑ってるだけの秋乃もまた『只者ではない』んだよ、的な演出を狙ってみました。 |