| 空中十二宮の最上階に存在する巨大な火時計のリングが、またひとつ消えた。 地球滅亡の時が刻一刻と迫る中、山羊座のイオニアを撃破した青銅聖闘士達は天秤座の玄武に呼ばれて天秤宮に集合していた。 六人の若き聖闘士達を見つめた玄武は真剣な眼差しで口を開いた。 「マルス子飼いの黄金は排除したが、戦いはこれからが本番だ。メディアが十二宮を破壊するのを止めたところを見ると、俺の足止めをする必要がなくなった…つまり、敵の計画は最終段階に来たと見て良いだろう。我々も覚悟を決め、全員で、全力で挑まねばならない」 揺るがぬ決意を眼に宿した六人が力強く頷くのを見て、玄武は微かに唇に笑みを浮かべた。 「勿論、我々アテナの聖闘士も君達と共に闘おう」 「『我々』と言うと…玄武さん以外にも僕達に力を貸してくれる聖闘士がいると言う事ですか?」 「貴鬼さんでしょ。彼もアテナの聖闘士だったもの」 「ああ。貴鬼と、後もう一人いる。そろそろ来ると思うのだが…。ん、噂をすればのようだな」 玄武が処女宮に続く階段の方に目を向けて、青銅聖闘士達がその視線を追うと、黄金聖衣を着た聖闘士ふたりが階段を上って来る姿が見えた。 …牡羊座の貴鬼と牡牛座のハービンジャーだ。 貴鬼はともかくハービンジャーはマルス側の黄金聖闘士ではなかったのか?と青銅聖闘士達が怪訝に思って玄武を見ると、彼も驚いたような顔をしている。 一同に近づいて来たハービンジャーは不思議そうに皆を見回した。 「お?何だ何だ青銅共、数が減るどころか増えてるじゃねーか!一体どうしたんだ?」 「それはこちらの台詞だ。何故お前が貴鬼と一緒にいる?」 「貴鬼の奴が『マルスを倒す状況が整ったから最終決戦に向かう』って言うからよ。どうせなら最後まで付き合ってやろうと思ってな!」 「ハービンジャーは私達の側についてくれました。『骨のある奴がいれば世界の新旧は気にしない』そうですよ。メディアが送り込んで来た火星士を倒すのを手伝ってくれましたし、その言葉は信じていいでしょう」 「そりゃ有難い計算外だぜ!黄金の味方が増えるのは大歓迎だからな!」 蒼摩の言葉に青銅聖闘士達が頷いた時、ユナが怪訝そうに首を傾げた。 「じゃあ、玄武さんが言っていた『もう一人』って誰なの?」 「言われてみれば…今までの宮にいた黄金達は皆、マルスの手下だったはずだよな」 「あれっ?彼はまだ来てないんですか?宮にいなかったからてっきり先に行っているものだと思っていましたが」 「ああ、まだだ。俺はお前と一緒に来ると思っていたんだが…。全くアイツは、一体いつまでサボってるつもりだ」 「実に彼らしいですね」 「悪いがちょっと待ってくれ、『もう一人』を呼ぶから」 青銅達の疑問には答えず、貴鬼とだけ意思疎通した玄武は天秤座の鎖を異空間に降ろした。 …手応えを感じたらしい玄武が鎖を引き上げると同時に黄金の光が弾け、黄金聖衣を纏った男が天秤宮に現れた。 現れた黄金聖闘士…蟹座のシラーの姿を見た途端、光牙とユナと龍峰、そしてエデンの表情が変わった。 「…………!!」 「…え?」 「あなたは…」 「なっ…何故お前が!?」 「え?ん?何?どゆこと?」 「…………?」 蒼摩と栄斗が困惑の表情を浮かべて仲間達とシラーを交互に見た。 青銅聖闘士四人の反応と『今までの宮にいた黄金達は皆、マルスの手下だったはず』という発言から考えると、この蟹座の黄金聖闘士はマルスの手下と言う事になる。しかし玄武の口ぶりと行動を考えると彼は味方と言う事になるのだが、一体どういう事なのか。 全く状況が飲み込めず戸惑う青銅聖闘士達は半ば無視したまま、玄武はあからさまな溜息をついてシラーを見遣った。 「遅いぞ、シラー。自分の宮にも戻らずに一体何をしていたんだ」 「何って…さっさと巨蟹宮に戻ったら僕が生きてる事がメディアにばれるだろう?彼女の眼を逃れるために冥界に残って力を温存してたんだよ。まぁ、他にもやってた事はあるけどね」 「要するにサボっていたと言う事でしょう」 「良いじゃないか、貴鬼。マルスの子飼いは勝手に潰し合ってくれたみたいだし、事情は分からないけどこっち側の頭数は増えてるみたいだし。結果オーライって奴だよ」 「お前という奴は…本当に相変わらずだな」 「おーいおいおいお三方。自分達だけで納得してないで俺にも分かるように事情を説明してくれよ!俺はてっきりシラーはマルス側だと思ってたけど違うのか?本当はアテナの聖闘士だったって言うのか?」 玄武と貴鬼とシラーの間にハービンジャーが割り込んで青銅聖闘士達の疑問を代弁すると、光牙とユナがシラーに詰め寄った。 「あなた、バベルのトゥーム・スクイーズを作って皆を閉じ込めたのは自分だって言ってたわよね。マルスの許しを得て、閉じ込めた聖闘士を自分のマリオネットにしてるんだって。自分の野望の為に大勢の人を殺して来たって!」 「マルスに傅く事で人々から小宇宙を吸い取って永遠に生きてやるとも言っていた。それに、『大人しくマルスに従っていれば良かったのに、愚かな女だ』ってアリアを馬鹿にしていた!そんな奴がアテナの聖闘士であるものか!!」 「何だと…」 「シラー、お前…彼らにそんな事を言ったのか」 ユナと光牙の言葉に蒼摩と栄斗だけでなくエデンも表情を強張らせ、玄武が咎めるような目を向けると、シラーはフフッと笑って蒼い眼を眇めた。 「…君達、こんな諺を聞いた事はないかい?『敵を欺くにはまず味方から』」 「え?」 「敵…って、マルスとメディアか?」 「要するにあなたは、マルスとメディアの眼を欺くためにマルスの手下の振りをしていたって事ですか?」 「貴鬼や玄武みたいに馬鹿正直に反抗してちゃ、探れる情報も探れなくなるからね。君達が素直に僕に騙されてくれて、ついでに天馬星座の君が闇の小宇宙を発 動するなんてイレギュラーを起こしてくれて助かったよ。おかげで自然な流れで僕は君達に『倒されて』早々にメディアの監視から外れる事が出来た」 「全くあなたは…スタンスや技だけでなく演技力まで師匠から受け継いだと言う訳ですか」 「敵の大将すら欺く迫真の演技は最早、蟹座の黄金のお家芸だな」 「お褒めにあずかりまして光栄」 貴鬼と玄武の呆れ交じりの言葉を、シラーは真意が見えない笑みを浮かべて受け流した。 シラーと面識の無い蒼摩と栄斗、彼と接した時間が少ない龍峰とエデンはその説明で概ね納得したようだったが、光牙とユナはまだ納得しかねる表情で彼にきつい目を向けた。 「…じゃあ、あなたが戦災孤児だったって身の上話は嘘?」 「それは事実だよ。聖闘士になった動機もね」 「トゥーム・スクイーズに関する話は?」 「それも事実」 「つまり、マルスに信用されるためにパライストラの皆を利用したって事?」 「それは否定しないけど。『トゥーム・スクイーズに聖闘士達を拘束してその小宇宙を利用しよう』って僕がマルスに進言していなければ彼らは反乱分子として殺されていたんだから、その言われようは心外だね」 「じゃあ、自分の野望の為に大勢の人を殺したって言うのは?」 「聖闘士としての実績をあげて高みへ上るために積極的に任務を引き受けて、任務をこなす過程で『地上の平和や人々の安全を脅かす者』の命を奪った事を『自分の野望の為に大勢の人を殺した』と定義するなら事実だね」 ユナの真剣な詰問を真正面から受け止める事もなく曖昧にはぐらかすこともなく、シラーは薄く笑んだまま飄々とした口ぶりで答えた。 その態度にイライラを募らせた光牙がキリキリと眉を吊り上げて一歩前に出た。 「なら、自分が永遠に生きる為にマルスに傅き、人々から小宇宙を吸いとると言う話も嘘なのか」 「はぁ?何を言ってるの、君?仮に人々から小宇宙を吸い取ったところで永遠に生きられるはずなんかないだろう。マルスに疑われないために、あの馬鹿げた話を信じた振りをしてただけだよ」 「なら、アリアは。アリアに対して言った事も嘘なのか?」 「アリア?また彼女の事?」 君もいい加減しつこいね…と顔をしかめたシラーは、光牙やユナだけでなくエデンまで真剣な顔をしている事に気付いて浅く溜息をついた。 「『冥界の更に奥深くに落ちた彼女の魂は救い出す事は出来ない』という話は嘘だよ。いや、嘘だと分かったと言った方が正確かな」 「え!」 「何だと?」 「アリアの魂は救いだせるの!?」 「…………。アリアを『愚かな女』と罵った事は否定しないんだな」 「…以前も思ったけど、本当に失敬だね、君は」 シラーは今度こそ不快感を露わにして光牙に見下すような目を向けた。 「君が『アテナの黄金聖闘士』に夢を見るのは勝手だけど、『ぼくのかんがえたごーるどせいんと』のイメージに当てはまらないからと言って僕を非難するのは遠慮 して欲しいね。知らないなら教えてあげるけど、黄金聖闘士になるための条件はアテナの元で戦う意思と実力を持っている事で、聖人君子である事じゃない。皆が皆、分かりやすい『正義の味方キャラ』じゃないんだよ」 「……………」 「シラー。アリアの魂が冥界の更に奥深くに落とされたというのは事実か?そして彼女の魂を救いだせるというのも事実か?」 不満タラタラの顔で渋々口を噤んだ光牙を押しのけるようにしてエデンが尋ねると、僅かに表情を和らげたシラーがエデンに視線を向けた。 「事実だよ、プリンスエデン」 「どうしてあなたがそんなことを知っているんです?それに『嘘だと分かった』と言うのは…」 「アリアの魂の行方については、十二宮に黄金聖闘士を集めた時にマルス自身が私達に話していました」 「シラー。お前が自分の宮に戻らずにやっていた事とは、アリアの魂について調べることだったのか」 「そうだよ。天馬星座の彼が僕を冥界の入口にエスコートしてくれて、鷲座の彼女が血の池に落としてくれたからね。メディアの眼を逃れるのも兼ねて冥界の様子を見に行ってみたんだよ。上手くアリアの魂を見つけることが出来れば何かの役に立つかもしれないと思って」 「それで?アリアの魂は見つかったのか?」 「ああ、見つけた。逆を言えば見つけただけだ。彼女の魂はマルスかメディアの力で封印されていて、僕の力でどうこうする事は出来なかった」 「…………」 「ただ、彼女の魂が拘束されている場所がアテナの管轄エリアにあったというのは不幸中の幸いだね。流石のマルスも冥王ハーデスの支配する真の冥界まで踏み込む事は出来なかったんだろう」 「それはつまり、マルスとメディアを倒せばアリアの魂は助けだせるという事か」 「そうだね。僕達の力では無理でも、アテナの力なら出来るはずだよ」 光牙の問いをシラーが肯定すると、青銅聖闘士達は揺るぎない決意を滲ませた顔を見合わせ力強く頷いた。 マルスとメディアを打ち倒し、本物のアテナを救いだせばアリアの魂も救う事ができる。ならば自分達が歩むべき道は一つだ。 「皆、準備は良いな?…では、行くぞ」 玄武が先頭に立って歩き出し、アテナの聖闘士達は彼の後に続いて最後の戦いへと足を進めた。 …双魚宮に足を踏み入れた聖闘士達は、仄暗い部屋の中に佇む二つの人影を認めて足を止めた。 彼らを待ち受けていたのは魔女メディアと魚座のアモール。 「すんなりと俺達をマルスの元に行かせる気はない、か」 玄武が独り言にしては大きな声で呟くと、アモールが不敵な笑みを浮かべて口を開いた。 「駄目ですよ、エデン。お父様とお母様に拳を向けるなど…あなたは新しい世界の王となるべき存在なのですから」 「叔父上、母上。僕は決めたのです。アリアが愛したこの世界を守ると。そのために父を止めると」 「目を覚ましなさい、エデン。あなたはアリアやソニアを失った事で心が混乱し、正しいことが何なのか分からずにいるのです。マルス様のお心を解さぬ愚かな黄金聖闘士の言葉になど惑わされてはいけませんよ」 「父上や母上が正しいことを為しているとおっしゃるのなら、一体何故、アリアの魂を冥界の奥底に落としただけでなく封印までしているのです」 「………!」 エデンの問いにメディアの貌から表情が消え、アモールは底知れぬ冷ややかな笑みを浮かべてエデンの後ろに目をやった。 「エデンに要らぬ事を吹きこんだのはあなたですか?蟹座のシラー」 「へぇ。『要らぬ事を吹きこんだ』なんて言うって事は、アリアの魂の処遇に関して君達は後ろめいたことがあるんだね?」 「…中途半端に頭が良いのは不幸なことですよ、シラー。あなたがもっと賢ければ、あるいはもっと愚かであれば、マルス様の造る新世界で良い地位を用意して もらえたのに。つまらない芝居で姉上達の眼を欺いた揚句に反乱分子に加担されては、私はあなたを見逃すことが出来なくなるじゃないですか」 「勘違いしてもらっては困るなぁ、アモール。僕は最初からマルスの造る新世界に魅力なんて感じてないんだよ。だってそうだろ?永遠に等しい命を与える秘術メソペタメノスはアテナでなければ施す事が出来ないんだから」 シラーが得意気に言い放った言葉に、アモールは大袈裟に肩をすくめて大きく溜息をついた。 「…………。失礼、先程の『中途半端に頭が良い』発言は撤回させて下さい。あなたは救いようのない愚か者だ。マルス様メディア様に逆らえば新世界を見ずして命が潰えるという事を理解していないんですからね」 「さて、愚か者はどっちだろうね?君の方こそ、自分が僕に倒される可能性を全く考慮してないようだけど」 「これはこれは。流石は黄金聖闘士、素晴らしいジョークですね。私と姉上が倒される?あなたに?寝言は寝てから言ったらどうです」 「フフッ…アモール、ちょっと愛しの姉上を見たらどうだい?彼女は僕の言葉を真面目に受け止めているようだよ」 「…何?」 シラーの発言は何か意図するところがあっての時間稼ぎであって本心ではないだろう…と思って様子を見ていた青銅聖闘士達は、そこで初めてメディアを見て、彼女が真剣な顔をしている事に気付いて少なからず驚いた。 それはアモールも同じだったらしく、彼は口元から笑みを消して姉に尋ねた。 「どうしたのです、姉上。まさかこの男の戯言を信じているのですか」 「…アモール。マルス様や私の眼すら欺き切ったその男は馬鹿ではない。今の今まで冥界に身を潜め、この段階で猫かぶりをやめたのは何か勝算があってのことに違いない。侮ってかかっては足を掬われますよ」 「…………」 メディアの言葉に流石に警戒心を抱いたのか、アモールが油断のない眼をシラーに向けた。 シラーは相変わらず真意の見えない笑みを唇の端に浮かべたまま仲間を見遣った。 「…僕、一度でいいから言ってみたかったセリフがあるんだよねぇ。『ここは任せてお前達は先に行け』」 「はぁ!?」 「何を言ってるんだ!」 「どんな作戦を考えてるのか知らないけど、あなた一人じゃ無理よ!」 「叔父上をただの魚座の黄金だと思うな!その実力は黄金聖闘士を遥かに凌駕するんだぞ!」 「分かった、シラー。ここは任せる」 「ええっ!?」 「全く、玄武まで何を言い出すのか…。『ここは任せて先に行け』とは、命をかければ相討ちに持ち込めるか、仲間が最後の敵を倒すだけの時間を稼げる可能性がある時に言うセリフですよ。さっきエデンも言ったでしょう、私だけでもあなたより遥かに強いんですよ?それを…」 敵ではあるが、アモールの言う事は尤もだ…と青銅聖闘士達が思っていると、魚座の言葉など無視して玄武が言葉を続けた。 「但し、その前に切り札を出せ。お前に任せて先に行ったは良いが、切り札を出す前にお前が倒されてマルスとメディア姉弟に挟み撃ちになりましたじゃ笑い話にもならないからな」 「ああ、それもそうか。…じゃあ君達が安心してマルスを倒すことに専念できるよう、お見せするよ。僕の切り札をね!」 シラーはスッと手を伸ばして何かを呼び出す仕草をした。 その、次の瞬間。 彼の前に眩い黄金の光が三つ弾けて人の姿を為した。シラーに呼び出された人の姿を見た途端、青銅聖闘士だけでなくメディアとアモールも驚愕に目を見開いた。 「あ…姉上!?」 「獅子座のミケーネじゃないか!?」 「時貞!あいつは時間の果ての世界で消滅したはずでは…!」 「何故、彼らが…」 蠍座のソニア、獅子座のミケーネ、水瓶座の時貞。 三人は今までの戦いで命を落としたはずではなかったか。マルスとメディアに道具として利用され、使い捨てられて。 彼らの姿を見たアモールが唇を噛み、ユナが得心が行ったように呟いた。 「そうだ…彼は死体を意のままに操る事が出来るんだったわ」 「なるほどね。ネクロマンサーの本領発揮と言う訳ですか」 「そう、これこそが僕の切り札。君達を討つという意思を魂に刻んだまま無念のまま死んでいった戦士達さ」 静かな声で云ったシラーが手を翳すと、俯いていた三人が眼を開けて顔を上げた。 「…感謝するぞ、シラー。私に忠義を果たす機会を与えてくれた事を」 額に傷を持った男がゆっくりと拳を握る。 「何と愚かな私よ。命を失って漸く、真の敵が誰なのかに気付くとは」 翠の眼の娘が確かな意思を持って魔女を見据える。 「俺はもう何ものにも縛られん。ただお前を討つのみ」 鶯色の長髪の男が低く確かな声で告げる。 目の前に現れた三人をじろりと睨んで、アモールは唇の端を凶悪に持ち上げた。 「良いでしょう、シラー。あなたの策にのってあげますよ。構いませんね?姉上」 「…好きになさい。あなた達がいかに足掻いたところで、この世界の破滅はもはや避けられない運命なのですから」 「ほら、姉上のお赦しも出ましたよ。ここはシラーに任せて先へどうぞ、皆さん」 「先に行ってるぞ、シラー」 「今度はサボらずに合流して下さいね」 玄武と貴鬼がシラーに声をかけて先に進むと、シラーはにこりと笑ってその背に手を振った。 本当に彼ひとりに任せて先に進んで良いものか青銅聖闘士達が迷っていると、シラーに呼び出された黄金聖闘士が口を開いた。 「あの魔女と魚座はこの黄金聖衣に誓って私達が討つ。お前達はマルス様を止めるのだ」 「…ミケーネ」 「さぁ行け、エデン。アリアとの約束を守ると決めたのだろう!」 「姉上…」 「俺はここで過去の螺旋を断ち切る。だからお前達は未来へ進め」 「時貞…」 「ほら、皆がこう言ってるよ。素直に大人に甘えなよ、子供の…ああいや、『若き聖闘士達よ』」 「…ありがとう」 「死ぬなよ、アンタも」 「先に行って待ってるわ」 青銅聖闘士達が双魚宮を出て行くのを見送ったシラーが傍らに立ったハービンジャーを見上げると、彼は緊張感の無い顔でガリガリと頭を掻いた。 「しまったなぁ…俺も『ここは俺に任せて先に行け!』って決め台詞を言いたかったのに、タイミングを逃しちまったぜ」 「君も彼らと一緒に行けばいいじゃないか」 「いや、俺はここに残るぜ。死体みっつとお前だけじゃ心配だからな」 「失敬だねぇ」 「あなたは優しい人ですね、ハービンジャー。でも心配する事はありませんよ…あなた方全員、私の力で倒されるだけなんですから!」 アモールの眼が赤く光って彼の身体から闇の小宇宙が立ちあがり、ミケーネを一撃のもとに葬った技が炸裂した。 双魚宮が光に包まれ、この場に残った五人の姿は闇色の光に呑まれて見えなくなった。 「フフ…大層な口を叩いていましたが、他愛もない…」 「ああ、全くその通りだね」 「なっ…!?」 飄々とした声に眼を剥いたアモールは、自分の放った技を微塵も動じずに防ぎ切った三人の黄金聖闘士の姿にギリリと歯軋りした。 シラーは薄く笑みを浮かべたまま片手を腰に当ててゆるりと小首を傾げて見せた。 「君の闇の小宇宙は冥界との親和性が非常に高い。死者となった彼らにとっては、君の闇の小宇宙などそよ風以下だよ」 「ひょえー。スゲーなおい!こいつらが防いでくれなかったら俺は何もしないでお陀仏だったって訳か!」 「ふん…この程度であっさり倒れられてはこちらとしても面白くありませんからね。今のはただの挨拶代わりですよ。…ハァッ!!」 アモールが裂帛の気合と共に放った技に三人が吹っ飛ばされた…が、シラーがスッと手を翳すと何事もなかったように立ち上がり、メディアとアモールめがけて攻撃を仕掛けた。 「キングスエンブレム!!」 「クリムゾンニードル!!」 「クロノ・エクスキューション!!」 「…この程度の力で私達姉弟を倒そうなど片腹痛い!」 渾身の力で放たれた奥義はメディアの張った結界に防がれ弾き返されて三人は双魚宮の壁まで吹っ飛ばされて見えなくなったが、メディアにもアモールの顔にも笑みはない。 焦りを隠せなくなってきた魔女と魚座に余裕の笑みを見せながらシラーがひらりと手を振ると、彼とメディア姉弟の間にミケーネ、ソニア、時貞の姿が具現化した。 パチパチパチ。 楽しげに戦いを見守っていたハービンジャーが感心したように拍手すると、シラーは得意気に口を開いた。 「言っただろう、彼らはもう死者なんだよ。痛みもなければ死もない、僕が命じれば何度でも甦るんだ…君達の息の根を止めるまで、ね」 「スゲー、マジでスゲーなお前!これならマルス相手でも楽勝じゃね?」 「うーん、話はそこまで簡単じゃないんだけどねぇ。だって彼らは…」 「――ロイヤルデモンローズ!!」 「!!」 不死身の黄金聖闘士の『防壁』があるからと呑気に会話をしていたシラーとハービンジャーめがけてアモールが無数の薔薇を投げた。 ミケーネとソニア、時貞は即座に放たれた無数の薔薇を叩き落とした…が。 「な…何だこりゃ?」 「………く…」 強固な黄金聖衣すら貫いて、白薔薇がシラーとハービンジャーの心臓に突き刺さっていた。 白い薔薇がみるみる赤く染まり、二人は崩れるように膝を折って床に手をついた。まるで赦しを乞うようなその姿勢にアモールが歪んだ笑みを浮かべた。 「フフ…呼びだした戦士が『不死身』とは言え術者は生身の人間。その薔薇が真紅に染まった時、あなたの命も終わるのです。役立たずの裏切り者と一緒にね」 「あれだけ大層な口を叩いておきながら油断して命を落とすとは…何と愚かな男よ」 「さぁ、愚かなのはどちらかな?」 「自分の手駒にした者の能力すら覚えておられぬか」 「………!!…アモール、時貞を!」 「!!」 「時間拳!…時間逆行!!」 メディアの言葉にハッとしたアモールが時貞に攻撃しようとした瞬間、アモールの動きが不自然に緩慢になって時が巻き戻った。 …心臓に刺さった薔薇が消えたシラーは含み笑い、ハービンジャーはきょとんとした顔で自身の心臓を見て、時貞を見て、アモールを見て、首を傾げた。 「ん?ん?何だ何だ、一体何が起きたんだ?魚座に何だかヤバい薔薇を撃ち込まれたまでは分かったが、その後は何があったんだ??」 「時貞の言った事を聞いてなかったのかな、ハービンジャー?彼の力で時間が巻き戻ったんだよ。僕達の心臓に薔薇が刺さる前の時間までね」 「ええっ!?何だよその反則技!」 「…ええ、そうですね。確かに水瓶座の技は反則です。でもその技を使うには膨大な小宇宙が必要だ。常識で考えればそうそう何度も使える技ではないはず」 「そうだね、常識で考えれば何度も使える技じゃないねぇ。でも、死者が甦っているこの状況を常識で考えるのは無駄じゃないかな?」 「…………。まさか…」 「そのまさかだ、メディア。既に死者となった俺の小宇宙は無尽蔵。何度時間逆行を行おうとも小宇宙が尽きる事はない!」 時貞の言葉に今度こそ、メディアとアモールの表情が凍りついた。 シラーは唇に指を当ててクスクスと笑った。 「いくら君達が圧倒的な力を持っていても、命ある者である以上は小宇宙にも体力にも限界がある。対するこちらは力こそ君達姉弟には及ばないがリセットと無限コンティニューの特殊能力がある。…さ、こまで説明すれば分かるよね?君達にはもう勝ち目なんて無いって事」 「ほおー。つまりアレか、『HP有限の大魔王とHP無限のスライムが戦ったら最後に勝つのはスライム』理論か」 「…君の説明で色々と台無しだよ」 「そんな…そんな馬鹿げた理屈で姉上とこの私が倒されるものか!つまりは能力が発動する前に時貞とシラーを同時に無力化すれば良い話!!」 アモールが吠えて、無数のロイヤルデモンローズとピラニアンローズを放った。降り注ぐ雨のように飛来する薔薇を全く意に介さず、ミケーネとソニアと時貞が魔女姉弟に攻撃を撃ち込んだ。 「キングスエンブレム!!」 「クリムゾンニードル!!」 「時間拳!!」 歩みを遅らせる時すらものともせずメディアとアモールは黄金聖闘士達を迎え討ち、毒薔薇がシラーとハービンジャーに襲いかかったが、二人は水と雷の壁で全ての薔薇を叩き落とした。 時貞の力の影響を受けてゆっくりと落下する黒薔薇を一輪摘まんだシラーは、その芳しい香りに目を眇めながらからかうように言った。 「さっきはこちらの手の内をお見せするためにわざと食らってあげたけど、同じ技を二回も食らうはずないだろう?聖闘士には一度見た技は二度と通じない。これは最早、常識だよ?」 「おのれ…おのれぇぇ!!!」 「やれやれ、打つ手がなくなって最後は逆切れ?見苦しいね、せめて最後くらい誇り高く散ったらどうなのかなぁ」 文字通り眼の色を変えて襲い来るアモールをシラーが迎撃しようとした時、彼の前にハービンジャーが立ちはだかった。 「シャドーホーン!!」 牡牛座の聖衣すら砕くほどの拳を受け止めたハービンジャーは、アモールの腕を捻り上げ、床に叩きつけて壁際まで殴り飛ばした。 ドォォン!! 柱が砕けて壁が崩れ落ち、もうもうと粉塵が舞ってシラーが顔をしかめた。 「何をするんだハービンジャー。僕だってあいつの攻撃を受け止めるくらいは…」 「俺にも活躍の場のひとつくらい寄越せよ、何のためにここに残ったのか分かんねーじゃねーか。…それによ」 ハービンジャーはちらりと死者の黄金聖闘士三人を見て声を潜めた。 「意思と魂を持ったままの死体を召喚しているお前の身体には相当な負担がかかってるんだろ?いくらリセットと無限コンティニューが使えても、プレ イヤー自身が参っちまったらジ・エンドだ。それに、魔女と魚座を倒した後にあいつらが『裏切る』可能性も無いとは言えねぇ。万が一に備えて、お前は出来る だけ小宇宙を温存しとけや」 「…君が敵でなくて良かったと思うよ」 「お褒めにあずかりまして光栄。んじゃーここらで俺も加勢して一気に勝負を決めに行こうかね!」 高まる小宇宙に雷を纏わせて両手の拳を撃ち合せながら、ハービンジャーは殴り飛ばしたアモールに挑んで行った。 …双魚宮の床に倒れたアモールの眼は呆然と見開かれたまま、この世ではない世界を見つめている。 シラーは彼が最後に投げた真紅の薔薇を摘まんでくるりと回すと、仰向けに倒れたアモールにポトリと落として視線をメディアに向けた。 自らが利用し切り捨てた者達に野望を潰された魔女は、焦点の合ってない眼で自分を討った黄金聖闘士達を見上げて細く弱い呼吸を繰り返している。彼女が弟の後を追って冥界に旅立つのは最早時間の問題だった。 シラーはそっとソニアに歩み寄って声をかけた。 「さぁソニア、とどめを」 「!………」 「メディアはあなたの仇だ。あなたが彼女を討ってけじめをつけなくては、エデンは先に進めない」 驚いて顔を跳ね上げた彼女の眼を真っ直ぐに見つめてシラーは言った。 メディアの傍らに立って彼女を見降ろしていたミケーネと時貞がソニアを見つめて一歩下がった。 「…………、…………」 …ソニアは一度大きく深呼吸して唇を引き結び、意を決したように右手の爪を構えた。 …………… メディアとアモールを打ち倒したミケーネとソニアと時貞は、とても穏やかな顔をしていた。心残りを全て断ち切ったからだろうか。 そんな彼らを見遣ってハービンジャーはダメもとで尋ねてみた。 「なぁお前ら。マルスを倒す手助けとかもついでにしてくれないか?」 「私はマルス様への忠義を果たすためにシラーの呼び掛けに応じた。故にマルス様に拳を向ける事は出来ない」 「父様が道を誤ったのなら、それを正すのはエデンの役目。私の出番は既に終わった」 「若き聖闘士達は時を重ね過去を糧に未来に進むために戦っている。過去に囚われた俺が出る幕はない」 「何だよオイ、皆してお堅い事言ってくれちゃってよー」 ハービンジャーの言葉に、ミケーネはあくまでも真面目な顔でシラーに視線を向けた。 「そもそも、私達をこの世に留めておくだけの小宇宙はもう、シラーには残っていないだろう」 「あれ、ばれてた?」 「私達の身体はあなたの小宇宙で維持されていたから、限界が近付いている事は分かっていた」 「そうだね、ハービンジャーが援護してくれなかったら危なかったな」 「まぁ、最後まで余裕綽々の顔をしてあの魔女姉弟を欺き切ったのだから見事なものだ」 「内心では冷や汗ダラダラだったけどね」 シラーが屈託のない笑みを浮かべてあっけらかんと言うと、三人は柔らかく微笑んだ。 その身体は淡く光を放ちながら透き通り、輪郭を朧にしていく。死者が死者として、あるべき世界に帰る時が来たのだ。 「最後にもう一度礼を言わせて貰おう。…ありがとう」 「私はもう思い残すことはない。エデンによろしく言ってくれ」 「未来をよろしく頼む、アテナの聖闘士よ」 「…ああ」 「お疲れさん」 シラーとハービンジャーが彼らの手を固く握ると、透き通りかけた手が一瞬だけはっきりと形を為して、直後、光の粒になって弾けて消えた。 コツーン…。 聖衣石に戻った黄金聖衣が双魚宮の床に落ちた。 シラーは床に膝をついて聖衣石を拾うと、ギュッと手の中に握りこんだ。 …シラーとハービンジャーは無言のまま目を伏せて光になって消えた聖闘士達を悼み、どちらともなく歩きだして最上階に続く階段を昇り始めた。 若き聖闘士達の戦いを見届け、そして、散って行った戦士達の最後の言葉と意思を届ける為に。 |
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| シラーさん復帰を本気出して考えてみた願望SS・シラーさんカッコいい版です。 話を書きながら脳内で「ねーよwww」とセルフ突っ込みがありましたが、まぁ、その「ねーよwww」をやるのが二次創作だよと言い訳しながらなんと1日で書きあげたSSです。何か新しい敵が出て来るようですが、そいつら撃破後の時間軸だとでも思って頂ければ…ハイ。 この話を思い付いたきっかけは41話、玄武がワカサギ釣り(笑)の要領で異世界にいる龍峰+栄斗を助けたシーンでした。あれを見て、「じゃあ玄武の武器 で冥界にいるシラーさんを助けられない?→あ、でも玄武はマルスに与する黄金はクズだとか言ってったっけ。じゃあ助ける理由はないか→シラーさんの下衆発 言が演技で、実はアテナの聖闘士だったとか言うオチはどう?」という物凄い妄想の飛躍でこの話が出来ました。貴鬼がムウの弟子、玄武は童虎の弟子、だった らシラーさんはデスマスクの弟子でOKじゃない?と思いまして。当サイト独自設定では「シラー=デスマスクの弟子」設定を決めていましたが、それをこちら にも持ってきました。玄武、貴鬼、シラーさんの三人は年齢も近く結構仲が良かったら萌えるなぁ、と。あと、シラーさんのあの横っ面張り倒したくなるような (褒め言葉です)喋り方も、完全悪役が相手なら逆に小気味いぞ!と思ったのも理由です。 あとは、マルスの手下の振りをしていたシラーさんは、ソニアやエデンとも面識はあるかなと。ミケさんですら知らなかったアモールと顔見知りっぽいのはナァナァで(笑)。ただ、シラーさんとアモールは気が合いそうなイメージがあります。 今回、登場キャラが多くいつにもまして誰がどの発言をしているか分かりにくい気がしたのでまた最後に名前付きで紹介しています。 一つ一つ説明していたら長くなりそうなのでユナ+光牙とシラーさんの会話はかなり端折りましたが、vsユナ(+光牙)戦でシラーさんは本気出してませ ん。手抜きしてます。冥土引導も手抜き、積尸気冥界輪舞もユナに勝たせるために手を抜いてます。闇小宇宙発動光牙に驚いたのは事実ですが、ビビったのは (動揺して実力を出せずにユナに倒される事に説得力を持たせるための)演技です。シラーさんが完全マルス派だったら、マリオネットでチマチマしたり積尸気 冥界波でぶっ飛ばしたり水鉄砲でいじめたりしないでさっさと殺していれば済んだ話。何でそんな事やったかと言うと、青銅聖闘士達を鍛える為と、セブンセン シズにも目覚めてない彼らを先に進ませたところで完全マルス派のミケ+フドウに瞬殺されて終わりだからと考えたためです。半端な力のまま先に進ませて無駄 死にさせるなら、黄泉比良坂に『隔離』するかトゥーム・スクイーズに『避難』させて、自分達がチャンスを見つけてマルスを倒そうと思ってたから。んで、上 手いことユナがセブンセンシズに目覚めたので、早々にやられた振りして冥界の奥深くまでアリアの魂を探しに行ってたと。その際にソニア・ミケ・時貞(の、 魂)と出会って、メディアを倒すために協力する約束を取り付けた…的な裏事情を考えつつ話を作りました。 そして光牙が突っ込んでいますが、シラーさんは決して『良い人』ではないです。「上手く相手を騙すコツはね、十の事実の中に嘘を一つだけ混ぜる事さ」と いう台詞を考えていたのですが使いどころがなく没になったのですが、つまり、「マルスに傅いた」発言以外は、全部事実で本心です。アテナの聖闘士ではある けど、戦災孤児だったし、自分が生きる為に他人を殺しましたが何か?な価値観だし、誰かが生きる為には誰かの犠牲が必要だ(ただ、犠牲にするのが『悪い 奴』であるに越したことはない)というスタンスだし、黄金になった動機も『死にたくないし、長生きしたいから』です。アリアのことも「大人しく従っていれ ば死なずに済んだのに、とは思うよ」と言って光牙に抗議され、「『君達が彼女を連れ出すなんて余計な事をしなければ死なずに済んだのに』と言わないだけ有 難く思って欲しいね」と返すエピを考えていたのですが、それを言うとエデンとギスギスしそうだったので没にしました。シラーさんはこの土壇場で『味方』と 無駄に争うのは得策ではない、と考えてそれなりに言葉を選んで発言しています。 この時はまだシラーさんに対して悪印象しか持ってなかった光牙とユナですが、「ここは任せて先に行け」発言と彼の行動でシラーさんを見直したので、「アンタも死ぬなよ」「先に行って待ってるわ」と言っています。 そしてアリアの魂云々ですが。NDを見ると、平時なら黄泉比良坂まではアテナの管轄らしいので、彼女の魂は黄泉比良坂の最深部、ハーデスが支配する『真 の冥界』一歩手前あたりに封印されている…というイメージで話を書きました。Ωの世界ではハーデスは消滅してる設定になってるとか聞きましたがまぁ妄想 SSなのでその辺はナァナァでお願いします(笑)。 メディアとアモールの戦闘能力は現時点(41話)ではほとんど分かっていないので、魔術結界くらいは張れるかなぁとか、やっぱり薔薇を飛ばすのかなぁ、 とか、想像だけで話を書きましたので矛盾が出て来てもナァナァでお願いします(笑)。そして、ソニアはともかくミケさんと時貞の『死亡』はまだ不確定だと 思ってはいるのですが(時貞は特に思わせぶりな事を言ってましたし)、話の都合で『志半ばで倒れた』という事にしました。死者となった彼らが無念を晴らそ うと思ったら、ネクロマンサーシラーさんの出番でしょ?と思いまして。死者だから何でもアリ!はLCのアスプロスのイメージが強いせいです(笑)。 ボスを倒した時、主人公が仲間に対して「(敵に)とどめを。あなたの仇だ」と言うのは、DQ4の小説が元ネタです。バルザックを倒した勇者が、マーニャ・ミネア姉妹に自分の剣を差し出して↑の台詞を言うシーンがとても印象的だったので。 そしてシラーさんに「ここは任せて先に行け」と「聖闘士は一度見た技は二度と通じない、これは常識」を言わせたかったのでかなり満足です。ハビさんがシ ラーさんと一緒に残ったのは、玄武君や貴鬼が残るより彼が残る方が流れ的キャラ的に自然かなと思った為です。私がハビシラ派だからという理由もありますが (笑)。 最後は、シラーさん+ハビさんがマルスとの戦いを終えた青銅聖闘士達に消えて行った三人の聖衣石を渡して最後の言葉を伝えるシーンで幕を引こうかと思ったのですが、敢えてそこはご想像にお任せ…という終わり方の方が良いかな、と思ってこうなりました。 この話は私の願望とシラーさんへの萌えをぎゅうぎゅうに詰め込んだ「ねーよwww」な一本ですが、「生きていたシラーさんがソニア・ミケ・時貞を呼び出す」展開は来てくれないかなぁ…と密かに願ってみます。 ユナ 「じゃあ、玄武さんが言っていた『もう一人』って誰なの?」 蒼摩 「言われてみれば…今までの宮にいた黄金達は皆、マルスの手下だったはずだよな」 貴鬼 「あれっ?彼はまだ来てないんですか?宮にいなかったからてっきり先に行っているものだと思っていましたが」 玄武 「ああ、まだだ。俺はお前と一緒に来ると思っていたんだが…。全くアイツは、一体いつまでサボってるつもりだ」 貴鬼 「実に彼らしいですね」 玄武 「悪いがちょっと待ってくれ、『もう一人』を呼ぶから」 光牙 「…………!!」 龍峰 「…え?」 ユナ 「あなたは…」 エデン 「なっ…何故お前が!?」 蒼摩 「え?ん?何?どゆこと?」 栄斗 「…………?」 シラー 「…君達、こんな諺を聞いた事はないかい?『敵を欺くにはまず味方から』」 ユナ 「え?」 光牙 「敵…って、マルスとメディアか?」 龍峰 「要するにあなたは、マルスとメディアの眼を欺くためにマルスの手下の振りをしていたって事ですか?」 シラー 「貴鬼や玄武みたいに馬鹿正直に反抗してちゃ、探れる情報も探れなくなるからね。君達が素直に僕に騙されてくれて、ついでに天馬星座の君が闇の小宇宙を発 動するなんてイレギュラーを起こしてくれて助かったよ。おかげで自然な流れで僕は君達に『倒されて』早々にメディアの監視から外れる事が出来た」 貴鬼 「全くあなたは…スタンスや技だけでなく演技力まで師匠から受け継いだと言う訳ですか」 玄武 「敵の大将すら欺く迫真の演技は最早、蟹座の黄金のお家芸だな」 シラー 「お褒めにあずかりまして光栄」 シラー 「事実だよ、プリンスエデン」 龍峰 「どうしてあなたがそんなことを知っているんです?それに『嘘だと分かった』と言うのは…」 貴鬼 「アリアの魂の行方については、十二宮に黄金聖闘士を集めた時にマルス自身が私達に話していました」 玄武 「シラー。お前が自分の宮に戻らずにやっていた事とは、アリアの魂について調べることだったのか」 シラー 「そうだよ。天馬星座の彼が僕を冥界の入口にエスコートしてくれて、鷲座の彼女が血の池に落としてくれたからね。メディアの眼を逃れるのも兼ねて冥界の様子を見に行ってみたんだよ。上手くアリアの魂を見つけることが出来れば何かの役に立つかもしれないと思って」 エデン 「それで?アリアの魂は見つかったのか?」 シラー 「ああ、見つけた。逆を言えば見つけただけだ。彼女の魂はマルスかメディアの力で封印されていて、僕の力でどうこうする事は出来なかった」 エデン 「…………」 シラー 「ただ、彼女の魂が拘束されている場所がアテナの管轄エリアにあったというのは不幸中の幸いだね。流石のマルスも冥王ハーデスの支配する真の冥界まで踏み込む事は出来なかったんだろう」 光牙 「それはつまり、マルスとメディアを倒せばアリアの魂は助けだせるという事か」 シラー 「そうだね。僕達の力では無理でも、アテナの力なら出来るはずだよ」 シラー 「…僕、一度でいいから言ってみたかったセリフがあるんだよねぇ。『ここは任せてお前達は先に行け』」 ハビ 「はぁ!?」 光牙 「何を言ってるんだ!」 ユナ 「どんな作戦を考えてるのか知らないけど、あなた一人じゃ無理よ!」 エデン 「叔父上をただの魚座の黄金だと思うな!その実力は黄金聖闘士を遥かに凌駕するんだぞ!」 玄武 「分かった、シラー。ここは任せる」 龍峰 「ええっ!?」 エデン 「あ…姉上!?」 蒼摩 「獅子座のミケーネじゃないか!?」 栄斗 「時貞!あいつは時間の果ての世界で消滅したはずでは…!」 龍峰 「何故、彼らが…」 ミケーネ 「あの魔女と魚座はこの黄金聖衣に誓って私達が討つ。お前達はマルス様を止めるのだ」 蒼摩 「…ミケーネ」 ソニア 「さぁ行け、エデン。アリアとの約束を守ると決めたのだろう!」 エデン 「姉上…」 時貞 「俺はここで過去の螺旋を断ち切る。だからお前達は未来へ進め」 栄斗 「時貞…」 シラー 「ほら、皆がこう言ってるよ。素直に大人に甘えなよ、子供の…ああいや、『若き聖闘士達よ』」 龍峰 「…ありがとう」 光牙 「死ぬなよ、アンタも」 ユナ 「先に行って待ってるわ」 アモール 「フフ…呼びだした戦士が『不死身』とは言え術者は生身の人間。その薔薇が真紅に染まった時、あなたの命も終わるのです。役立たずの裏切り者と一緒にね」 メディア 「あれだけ大層な口を叩いておきながら油断して命を落とすとは…何と愚かな男よ」 ソニア 「さぁ、愚かなのはどちらかな?」 ミケーネ 「自分の手駒にした者の能力すら覚えておられぬか」 メディア 「………!!…アモール、時貞を!」 アモール 「!!」 時貞 「時間拳!…時間逆行!!」 |