| ぷはーっ…。 杳馬は肺に入れた煙草の煙をドーナツ状にして吐き出した。異世界の双子神を過去の世界に置いて来てそれなりの時間が経つが、未だにスタッフは呼びに来な い。 よーっぽど深刻なトラブルでも起きてるのかねェ。 暇つぶしにスマホのゲームをしていると、座布団の上で丸まっていたイギーとイギューが不意に耳をピクリと動かして起き上がった。 「アウ、アウゥゥゥ!」 「イギュー、イギュー!!」 「何だ何だァ?双子神様はちょいとお出かけしてるだけで何ともねぇって言っただろ。さっきまでおとなしくしてたのにどうしたんだよ急に」 「イギィィィ!!」 「イギューー!!」 二匹は大声で鳴きながら部屋の中をグルグル走り回り始めた。小さい犬のイギーだけならともかく、それなりのサイズの牛(?)のイギューまで走り回っては 面倒なことになる。杳馬は煙草を灰皿に押し付けて二匹に声を掛けた。 「てめェら、双子神様に会いに行きてぇのか?ひょっとしておふたりさんの身に何かあったのか?」 「アギ」 「イギュー」 「…マジか」 途端に走り回るのを辞めておとなしくなった白黒ツートンコンビに杳馬は溜息をついた。どうやらこいつらは動物のくせに人間の言葉を理解できるらしい。双 子神に会わせなければ、またけたたましく鳴き声を上げながら部屋の中を走り回るだろう。 しょうがねぇなァ…。 ぼやきつつ杳馬は立ち上がって、テーブルの上に置いてあった二つの指輪をハンカチで包み、イギーの首に巻いてあったクリスマスっぽい首輪を外して変わり に巻きつけた。この指輪にはこの世界の大人の双子神の小宇宙を込めてある、いざとなったらこれを填めれば自分達は神の力を取り戻せる…と、異世界の双子神 は言っていた。過去に飛ばした彼らの身に何かあったのなら持って行った方がいいだろう。 「じゃ、サクッと行ってきますかね」 イギーとイギューを片手で抱えて、杳馬は右手を掲げた。 …双子神を送り届けた奈落タルタロスに移動したと同時に、イギューはイギーを背中に乗せて杳馬の腕から全速力で飛び出した。文字通り、『飛んで行った』 のだ。 闇の霧に猛スピードで消えていく白黒ツートンを呆然と見送った杳馬がボソリと呟いた。 「あの牛、飛べたのか…。って、感心してる場合じゃねェな。俺も早いとこ神様達と合流しねぇと。…………」 ゆらり、目の前に現れた魔物の姿に杳馬は言葉を切った。 どうやら何事もなく双子神の元には行かせてくれないらしい。 「あーあ、いち冥闘士に落ちぶれた俺っちにどうしてこんな試練を課すんですかい、神様よぉ。って、俺も神様だっけか。んははっ」 参ったねこりゃ。 ずり落ちかけたシルクハットをひょいと直して、杳馬は懐から時計の針を模した槍を取り出した。 翼竜の鉤爪が風を切って宙を薙ぐ。 紙一重でかわしたタナトスが振りかぶった大鎌を咆哮ひとつで押し返す。ヒュプノスが放った岩石は頑丈な翼に阻まれる。 ガルーダを駆って奈落の空を飛びながら、異世界のタナトスは唇を噛んだ。 この世界の双子神はワイバーンを相手に互角の戦いを続けている。が、互角で勝利は有り得ない。タナトスを襲おうとした翼の下をかいくぐってワイバーンの 注意を逸らしながら、隣に併走してきたグリフォンの背に乗った弟に声を掛けた。 「歯がゆいな、ヒュプノス」 「うむ。この世界の我々は良く戦っていると思うが、このまま長引いては不利になる」 「しまったな…タナトス達の小宇宙を封じたあの指輪を持ってくれば、役に立ったかも知れぬのだが」 「神の力を封じた物を迂闊に違う時間軸に持ち込んではならぬと思って置いてきたのが裏目に出るとは…」 決め手に欠けるまま異世界の双子神がワイバーンの周囲を旋回していると、不意にワイバーンが爪を振りかざして襲い掛かってきた。即座にガルーダ とグリフォンが回避行動に入ったその時、ふたりの背後から猛スピードですっ飛んできた白黒ツートンの何かがワイバーンに向かって突進してそのまま激突し た。 べちっ!! 「イギュ〜〜〜〜!!」 「アン、アアン!」 ワイバーンに激突した白黒が勢い余って宙に吹っ飛ばされた。 思わずその『吹っ飛ばされた白黒』を見上げた双子神は目を見開いた。 「イギーに、イギュー?!どうしてここに!」 「グリフォン、あいつらを拾ってくれ!」 ヒュプノスに命じられたグリフォンが滑空して二匹を背に受け止めた。 一方のワイバーンは攻撃をやめて様子を窺っている。翼竜にとってはイギューの体当たりなど小石が当った程度のものだろうが、かつて小石の一撃から痛い目 を見たワイバーンを怯ませるには十分だった。 イギューとイギーを拾ったグリフォンが再度ガルーダの隣に飛んできた。タナトスはガルーダの背にしがみつきながら弟に叫んだ。 「ヒュプノス、二匹は無事か?!」 「ああ。イギューは目を回しているようだが問題ない。イギーはピンピンしているな」 タナトスがホッと安堵の息を吐くと、この世界の双子神を背に乗せたケルベロスも隣に飛んできた。魔犬の背から身を乗り出したタナトスはイギューとイギー を見て怪訝そうな顔になった。 「何だ、その白黒は」 「ええと…俺達のペットだ」 「ペット?ペットが何故ここに?」 「恐らくだが、カイロスが送り込んだのだろう。理由は分からぬが…」 「アウ、アウゥゥ!わんわんわん!!」 イギーはヒュプノスの膝を引っ掻き、頭を撫でられると、不満そうにガウガウ言いながらガルーダに飛び移ってタナトスに纏わりつき、思ったような反応が得 られないと今度はケルベロスに飛び移ってこの世界のタナトスの膝に前足を乗せてアウアウ鳴き始めた。 そんな犬の姿にこの世界のヒュプノスが首を傾げた。 「この犬、何かを伝えたいのであろうか?」 「そもそもお前は何をしにきたのだ。…ん?」 犬の首に巻かれたハンカチが不自然に膨らんでいる。タナトスがハンカチの結び目に手をやるとイギーがおとなしくなったので、やはりこれか…と呟いてハン カチを広げた。 …神の小宇宙を感じる指輪が、ふたつ。 恐らく犬はこれを届けに来たのだろうが、使い方が分からない。タナトスは異世界の双子神に見えるように指輪を掲げた。 「お前達、これが何か分かるか?」 「あっ!」 「それは…」 「知っているのだな。この指輪は何だ?」 「その指輪は、タナトスとヒュプノスの小宇宙を封じ込めたものだ!それを填めれば一時的だがパワーアップできるはずだっ!」 「何だと!」 異世界のタナトスの言葉を聞いた双子神が早速指輪を填めた。 …が、何も起こらなかった。互いの指輪を交換しても同様だった。 「何も起こらぬぞ?どういうことだ?」 「むう…ひょっとしたらそれは、俺とヒュプノスにしか効果がないのかも知れぬ」 「この世界のタナトスとヒュプノスは、己の小宇宙でパワーアップなどする必要がないからな…」 「…では、これはお前達が使ってくれ。援護を頼む」 ヒュプノスが差し出した指輪を受け取った異世界の双子神は、再度ワイバーンに立ち向かい始めた双子神を見て複雑な顔を見合わせた。 この指輪に込められた小宇宙を使えば、ふたりは大人の神の力を取り戻し、ワイバーンなど簡単に倒せるだろう。だが…。 「どうする、ヒュプノス?これを使えば簡単にワイバーンを倒せるとは思うが…」 「しかしそれでは、『この世界の我々』がワイバーンを倒したことにはならない。それに、時の異分子と言える私達が神の力を使ったらさすがに歴史への影響は 出てしまうのではないか?」 「でも、俺達がこれを使わなければワイバーンは倒せぬかも知れぬし、そうなってしまったら、イギューやイギーの頑張りは無駄になってしまうぞ」 「う…ん…。しかし…」 「…………。…使おう、ヒュプノス」 「タナトス?」 「そして、俺とお前が、タナトスとヒュプノスに小宇宙を分けよう!俺とお前はこの世界の俺とお前から小宇宙を貰うことができた。なら、逆もいけるはず だ!」 「……!」 ふたりは力強く頷くと、グリフォンとガルーダに命じてこの世界の双子神を追った。 ――ワイバーンと戦っているタナトスに近づいた異世界のヒュプノスは、自分の指に指輪を填めてタナトスに手を伸ばした。 「タナトス、私の手を取れ!」 「何だ急に!援護をしろと言っただろう!」 「これが援護だ!いいから手を取れ!」 「む…」 些か不満そうにしながらタナトスが手を伸ばしてヒュプノスの手を取った。指を絡めるように手を繋いだ途端、ヒュプノスの体に流れ込んだタナトスの小宇宙 がこの世界のタナトスにも流れ込んだ。体を満たす神の小宇宙に呼応するように、ふたりの体も小さな少年のそれから青年の入り口くらいの体格に変わった。 「これは…!」 「さぁ、行くぞタナトス!」 弟の癖に俺に命令するな、と言いかけたこの世界のタナトスは、手を繋いだヒュプノスの視線の先にいるのが己の片割れと異世界の自分だと気付いてニヤリと 笑った。右手を掲げて体に漲る小宇宙を凝縮して大鎌を作り出す。片手で扱うには少々大きすぎるそれの柄を、異世界のヒュプノスの左手が掴んだ。この世界の タナトスと異世界のヒュプノスが死神の大鎌を振るう。格段に威力が増した攻撃をかわして反撃の隙をうかがうワイバーンの前に、異世界のタナトスとこの世界 のヒュプノスが立ちはだかった。ふたりは指を絡めて両手を繋ぎ小宇宙を高めた。 「「エンカウンターアナザーフィールド!!」」 途端、地響きと共に地面から柱が、上空から隕石が現れてワイバーンを檻の中に閉じ込めた。ワイバーンは柱や隕石を破壊しながら攻撃を始めたが、 次から次から柱や隕石が現れるし羽の生えた髑髏…タナトスのタルタロスフォビア…が纏わりついてくるので、次第に防戦一方になり始めた。 勝利を確信したタナトスが叫んだ。 「よし!決着をつけるぞ、ヒュプノス!」 「…良かろう」 タナトスが右手を高く掲げる。ヒュプノスはそれに合わせて自身の左手を掲げた。ふたりの手の間に小宇宙が集まり膨れ上がる。 「「テリブルプロビデンス!!」」 双子の神から放たれたエネルギーが岩石の檻に捕らわれたワイバーンに襲い掛かった。 グオオォォォオォ!! ドォォー…ン… 断末魔のような咆哮をあげてワイバーンが倒れた。 …ケルベロス、ガルーダ、グリフォンを従えた双子神達が翼竜の前に降り立つと、ワイバーンはヨロヨロと起き上がっておとなしく翼を畳んだ。彼らを主と認 めたと言うことだろう。 タナトスは銀色の目をキラキラと輝かせて、満足気にワイバーンの頭を撫でた。 ケルベロスの背に乗り、新しく手なずけたワイバーンを従えて奈落の空を飛んでいた双子神達が目を瞬いた。彼らの向かう先、ニュクスの館の方角から誰かが やってくる。ひとりは双子神の姉神ケール、もうひとりは…。 この世界の双子神は見知らぬ男の姿に怪訝そうな顔になり、異世界の双子神は何故杳馬がケールと一緒にいるのか分からず怪訝そうな顔になった。 「姉上、その男は?」 「あんた達が出かけてしばらくしてから、館の外で誰かが戦ってる気配がしてね。様子を見に行ったらこの男が魔物を相手に大立ち回りを演じてたから助太刀に 入ったのよ」 「杳馬、何故ここに?」 「そこの白黒ツートンズがおふたりを追いかけたがっていたんで連れてきてやったんですがね、ここについた途端にダッシュでどっかに行っちまうわ追いかけよ うとしたら魔物に襲われるわ、散々でしたよ。こちらの女神様のおかげで命拾いしましたがね」 「…この男はお前達の知り合いか?」 「知り合いも何も、こいつがカイロスだ」 「何?この男からはほとんど神の力は感じぬが…。ああ、そういえば異世界の私達は時空を越えたために小宇宙を無くしたと言っていたな。お前もそうなの か?」 「ええまぁ、そんなもんっスよ。さ、タナトス様にヒュプノス様…と白黒ツートンズ、元の時代に帰りましょう」 「…うむ、そうだな」 「あまり長い時間ここにいるのも良くないだろうしな」 多少の名残惜しさを感じながら異世界の双子神が頷くと、この世界の双子神も少し残念そうな顔でふたりを見た。 「そうか、もう帰るのか」 「助かった、感謝する」 「あー、そうだそうだ。申し訳ありませんけど、こっちの世界の神様達の記憶は、ちみっこい双子神様に関する部分だけちょいと封印させて頂きますよ。この世 界、この時代の神様が『未来の知識』を持っていると歴史が歪んじまうかもしれないんでね」 「え?タナトスとヒュプノスは、俺達と一緒にワイバーンを倒したことを忘れてしまうのか?」 「何だ、つまらんな」 「事情が事情ゆえ、仕方ないが…」 「…………」 双子神達が不満そうな顔で黙り込むと、杳馬は殊更おどけた口調で人差し指を立てて見せた。 「まぁまぁ、そうガッカリなさらずに。元の世界に戻ったら、ちゃーんと封印を解いて記憶を戻しますから」 「本当かっ?!」 「いくら俺でも、すぐばれるような嘘はつきませんよ。何なら約束の証でも残しておきましょうか?」 「約束の証?」 「はーい」 杳馬はにっこりと笑って懐からスマホを取り出した。 「電波は通じねェけど写真は撮れますからね。写真を撮ったスマホを神様達に預けておきますよ。それならいいっしょ?」 「おお、写真か」 「悪くないな」 「ほんじゃ神様方、ポーズ取ってくださいな。あ、けろーにょパーカー要ります?」 「写真?ポーズ?」 「けろーにょパーカー?」 「いいからいいから!イギー、イギュー、お前達も一緒に写真を撮るぞ!」 異世界のタナトスはけろーにょパーカーを着こんで弟に渡すと、この世界のタナトスとヒュプノス達と白黒ツートンズを引っ張り寄せて、パーカーを着たヒュ プノスの腕にイギューを押し付けて頭にイギーを載せた。 「いいぞ、杳馬!」 「はーい、では撮りますよー。こっちを見て笑ってくださいねー」 パシャリ。 タナトスコンビは満面の笑みで、この世界のヒュプノスは戸惑ったまま、異世界のヒュプノスは頭に乗ったイギーがずり落ちたのを感じて微妙な顔で、写真に 写った。 「では、またな。未来で会おう」 …タルタロスの光景が、濃密な霧が、リアルマーベラスと混ざり合ってマーブル模様を描く。一度混ざったマーブル模様がゆるゆると解けて消えると、双子神 達と杳馬、イギー、イギューは特撮スタジオの控え室に戻っていた。 「さーてと、俺っちがあっちに行ってる間に呼び出しが来てたとかそんなオチは勘弁して欲しいんですがねェ…」 杳馬の言葉が終わるか終わらないかのタイミングで控え室のドアが開いた。絶妙のタイミングで戻ってきたかな?と思った杳馬は、顔を見せたのがこの世界の タナトスとヒュプノスだと気付いて首を傾げた。 「あれ?タナトス様自ら呼び出しに来られたんですかい?」 「いや、伝言を預かってきた。『トラブルを起こした機材の復旧の目処が立たぬから、今日の撮影はキャンセルで』だそうだ。俺達の撮影も出来ぬゆえ、我々も 今日はお役御免だ」 「と言うわけで、今後の予定は白紙だ。…メフィストよ、予定が決まるまでお前には暇を与えるゆえ妻にでも会ってくるが良い」 「マジっすか!へへー、ありがたきお言葉!じゃ、早速パルティータちゃんに会いに行って来ますよっと!」 愛妻に会えるのが嬉しいのかアウェー気味の状況から早く逃れたかったのか、ルパン三世のような走り方で猛スピードで去っていく杳馬を見送ったタナトス少 年がはっとした。 「しまった、杳馬のスマホを預かったままだったぞ!」 「あ…」 「ん?チビ助、どうしてお前がメフィストのスマホを預かっているのだ?」 「それに何だ?その、キトンの上にけろーにょパーカーと言うふざけた格好は」 「え?あ、これは…」 「ええと…」 小さな双子神は顔を見合わせ、合わせ鏡のようにうーんと唸り、何とも困った顔でこの世界の双子神を見上げた。 「呼び出しを待っている間に色々あったのだが、色々あって、話すと長いのだ」 「杳馬がいれば話は早かったのだが、奴は行ってしまったしな。しかもスマホはタナトスが預かっているから呼び戻すこともできぬ」 「色々?何があったのだ?」 「だから、色々だ」 「話すと長いし、杳馬がいないから面倒なのだ」 「…ふむ」 「暇をやると言ったそばからメフィストを呼び戻すのもナンだしな。急いで聞かねばならぬ話でもないようだし、折を見て聞くとしよう。…ところでチビ共。予 定外に時間が空いたのだ、ミスドに行って作戦会議でもしようではないか」 「作戦会議?」 「何のだ?」 「フ…。この時期に作戦会議をすることなどひとつしかあるまい」 タナトスがニヤリと笑ったのを見て異世界の双子神は顔を見合わせ、足元に擦り寄ってきたイギーが緑と赤のリボンのついたベルを咥えているのを見てパッと 顔を輝かせた。 「そうか、クリスマスだなっ!」 「作戦会議のしがいがあるな」 「イベント内容、料理、ケーキ、出し物、会場…考えることは山ほど有るぞ。俺達はシラーと合流して玄関で待っているから、お前達も着替えを済ませたらすぐ に来るのだぞ」 「「分かった!」」 …異世界の双子神が服を着替えてけろーにょパーカーをしっかりと着込み、脱いだキトンを鞄にしまっていると、イギーとイギューがやってきた。二匹はキト ンに鼻をくっつけてクンクンすると、何か言いたげな顔で双子神を見上げた。 「何だ?」 「イギ、イギギ」 「イギュー」 「『さっきのことはいつ皆に話すつもりなのだ?』と聞いているのであろうか」 「そうなのか?」 「イギー」 「イギュー」 ヒュプノス少年の言葉に、タナトス少年は銀色の目をくるりと回して、にっこりと笑った。 「そうだな…では、クリスマスパーティーのサプライズで話すというのはどうであろう?」 「イギー」 「イギュー」 「『イギなし』と言っているようだな」 「お前はどうなのだ、ヒュプノス」 「私も異議はない」 「では、決定だ!イギーもイギューも、クリスマスまでこのことは誰にも言ってはならぬぞ。俺達だけの秘密だ!」 タナトス少年がモミジのような小さな手を差し出すと、イギーとイギューが前足をちょんと乗せて『お手』をした。その姿ににこりと笑ったヒュプノス少年も 手を差し出して重ねた。 「「指きりげんまん!!」」 にっこりと笑って白黒ツートンズの頭をよしよしと撫でると、双子神は鞄を肩にかけて二匹を連れて部屋を出た。 今年のクリスマスパーティーもきっと、冥界でも開かれるだろう。その時はワイバーンやケルベロスに乗せてくれと双子神に頼もう。あいつらは自分達のこと を覚えているだろうか。忘れてしまっていたら、あの時の写真を見せたら思い出してくれるだろうか。いやいやその前にクリスマスの作戦についてこの世界の双 子神と会議をしなくてはならぬ。今日のことは秘密にしたままで、ワイバーンやケルベロスに会えるイベントを盛り込んでもらわねば。さて、何と言ってふたり を丸め込もう? そんなことを考えながら廊下を歩く小さな双子神の足取りは、ウキウキと弾んでいた。 |
| 星矢部屋 |
総合目次 |
SS・2012
時代 |
SS・神話時代 |
SS・蟹座達 |
| クリスマス合わせだけど余りクリスマスとは直接関係ない内容になった
クリスマスSSです(笑)。 蝶様に、当双子神(ちみっこVer)と蝶様双子神の4人のイラストを頂いて、これがもう可愛くてかわいくて、「ちみっこ双子神×2の話を書きたい!」と 思ってこの話が出来ました。イギューも余りにも可愛かったので登場してもらいました。蝶様のお話では、「双子神がピンチになった時にどこからともなく現れ る一輝のような存在」だそうです。尚、設定イラストでは「ミルクは出ない」となっていますが、「ミルクが出ない…残念です」とお伝えしたところ「ミルクは 出る」設定に変えていただきました!絞ったミルクでチーズやバターを作る話も作れそうでワクワクです(^^) そして、杳馬って便利なポジションですね(笑)。実際のところはタイムトラベル系の力を持っているのは時の神クロノスの方で、カイロス(杳馬)の力は肉 体の時間を操るそうですが、その辺は突っ込まない方向で。LC外伝で杳馬が色々な時代に現れていたので、タイムトラベル系の力も無くはないのかなと。冥闘 士状態の杳馬が双子神の記憶を封印してますが、双子神が子供で神の力も弱いこと、記憶の封印に同意していることで、弱い力でも神の記憶を封印できた…と考 えています。 ちみっこ双子神の共闘は、最初はタナトスコンビ+ヒュプノスコンビで考えていたのですが、小宇宙のやり取りはタナトス←→ヒュプノスだったのを思い出し たのでこんな感じに。当タナ+蝶様ヒュプと当ヒュプ+蝶様タナ様のコンビを書くのは新鮮で楽しかったです。尚、どちらの双子神も最初は小学校低学年(7 歳)くらいの外見で、パワーアップ後は無印時代の星矢達(13歳)くらいに成長しています。で、バトル終了後は縮んでいます(笑)。 |