| サイキッカー部隊の施設の最上階、最も奥まった部屋にウォン専用の会議室があった。 高いドーム型の天井には豪華なシャンデリアが吊るされ、天井まで届く大きな窓ガラスから太陽の光が入る部屋の真ん中にどっしりと丸テーブルが置かれている。 その周りには、テーブルと同じように完全オーダーメイドの椅子。 最初は3脚から始まったそれは4脚になり5脚になり、そしてこの日6脚になった。 ウォンは席についた幹部達を見回しておもむろに書類の入った封筒を配った。封筒の厚みは大学ノートくらいで、受け取ったガデスは怪訝そうな顔になった。 「司令官殿よ、これは何だ?」 3人は書類を取り出しぱらぱらとめくった。 「その中で印象に残っている者がいますか?」 エミリオが摘まみ上げた書類に貼られた写真を見て、ガデスは苦虫を噛み潰したような顔になった。 「……そいつなら俺も覚えてるよ」 ウォンの言葉にガデスとエミリオは初めてその男の経歴に目を通した。 「この父親は存じ上げていますよ。確か、お人好しで理想論ばっかり主張するどこかの総帥みたいな方でしたね。テロリストと裏で手を組んでいたとか言われて政界から姿を消しましたが…まさかその息子が国軍に籍を置いていたとは。皮肉なものです」 ブラドがポツリと呟いて、会議室に沈黙が落ちた。 (この人も自分と同じ) 積極的に思い出したくはない、しかし決して消えない、澱のように心の中に残り続ける両親への想い、無条件に与えられるはずの両親の愛情への渇き。 「んで?印象に残った奴をピックアップしてどうするんですかい司令官殿」 ガデスはギリギリと葉巻を噛み締めて書類をひらひらさせた。 「選ぶも何も、俺ら全員の印象に残ってるのはこいつだけじゃねーか。その理屈で行くと選択の余地無しでこいつが合格ってことになるぜ?」 ブラドが咎めるように言ったがその表情は柔らかい。 「本気でそう思ってるなら僕達の意見なんて聞かないでしょ?」 痛いところを突かれたのかブラドがわずかに眉を曇らせた。彼を下手に刺激すると碌なことにならないのはガデスも承知しているのでそれ以上は言わずに黙った。 「話を戻すけど。僕はこの人を推薦するよ。初めて会った時から何となく気になってたし、うまくやっていけそうな気がする。皆は?」 ガデスは情けない顔になって仲間を見回した。 「いいんじゃないの」「特に問題ないでしょう」 「むしろ何がダメなの?」 「知らねーからな、俺は!賛成した奴、何かあったら責任取れよ!」 ガデスは書類を丸めて力一杯テーブルに叩き付け、ドカドカと足音高く会議室を出ていった。 ブラドはくしゃくしゃになった書類を丁寧に広げた。 書類に貼られた兵士の写真。闇空を呑み込んだような紫紺の眼と濃い蜂蜜色の髪が印象的だった。 よろしくね、『刹那』。 彼はそっと呟いた。 |
| サイキ部屋 |
総合目次 |
| 10年前の小説では、ウォンとブラドが刹那を選んだ理由をどうこじつけたか忘れてしまったので、幕間と言う形で書き足しました。この話の最後、最初は
『ブラドが写真(の、刹那)に口付ける』って文章で〆たのですが、かなり悩んで削除。ブラド(表)の静かな狂気みたいのを表すのにいいかな、と思ったんで
すが、さすがにどうかなと思い直しまして。 あと、あれこれ考えなくても勝手に動いてくれてとても有り難いガデスですが、何故彼はこんなに『刹那』の加入に難色を示してるのでしょう。自分で書いてて分からなかったりします(笑)。 |