THE DARKNESS
EPISODE 17:西暦2012年10月21日 サイキッカー部隊研究棟


 所長室に向かう道すがら。すれ違う者達が驚きや不審や好奇心や色々な眼を向けて来たが、刹那の不機嫌そうな顔を見ると何も言わずにそそくさと離れて行った。
 …所長室に戻ると、傷だらけの刹那ともっと傷だらけのレジーナにクリスと栞が蒼白な顔で立ち上がった。

「刹那、レジーナ!」
「刹那殿、お怪我を!」
「えっ…クリスさん!?」

 手近にあった椅子に仏頂面の刹那が腰を降ろすと、栞が心配そうに駆け寄って来た。
 クリスは刹那と栞を見て、レジーナに眼を向けた。

「ブラドから連絡を受けたわ。悪いようには絶対にしないから。私達はあなたの味方よ、安心して」
「クリス、さん…」

 たちまちレジーナの眼が涙で潤んだ。
 クリスはハンカチを差し出して優しく微笑んだ。
 そして、レジーナの顔の痣と折れた腕を見て、わざとらしく腕を組んで刹那を振り返った。

「刹那…あなたね、女の子の顔を殴っちゃ駄目でしょ?もっと優しくしてあげないと」
「俺は十分優しくしてやったぞ」
「栞ちゃんの時とは大違いのようだけど?」
「対話の手段が言葉か拳かの違いだ、そのくらい大目に見ろ」
「…女の子相手に拳で語り合うなんて、あなたにしか出来ない芸当ね」
「そもそも女の『子』って歳か?」
「…………」

 ピキッ。
 クリスとレジーナの顔が引きつる音が聞こえた気がして、刹那は慌てて口を噤んだ。微妙な年頃の女を相手に歳の話は禁句というのは世界共通の常識だ。
 口を閉じて視線を逸らした刹那を一度睨んでからクリスは栞を見遣った。

「…栞」
「はい?」
「悪いけどレジーナの腕を治してくれる?」

 クリスの言葉に栞は複雑な顔になった。黄金色の眼に僅かに不満が見える。

「その方は刹那殿にお怪我をさせた敵ではないのですか」
「さっきまでは敵だったけど、今は『捕虜』だから問題ないわ。ね、お願い」
「…よろしいのですか、刹那殿」
「捕虜の治療は軍規…掟に違反しない。クリスがそうしろというなら俺が反対する理由はない」
「分かりました。お二人がそうおっしゃるのなら」

 渋々ではあったが栞は頷いた。
 …レジーナの腕の治療にはさほど時間はかからず、刹那の戦闘後データ採取より先に終わった。
 無事に治った肩をぐるぐる回して彼女は感心したように栞を見た。

「ちゃんと治ってるよ!すごいね、あんた。えーと…」
「栞です」
「シオリかぁ、いい名前だね。ありがとね、栞」
「いえ…」

 敵だと思っていたレジーナに明るく礼を言われて、栞はもじもじと椅子に腰を降ろした。
 レジーナはそんな栞をじっと見て、首を傾げた。

「ところで栞、凄い力を持ってるけどサイキッカーじゃないよね。何者なの?」
「影高野の神妃をしておりました」
「カゲコウヤ…?」
「2年前、ノアの脅威になっていた日本の呪術師集団があったでしょ?その影高野の最高指導者がが栞なの」
「ああ、あの戦う坊さん達か。『御主達の力は危険すぎる!』とか言ってくれちゃってさ。ったく、自分達はどうなのよ」
「…耳が痛いです」
「あ。ご…ごめん、トップの前で悪口言っちゃーダメだよね」
「良いのです。自分達を棚上げにしてサイキッカー達を一方的に悪と断じたこと…それは間違いないのですから」

 静かに首を横に振る栞に、レジーナはふと不思議そうな顔になった。

「そう言えば、何でその影高野のトップが軍の研究所なんかにいるの?」
「影高野は壊滅しました。私はその時、刹那殿に連れられてここに来ました。今は医療班のお手伝いをしています」
「…………」

 レジーナは栞とクリスとだんまりを決め込んでいる刹那を順番に見た。

「えーとつまり、そこの秘密兵器様が影高野を壊滅させて、トップの栞を軍に連れて来たってこと?」
「そういうことね」
「ちょっと待って、じゃあ栞にとって刹那は仲間の仇じゃないの?何でそんなに仲良さそうなの?」
「色々あってね。話すと長いのよ」
「一言でまとめてよ」

 刹那のデータを取り終わったクリスは、顎に指を当てて考え込んだ、振りをした。
 …刹那は何となく嫌な予感がした。
 クリスはわざとらしく真面目な顔をして言った。

「…恋は盲目」

 栞が頬を赤くして口をパクパクさせる横でレジーナは口を半開きにしていたが。

「なるほど」

 いかにも納得したと言う様子で頷いたので、刹那はもう一度レジーナを張り倒したくなった。

 

 

 

「えー、じゃあ栞はカルボナーラもハンバーガーも食べたことなかったの?」
「はい。刹那殿に食べさせて頂いて、こんなに美味しいものが世の中にあったのかと驚きました」
「そっかー。そう言えば私も初めてハンバーガー食べた時は感動したなぁ」
「刹那殿には『ジャンクフードごときでそんなに喜ぶな、格が下がる』と言われましたが…」
「男って言うのはデリカシーがないものなのよ。気にしない気にしない」
「その点、ブラドさんは細やかに気遣いしてくれそうじゃない?」
「んー…確かに気は使ってくれるんだけど。気は使うけど気が利かないのよね」
「あーあるある。兄さんもそうだもん」
「レジーナ殿のお兄様?」
「出たな、御自慢のお兄様」
「えっへへへー」
「御自慢なのですか。それはきっと素晴らしい方なのでしょうね」
「そりゃーね、私の兄さんだもの。世界一よ世界一」
「ブラドよりカルロの方が上だって言うの?それは聞き捨てならないわねー」
「せ…刹那殿も素晴らしい方です!色んなことを御存知です」
「やだなぁ、私はあんた達の彼氏がイケてないなんて言ってないよ?どっちも結構レベルは高いと思うけど、私の兄さんには負けるってだーけ」
「ええー」
「どこがどう負けてるのよ〜?」
「そうねー、まず外見でしょ、それから……」

 …何で俺はここにいるんだ。
 イヤホンをして携帯ゲームに集中しようとしても聞こえて来るガールズトークに辟易としながら刹那は心底思った。
 女性陣がおしゃべりで打ち解けたのは別にいいのだが、聞きたくもない下らない話を延々聞かされるのは…しかも自分の名前も出て来るときては、もはや拷問に近い。
 せめて別室にでも行ければいいのだが、誰かが来た時に『レジーナが暴れ出した時に取り押さえる奴』がいなかったら大問題になるからそれも出来ない。大して広くもない部屋の端と端に離れるのが精一杯だ。
 壁の時計を見上げると、レジーナがここに来てからまだ1時間もたっていない。
 誰でもいいから帰って来て交替してくれないか、と本気で思った。司令官やブラドに仕事を中断して帰って来いなんて贅沢は言わない、この際ガデスでもいい。いやむしろ適任だろう。
 つか、こんなオモシロイことになっているのに何であいつは遊びになんか行ってるんだ?
 理不尽な文句を内心で呟いて、刹那は携帯を取り出した。
 ガデスの番号に電話をかけると3コール目で留守番電話に繋がった。

『うぉーっす。タイミングが悪かったなぁ、掛け直してくれや』

 この野郎。
 オリジナルの留守電のメッセージに本気で殺意を感じた。

『どーしても大事な用件があったらメッセージ頼むわ。聞く保障はないけどな!』
「大事な用件だったら聞きやがれ!」

 思わず留守電のメッセージに文句を言うと。

『おう、何だ?』

 録音ではないガデスの声が返って来た。
 どうやら『居留守番電話』だったらしい。ガデスらしいと言えばガデスらしいが。

「今すぐ研究棟の所長室まで戻れ!」
『あん?何があっ』

 プチッ。
 返事を待たずに通話を切った。
 半ば叩き付ける勢いで携帯をテーブルに置いた途端、着信メロディが鳴り出した。
 御丁寧にかけ直してきやがったのかあの野郎。
 一瞬そう思ったが、ブラドからの連絡かもしれないと気付いて着信画面を確認してぎょっとした。慌てて通話ボタンを押した。

「刹那です」
『ウォンです。つい先ほど仕事が終わりましてね、メッセージを聞きました。早速ですが、指示を出す前に現在の事の経緯と現在の状況を伺いたいのですが…』
「1時間ほど前に、『ノアのサイキッカーが司令官を出せと騒いでいる』と連絡がありまして…」

 時折ウォンの質問に答えながら、ブラドから『とにかくレジーナを保護しろ』と指示が出された事も含めて報告を進めた。

「…と言う訳で、今はクリスや栞と下らない話題で盛り上がっていますが…」
『ふむ…。話を聞く限りレジーナの独断による暴走の可能性が高いですが、タイミングを考えるとレジーナの単独行動を見越したノアの作戦と言う可能性も捨て 切れませんね。ガデスを呼び戻したのは正解でしょう。何があるか分かりませんので引き続き監視をお願いします。少将には私から手を回しておきますから、誰 か来ても少将の指示で入れられないと追い返して下さい』
「分かりました」

 取りあえず大きな気掛かりの一つが解決したので、刹那はイヤホンをきっちりと耳に入れ直してゲームに集中する作業に戻った。

 

 

「あっれー!?レジーナじゃねぇか、なんでこんなとこで茶してるんだ?」

 ゲームがストーリー的に面白くなって来たところにガデスが帰って来た。刹那が一方的に電話を切った後、真面目にまっすぐ帰って来たらしい。
 たちまち憎悪に顔を歪めたレジーナが飲みかけのジュースをカップごと投げ付けたが、そんなものが重力使いのガデスにぶつかるはずもなく中身ごと空中で静止した。
 ぶちまけられたジュースがそのままの形で止まっている光景に栞が眼を輝かすのを満足げに見遣って、ガデスはカップに中身を戻してレジーナに投げ返した。受け取ったレジーナはフンと鼻を鳴らした。

「そこは頭から被りなさいよ、空気が読めない男ね」
「ひでぇ言い種だな」

 情けない顔で肩を竦めながら彼はざっと部屋の中を見た。
 …この間のカルロの件でブチ切れたレジーナが後先考えずに軍に殴り込んで来たはいいが刹那に返り打ちにされて、変なとこで真面目と言うか馬鹿正直な刹那 は軍規に則ってレジーナを研究棟に連れて来た。どう言う理由でレジーナをおとなしくさせたか分からないが、導火線の火が燻ったままの爆弾を放置して帰る訳 にも行かないからクリスと神妃の護衛兼レジーナの監視役でここに残ったか。わざわざ電話してまで俺を呼んだ理由は、カシマシイ女共に辟易したからか?
 大雑把かつほぼ正確に状況を把握したガデスはいつもの調子で刹那に声をかけた。

「知的美人にお色気美女に清純派美少女…いい女3人侍らせてナニしてやがったんだ刹那よ?羨ましいなこの野郎」
「…本当に空気が読めないな、貴様は」

 完璧に整った顔を怒りに歪めて刹那はガデスを睨み付けた。
 空気なら無論読んでいる。その上であえて冗談を言っているのだが。
 …と、思ったら、その程度は刹那も分かっていたらしい。

「クリスやノアの女ならまだしも、栞の前で言っていい事と悪い事の区別をつける気はないのか」
「なんだ、分かってたのか。俺はてっきり素で分かってないからキレかけてるのかと思ったぜ」
「俺はそういう品の無い冗談が心底嫌いなんだ!」
「お前、変なとこで潔癖性だよな…」

 大袈裟に眉を潜めてみせたガデスをクリスが一刀両断した。

「品の無い冗談が嫌いって普通よね。それを潔癖性って思う時点でズレてるわ」
「えー」
「たかが冗談、されど冗談です。TPOを弁えて発言された方がよろしいのでは」
「ひでぇぇ、お姫さんまでンなこと言うかぁ?」
「どっちも至ってマトモなこと言ってるよ。真摯に受け止めな」
「んなぁぁレジーナまで!」

 どよーんと重い空気を纏ってしゃがみ込んだガデスはどこまで演技か分かりにくい凹んだ顔で刹那を見遣った。

「来た早々悪いが帰っていいか?」
「馬鹿を言え。二人であの女を監視しろと司令官から指示が出ている」
「あーあ、さっきのお前からの電話、取るんじゃなかったなぁ…」

 ぶつくさ言いながらガデスは適当な椅子を引っ張って来て腰を降ろした。

「来ちまったもんは今更ガタガタ言ってもしゃーねーか。んで?マジな話、何があったんだ?」
「そこの女が司令官の首を取りに乗り込んで来たが、基地には俺しかいなかったから、俺が出て叩きのめした。その時はブラドにしか連絡がつかなかったが、『自分が戻るまでレジーナの安全を確保しろ』と指示が出て、結果がコレだ」

 同じ事を2度説明するのは面倒で要点だけ伝えたが、ガデスはそれで大体の事情を把握したらしい。
 ふんふんと頷いて刹那を見てにやりと笑った。

「何だかんだでブラドの指示通りレジーナもオトした訳か。さすが『女子供キラー・最終兵器刹那』だな」
「殺すぞ」
「その『女子供キラー・最終兵器刹那』って何よ?」

 眼が本気の刹那にガデスがわざとらしくドン引きして見せたが、レジーナはお構い無しに尋ねた。たちまち刹那の顔が不快感に歪む。

「貴様には関係ない!」
「何よその言い種は」
「はーいはいはい双方冷静に、冷静に。ここで一戦やらかしてみろ、大真面目に上が出て来るぞ。下手したらお前ら両方とも『処分』されるぜ?そんなん馬鹿馬鹿しいじゃねーかよ。ここは穏やかに行こうぜお二人さん」
「…チッ」
「ふん」

 ガデスになだめられるなど凄まじく不快だが彼の言う事は尤も過ぎたので、渋々刹那とレジーナは振り上げかけた拳を降ろした。
 どうなる事かと一瞬ヒヤリとしたクリスと栞もほっとした表情になった。刹那とレジーナが同時にキレてしまったら、彼女達では止められない。ガデスがこの場にいて良かったと初めて思った。
 自分の役目と居場所を見つけたガデスは上機嫌でその本領を発揮し始めた。

「刹那はよ、どういう訳か…やっぱりツラがいいからなのかねぇ、女子供にやたら懐かれんだよ。そこのお姫さんだろ、研究所のガキ共もそうだし、例のハンターにも妙に好かれていやがる。そんな訳でついたあだ名が『女子供キラー・最終兵器刹那』ってわけだ」
「おいガデス…」
「いいじゃねーかこのくらい、軍事機密にはひっかからねーよ。それとも何か?ばらすならお前が研究所のサンプル共を初めて見た時はショックでヘコんでた話をした方が良かったか」
「な…」
「何それ」

 刹那が顔を引きつらせ、レジーナは椅子から立ち上がってつかつかと近付いて来た。
 抗議しかけた刹那の口を馬鹿でかい手で塞いで、ガデスはあくまでもふざけた態度で続けた。

「この刹那はな、人工サイキッカーになって研究所防衛任務に就いて初めて研究所の実体つぅもんを見たんだよ。かなりエグイ事やってたからなぁ、飯が喉を通 らなくなるくらいショック受けやがって、俺ら心配したんだぜぇ?サンプル共に同情してノアに手を貸すとか言い出したらどうしようってな」
「ショックを受けた?軍に属して私達サイキッカーを殺し続けて来た奴が、研究所のサイキッカーに同情したって言うの!?」
「同情つうか…実験を止めさせるために所長を殺そうとはしてたな。途中で邪魔が入ったから未遂に終わったがよ」
「…どういうこと」

 レジーナは、ガデスに押さえ付けられて口を塞がれて顔を赤くしてもがいている刹那を睨んだ。
 …ようやくガデスの馬鹿力から解放された刹那がゴホゴホ咳き込みながら問い返した。

「…何がだ」
「どうしてあんたがショックを受けるのよ。知ってたんでしょう?研究所に拘束されたサイキッカーがどんな扱いを受けているか!知ってたくせにどうして驚くのよ!?」
「………」
「書類上の文字やデータで得た知識と、実際に見て感じた実体は全くの別物よ」

 答える気のない刹那に変わってクリスが答えた。
 レジーナはテーブルに両手をついて食い付くように刹那を見た。

「じゃあどうして、どうしてあんたは軍なんかにいるのよ。人間達がサイキッカーにどんなひどい事をしているか、してきたか、分かったんだよね?それなのにどうして人間の味方をしてるのさ!?」
「積極的に人間の味方をしているつもりはない。お前達のしている事が気に入らないから結果的にそうなっているだけだ」
「どうしてよ!私達は虐げられているサイキッカーを助けているのに!」
「助けている、だと?自分達のしている事を美化するにも程があるぞ」

 刹那は唇を歪めた。

「貴様らは研究所に拘束されているサイキッカーをノアに移動させているだけだ。挙げ句、移動させたガキ共を戦場に送り込んで無駄死にさせていやがる」
「私達だって仲間を死なせたくなんてない!お前達が人間の味方をしなければ…」
「どこまで馬鹿なんだ貴様は!」

 激高した刹那が拳でテーブルを叩いた。
 クリスと栞は口を開く事も出来ず、ガデスは面白そうにしながらいつでも二人を押さえ付けられる体勢で、葉巻をふかし始めた。
 何か言い返そうとしたレジーナに刹那が畳み掛けた。

「貴様らが研究所を襲撃して『サンプル』を奪ったら、国はどうすると思う?『仕方ないから諦めよう』などと考えると思うか?『仕方ないから次を探そう』と、別のサイキッカーを探すに決まっているだろうが。そんな簡単な事も分からないのか!」
「だったらまた私達が助けに行く!」
「それが馬鹿だと言ってるんだ!」
「どうしてよ!」
「貴様らが何もしなければ、研究所が補充する『サンプル』の数は少なくなる。社会に隠れているサイキッカーが告発されて掴まって研究所にブチ込まれる事も少なくなるんだ、どうしてそれが分からない!」
「じゃあ今研究所に掴まって苦しんでいるサイキッカーを見殺しにしろって言うの!」
「犠牲者の数は少ない方がいいに決まっていると言っているんだ!」
「大勢の為に少数が犠牲になるのを見て見ぬ振りするなんて卑怯よ!」

 レジーナが拳を握りしめて頭を振った。
 その反応に刹那が苛々と椅子を蹴立てて立ち上がった。

「見て見ぬ振りなどしていない!少数を助けるために大勢を危険に晒すのは馬鹿だと言っているんだ、いい加減理解しろ!」
「その少数を救うためにノアは存在しているんだ!」
「〜〜っ!」

 言いたい事をうまく言葉に出来ないもどかしさに刹那は髪を掻き回した。
 普段なら刹那の言わんとする事を察して『通訳』してくれるクリスやガデスも今回は口を出す気はないらしい。
 噛み合わない口論を続ける刹那とレジーナを見て、口を開いたのは栞だった。


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サイキ部屋
総合目次


 刹那vsレジーナ第二ラウンド前半戦です。10年前はこの二人が口論する場面は本誌にはなくて、後からコピー本で付け足した覚えがあります。どういう流れ だったかははっきり覚えてないのですが、刹那がレジーナの襟首を掴んで涙を流しながら「どれだけの人間がお前達に殺されたと思っている!?」となじるシー ンがあった気がします。で、戸惑ったレジーナが自分の襟首を掴んだ刹那の手を握ると、仲間が殺された時の刹那の記憶が流れ込んで来てショックを受けると か、そういう展開だったような。今にして思えば、あの時点で刹那が泣いちゃダメだったなぁと思います。
 んで、この第二ラウンドで刹那が喚き散らしている事(主に次のエピソードですが)は、概ね私が2012世界の新生ノアに対して思ってる事です。刹那にし ては妙に理屈っぽい主張をしててらしくないかなぁと思いつつ、立場的にこういう事言えるのは彼しかいないので私のノアへの突っ込みを代弁して頂きました。