| オルゴールが鳴っている。 母が自ら命を絶った場所で流れていたメロディ。 流れる音楽は途切れ途切れになり、ゆっくりと止まった。 …手を伸ばしてゼンマイを巻いたが、もうメロディは流れない。 ウォンは椅子から立ち上がりカーテンを開けた。 青白い満月が必要最低限の明かりに照らされた執務室を覗き込んでいた。 マイトが生まれた世界に続く歴史の歯車はこの場所から狂ったのかもしれない。 2012年12月のあの日、自分が彼を手に掛けたあの時から。 (マイトが生み出した新たな流れは果たして、時の流れを変えうるのか…) ウォンは眼を細めた。 未来の自分と知識を共有できても、時を支配する力はあっても、その流れを変える力は彼には無かった。絶対的な力を持ちながら他の者に頼るしか無かった。 あの二人はマイトの記憶を視て、これから訪れるはずの未来を知った。黙って手をこまねいているとは思えない。しかしウォンに何かを問い質すでもなく、相談を持ちかける事も無かった。 と、いうことは…。 (この世界のあなたも私に牙を剥きますか…) …近付いて来る闇の波動を感じてウォンは扉に眼を向けた。 何かを決意したように迷いなく落ち着いた…彼らしくない気配。どうやら本気で創造主に戦いを挑むつもりらしい。 ウォンは眼を眇めた。 彼が負ければ恐らくマイトが生まれた歴史が繰り返されるだろう。 彼が勝っても遠からずその寿命が尽きてブラドはひとり遺される。 どちらを選んでも正解ではない、しかし選ばねばならない…運命の選択の時。 世界はどちらを選ぶのか、それを決めるのはウォンではない。 …ウォンの背後で、両開きの扉が静かに開いた。 |
| サイキ部屋 |
総合目次 |
| 最終決戦直前の幕間。ウォン視点の話はこれが初ですね。私の中でウォンは(ブラド絡みで)好感度の高いキャラなのですが、彼自身に関して深く考察した事が
ないので(原作でのキャラも対位置もかなりカッチリ固定されてますし)、今回のリメイク小説では扱いに結構苦労しました。 んで、時を支配するウォンであっても『時の流れ』を返る事は出来ない…というある意味矛盾とも言える皮肉な設定を入れてみました。時が支配出来る上に流れも好きなように変えられるのでは話が成り立たなくなっちゃいますからね(^^;) |