| えぇん…え
ぐっ…ひぃー…ん…… ………… 子供が泣いているな…。 半分覚醒し、半分眠っている頭でタナトスは思った。 (ん…?…エリシオンに子供などいたか…?) (…ああ…確か、異世界の俺とヒュプノスが来ていたのだったな…子供の姿で…) (……………) (いや、待て…確かあのチビ共は、俺達の小宇宙を分けたことで大人に戻ったはず…) そこまで考えたあたりで目が醒めた。 タナトスは眼を数回瞬いて意識を覚醒させ、ゆっくりと体を起こして隣を見て、異世界の自分達が寝ていた場所に誰もいないことに気付いてぎょっとした。 「…チビ助?どこだ!?」 思わず大声が出た。 タナトスの声で眼が醒めたのか、ヒュプノスとハーデス、ヘカーテも起き上がり、もぬけの殻になっている寝床を見て顔色を変えた。 まさか、八雲紫が? 皆の頭にそんな考えがよぎった時。 うえぇ…ん… 押し殺した子供の泣き声がした。 「……………」 子供の声は、部屋の片隅に置かれたハーデスの執務机の裏から聞こえたようだ。 神々は豪華な玉座の後ろをそっと覗きこんだ。 「うえぇぇん…ひくっ…」 …『子供の』タナトスが膝を抱えて泣いていた。姿だけでなく髪の色もこの世界に来た直後と同じ銀色に戻っている。その隣では、同じく子供の姿のヒュプノ スが膝に顔をうずめるようにしてしょんぼりと俯いていた。 「………………」 目の前の光景に理解が追い付かず、神々は目を丸くしたまま顔を見合わせ、しばらくの沈黙を挟んで、タナトスは遠慮がちに尋ねた。 「お前達…その…縮んで、いないか?」 「うえぇぇ…ん… ひくっ、今朝…目が覚めたら、子供に戻っていたのだぁ…」 タナトスの言葉に、小さなタナトスはボロボロ涙をこぼしながら答えた。 「え…………」 「では、お前達が大人に戻れたのは一時的なものだったのか…」 「我々の小宇宙を少々分けた程度で神の肉体を大人のまま維持するのは無理があったのだろう」 「まぁ普通に考えればそうだろうな…」 「うえぇ…ええん…えぐ…ぐすっ」 タナトスは手近にあったハンカチで小さな死神の涙を拭いてやりながら些か乱暴な手つきで頭を撫でた。 「要するに元に戻っただけであろう。お前も男ならその程度の事でメソメソするな!」 「…でも、でも…ひっく」 「弟が泣いていないのに兄がいつまでも泣いているなど情けないぞ、チビ助」 「えぐ…」 「そんな厳しい事を言ってやるな、タナトス。泣きたい時は泣かせてやれ」 「ヘカーテ様…」 死の神を制した美貌の女神は、穏やかな笑みを浮かべて優しく小さな双子神を腕の中に抱きしめた。 「お前達は子供に戻ったことを嘆いているんじゃないだろう?大人に戻ってハーデスの役に立てると思っていたのに、それが出来なくなったことが悔しくて悲し くてやるせないんだよな」 「…………」 「ふぇ…ん…」 抱きしめられたヒュプノスは泣きたいのを堪えるような顔できゅっと唇を噛み、タナトスは小さな手で溢れてくる涙をぬぐった。 ヘカーテはふたりを慈しむようにそっと頬に口付けてヒュプノス少年に声をかけた。 「心におさまりきらない気持ちがあるなら抑え込まずともいいんだぞ、ヒュプノス。私が受け止めてやるから、泣くなり暴れるなり好きにするが良い」 「……………」 ヒュプノスは無言のまま目を伏せて、抱きしめられるままにヘカーテの肩に額をうずめた。 ハーデス様に会いたい…涙を堪えるような微かな声で呟いた金色の男の子を、氷の女神は暖かく抱きしめた。 大人の双子神も黙ってその姿を見守っていると、ハーデスが彼らの隣に腰を落として静かに口を開いた。 「タナトス、ヒュプノス。そなたらの世界では、余はそなたらの父と言う立場だと言っていたな」 「「…はい」」 「余は子供がいない故にこれは想像だが、我が子の成長を見守るのも親の幸せではないだろうか」 ハーデスの言葉にタナトス少年は泣きやんで目をぱちぱちし、ヒュプノス少年はヘカーテの肩にうずめていた顔を上げてハーデスを見た。 冥王は優しい笑みを浮かべて話を続けた。 「そなたらが地上で暮らすのなら、余も地上の流儀に合わせた親としての行動をとらねばならぬ。小学校に入る時はランドセルと学習机を用意し、授業参観に行 き、家庭訪問を受け、運動会に参加し、中学に入れば制服を誂え、三年生になれば高校受験を控え、三者面談をして、進路を相談し、高校に入れば文化祭、次は 大学…楽 しい思い出を作れそうなイベントが目白押しだ。地上流の親子のイベントを経験するチャンスは一度しかないのだぞ?ならば、面白いイベントを満喫してから大 人になるのも悪くないのではないか?」 「「…………」」 「大急ぎで大きくなるだけが親孝行ではないと、余は思うぞ」 「「…………」」 瞬きも忘れたように真剣にハーデスの言葉を聞いていた小さな双子神は、それもそうか…と顔を見合わせて頷いた。 「そう言えばハーデス様もペルセフォネー様も星華姉ちゃんも、入学の準備が…とか楽しそうに話をしていたな」 「うむ。こちらの世界のハーデス様のおっしゃったことも尤もだ。地上の人間の価値を見極める数百年から考えれば、我々が大人になるまでの数十年など微々た るもの。楽しい思い出を犠牲にしてまでショートカットする必要は確かに無いかもしれぬ」 「ああ、それからな。ケーキやドーナツや玩具を大人に買ってもらえるのも子供の特権だぞ。せっかくの特権を急いで手放す必要もないであろう?」 「「!!」」 にっこり笑ってハーデスが言った言葉に(昨日はケーキもドーナツも大人に買ってもらった)小さな双子神が『ハッ!Σ(・△・;)』と言う顔になった。 子供に戻ってしまったショックがだいぶ薄らいだのを見て、ヘカーテは双子神の頭をくしゃっと撫でた。 「よーし!子供に戻ったお前達の為に、今日の朝食は私がホットケーキとクレープを作ってやろう。自慢じゃないが、そこらのミックスで作る物とは一味違う ぞ!」 「え?」 「ヘカーテ様が?」 「ああ…ヘカーテ様もお菓子を作るのがお上手でな。特にホットケーキはふかふかのふわふわ、バターとシロップをたっぷりかけて食べた時の美味さと言った ら…」 「クレープもしっとりもちもちとして、果物やクリームを乗せてもハムエッグを乗せても美味で、何枚でも食べてしまえるぞ」 「バターとシロップたっぷりの、ふかふかふわふわのホットケーキ…」 「果物とクリームの乗ったクレープ…」 双子神の話に小さな双子神が涎を垂らしそうな顔で眼をキラキラさせた。ふたりの関心がすっかり朝食に移ったのを見て、タナトスはにやりと笑った。 「大食いのお前達の腹を満たせるほどホットケーキとクレープを作るには、ニンフに手伝わせてもそれなりに時間がかかろう。その間にお前達は俺の神殿に行っ て着替えてくるが良い。お前達が着ていた服ももう乾いているだろうしな」 「分かった!」 「………」 タナトス少年は元気よく返事して、ヒュプノスは無言でこくりと頷いた。 ぶかぶかの寝間着を着た小さな双子神がウキウキと歩きだそうとした瞬間、ふたりは同時に寝間着の裾を踏み、同時に前のめりに転んだ。 ずべっ…ごち!! どうせ転ぶなら敷布のある場所で転べばいいのに運悪く床で転び、何だか聞き覚えのある音がして。 「「あべしっ!!」」 どこかの世紀末世界で暴れまわるゴロツキが、胸に七つの傷を持つ男に倒された時のような悲鳴(?)を上げた。 きゅう〜〜〜………… 床にスッ転んだふたりは、突っ伏した姿勢のまま小さな手を握ってプルプル震わせた。 大人の神々は何とも複雑な顔を見合わせ、ふたりの傍らに屈みこんだ。 「おい…ふたりとも、大丈夫か?」 「何だか聞き覚えのあるニブイ音がしたが…」 「怪我はしていないか?」 「額をぶつけたようだな。秋乃様に貰ったキョンシーの絆創膏があるが、貼るか?」 「「……………」」 小さな双子神は無言のまま起き上がり、涙目になりながら真っ赤になった額を小さな手で押さえた。 必死に痛みを堪えて泣くのを我慢しているふたりの姿にタナトスとヒュプノスは優しく笑って、タナトスはタナトス少年を抱き上げ、ヒュプノスはヒュプノス 少年をおんぶして立ちあがった。 「よーし、今度は泣かなかったな。それでこそ男だ」 「ではハーデス様、ヘカーテ様。私達はこの子達の着替えを済ませてからヘカーテ様の応援に行くとします」 「分かった。じゃあハーデス、この神殿の厨房を借りるが構わんな?」 「ああ、好きに使ってくれ。余はいつもの部屋で待っておるぞ」 …タナトス神殿で服を着替え、大人の双子神は朝食を作るヘカーテの手伝いに行き、子供の双子神がハーデスと一緒に飲み物や食器を出しながら朝食を待つこ としばし。 ばーん!! 勢いよく部屋の扉が開いてヘカーテが姿を見せた。 「待たせたな!私が腕によりをかけて作った朝食を持って来たぞ!」 「「………」」 小さな双子神は、トナカイになっているヘカーテを見て眼をぱちぱちさせた。 ニンフ達が押して来たワゴンからホットケーキやクレープや果物をテーブルに運びながら、タナトスがしれっとした顔で口を開いた。 「ヘカーテ様が変に張りきってはしゃいでな。またトナカイに変身してしまったのだ」 「ええっ!」 「……………」 「大丈夫、すぐ元に戻るさ」 タナトス少年は心配そうにしながらもトナカイヘカーテの姿にぱぁっと顔を輝かせ、ヒュプノス少年は彼女の行動が落ち込んでいる自分達を励ますためと気付 いているのか何も突っ込まず口を噤んでいた。トナカイのヘカーテは背中の羽をパタパタさせながらワゴンに乗っていたホットケーキをふたりの席に置いた。 待ちきれないようにナイフとフォークを握ったふたりの前で、ヘカーテはミトンの手で難儀そうにバターをホットケーキに乗せ、シロップをたっぷりとかけ た。 「さぁふたりとも、私の特製ホットケーキ、味わってみてくれ!」 「「いただきます!!」」 ふわふわふかふかのホットケーキを切り分けた途端にバターが染み込んだ生地とシロップの甘い香りがふわりと鼻をくすぐり、双子神とヘカーテが席に着くの も待ち切れずふたりはホットケーキを一切れ口に入れた。 「「〜〜〜〜〜〜っ!!」」 小さな双子神は口いっぱいにホットケーキを頬張ったままその美味しさに目を潤ませ、『美味しい』と言うのも忘れたように二切れ目も口に運んだ。 たちまちひと皿平らげてお代りのケーキにバターとシロップを塗り始めたふたりの姿に、トナカイのヘカーテは椅子の上でふんぞり返った。バッテンの目と赤 い鼻の着ぐるみが物凄いドヤ顔をしているように見える。 「どうだ?言うだけの事はあるだろう?」 「「……………」」 ホットケーキをもぐもぐしながらしきりにうなずく双子神の姿に微笑みながら、ハーデスと大人の双子神も自分の分のホットケーキにナイフを入れた。 …やはりヘカーテ様のホットケーキは一味違う、クレープも玄人裸足だ…と男神達が最高の朝食を満喫していると。 ぐうぅぅぅぅ〜〜… この場には似つかわしくない腹の音が聞こえて、皆は思わず食事の手を止めて音がした方を見た。 …トナカイの着ぐるみを着たヘカーテが、ミトンの手でナイフとフォークを持って、冷めかけたホットケーキを切なげにじーっと見ていた。 「……………」 そう言えば彼女は、着ぐるみを着たままでは飲食が出来ないのだった。 しかしこの方はそれを考えてなかったのだろうか?…考えていなかったのだろうな、落ち込んだ子供達を励ますことで頭がいっぱいだったのだろう。 そんな事を考えながら、タナトス少年以外の皆が目顔で『どうする?』と相談していると、(ヘカーテのトナカイ姿は『薬の副作用で起きる発作による変身』 という嘘を唯一信じている)タナトスが心配そうに尋ねた。 「どうしたんですかヘカーテ様?ひょっとして、トナカイに変身している時は食事が出来ないのですか?」 「あ…うん、実はそうなんだ」 「ああ…すっかり忘れていたが、薬の副作用で、トナカイに変身したヘカーテ様は口を満足に開ける事が出来ないのだ。会話に支障はないのだがな、食事はでき ないのだった」 「えー…ヘカーテ、まだ変身は解けそうにないか?精神的にはだいぶ落ち着いたように見えるが」 「んー…」 適当に話を合わせたタナトスとハーデスの言葉にヘカーテはぴょこんと首を傾げて、隣に座ったタナトス少年を見た。 「何だか、タナトスがキスしてくれたら元に戻れそうな気がしてきたぞ」 「…どこかで聞いたことのある話だな」 「分かりました、それならお安いご用です!」 口の周りにシロップとバターとクリームとホットケーキの食べカスを付けたタナトス少年がにっこり笑って身を乗り出すと、タナトスが肩を掴んで引き戻し た。 「ちょっと待て、チビ助!その状態でキスしては着ぐるみが汚れ…あ、いや、女性にキスするのだから口の回りくらい綺麗にしろ!」 「ああ、それもそうだな」 タナトスに口の周りを綺麗に拭いてもらったタナトス少年は、改めてトナカイに身を乗り出して着ぐるみの口にキスをした。 ちゅっ。 「はっふ〜ん☆…あっ、何だか戻れそうな気がして来たぞ!!」 何だか嬉しそうな吐息交じりの歓声を上げて、トナカイヘカーテはぴょんと椅子から飛び降りると部屋を飛び出して行った。 …『元の姿』に戻ったヘカーテが食卓に戻り、改めて食事を再開した皆は本日の予定について相談を始めた。 「いつ八雲紫が現れるか分からぬ故、日が暮れる頃までは地上で過ごした方がいいだろうな」 「ベルセフォネーから何か連絡はあったか?八雲紫らしい奴が接触して来たとか」 「服を着替えに神殿に戻った時に携帯を確認しましたが、その時は着信もメールも有りませんでした」 「ふむ…では、何かあったらすぐ戻れる場所をぶらぶらする程度しか出来ぬか…」 「そうですね。…お前達、どこか行ってみたい場所はあるか?」 「秋乃の店とミスド!」 「あのな、チビ助…朝から晩まで店に入り浸るつもりか?」 「では、昨日アンドロメダが提案していた東急ハンズはどうであろう。エルミタージュ洋菓子店からそれなりに近いし、色々と面白いものがあるから飽きないの ではないか?」 「少し電車に乗れば、動物園や美術館もあるが」 「俺は動物園に行きたいぞ!」「私は美術館に行きたい」 小さなタナトスとヒュプノスは同時に言って、顔を見合わせて一瞬黙り、ムッとした顔で口を開いた。 「美術館など辛気臭いだけで退屈ではないか。絵画や彫刻が並んでいるだけの場所に行って何が面白いのだ?」 「動物園など臭くてやかましいだけではないか。動物が歩いたり寝ているだけの場所に行って何が楽しいのだ?」 「美術館などつまらん!俺は動物園に行きたい!」 「動物園などつまらん!私は美術館に行きたい!」 同じ言葉で自分の意見を主張する小さな双子神を穏やかな眼で見遣って、ハーデスはニコニコしながら言った。 「ならばそれぞれ好きな方に行けばよいではないか」 「「え?」」 何が何でも朝から晩まで皆で固まって行動せねばならぬ!と言う事もあるまい。別行動をとっていた方が、その八雲紫とやらも出てきやすくなるやもしれぬぞ」 「ふむ…美術館と動物園の最寄り駅は同じ駅だし、場所もそう離れてはいない故、何かあってもすぐ合流できる。ならばハーデス様のおっしゃる通り別行動も悪 くないかもしれんな。…お前達、どうする?別行動をとってみるか?」 「「うーん…」」 ハーデスとタナトスの提案に小さな双子神が不安半分思案半分の顔で考え込むと、ヒュプノスが折衷案を出した。 「ならば、試しにハンズの中で別行動をとってみるか?それで特に支障が無ければそのまま別行動、支障があれば動物園と美術館の両方に皆で行けば良い」 「おおっ!」 「なるほど…」 「よし、ではそれで決まりだな。食事が済んだら出かけるとしよう」 「うむ。では…」 タナトス少年はホットケーキの最後の一切れで皿に残っていたシロップを綺麗に拭って口に運んで。 「ホットケーキ、おかわり!」 輝く笑顔で皿を差し出した。 …大満足の朝食を終えて、地上に向かうために諸々の準備を整え、では行くか…と、充電しておいた携帯を取ったタナトスが目を瞬いた。 『着信 一件』 履歴を確認すると、着信があったのは丁度朝食を取っていた頃で、電話をかけて来たのは龍神秋乃だった。留守電にメッセージが無いところを見ると緊急の用 事ではなかったようだが…。 携帯の画面を見て思案顔になった兄神を見てヒュプノスが怪訝そうな顔になった。 「何かあったのか?」 「秋乃様から着信があった。一回だけだし留守電にメッセージもないから緊急の用事ではないと思うが…」 「地上に行ったらまず秋乃に会うのだろう?ならば直接その時に話を聞けばいいではないか」 「いや、何の用か出発前に確認した方が良いと思うぞ。地上に行って話を聞いてから、何かを取りにここに戻ろうと思ったら面倒だし時間の無駄だ」 「そうだな、とりあえず電話だけはしてみよう。繋がらなかったら直接話を聞きに行けば良い」 ヒュプノス少年の言葉に頷いて、タナトスは秋乃に電話をかけ直した。 …数回のコールで相手が出た。 『はい、秋乃です』 「タナトスです。申し訳ありません、ついさっき着信に気がつきまして…今から地上に向かおうと思っていたのですが、何かありましたか?」 『今朝お店に出勤したら、八雲紫と署名の入った手紙が店長室に置いてあったんです。急いで返事をする必要は無い内容だったんですけど、早めにお知らせして お いた方が良いかなと思って』 「…エルミタージュ洋菓子店の店長室の中に、手紙が?」 『はい。私とオーナーしか鍵を持っていない、厳重にセキュリティロックされた店長室の中に…です。勿論と言うべきかしら、セキュリティシステムが作動した 形跡はありませんでした』 「ふむ…ならばその手紙の主は八雲紫で間違いないでしょう。分かりました、地上に行ったらまず秋乃様のお店に伺うつもりでしたので、その時に拝見します」 『分かりました、お待ちしていますね』 「はい、では」 電話を切ったタナトスは弟神と異世界の双子神を見遣った。 通話の内容は聞こえていたのか、三人とも真面目な顔で口を開いた。 「やはり八雲紫は秋乃様に接触して来たか」 「鍵のかかった部屋の中に手紙を置くなど、あいつにしか出来ない芸当だろうな」 「しかしなぜ置き手紙なのだ?直接秋乃に会って話をして、俺達の到着を待てば良いだろうに」 「俺達に直接会った途端に捕まることを警戒したのだろう。まずは手紙でこちらの出方を見ようと言う事ではないか?」 「とにかく『急いで返事をする必要はない手紙』とやらを見なければ手の打ちようもないな」 ヒュプノスの言葉に頷いたタナトスは懐に携帯を戻して、異世界の双子神を見遣った。 「では今度こそ出発するが、忘れ物は無いな?」 「うむ。財布もハンカチもティッシュもフィギュアも、ここでは使えないようだがPHSも、全部確認して鞄に入れたぞ」 「私も持ち物はきちんと確認したから大丈夫だ。そう言うお前は忘れ物は無いか?」 「携帯と財布とカードは持ったが、生意気を言うガキは忘れて行くかも知れぬなぁ。…さて、いい加減そろそろ出発するぞ、チビ助。はぐれないように俺とヒュ プノス両方と手を繋いでおくのだぞ」 タナトスはわざとらしくヒュプノスに目くばせして、大人の双子神はタナトス少年『だけ』と手を繋いで涼しい顔で部屋を出ようとした。 「ちょ…」 ヒュプノス少年が慌てて皆に駆け寄ると、タナトスはフフンと悪戯っぽく笑い、タナトス少年はぷっと吹き出し、ヒュプノスは優しく笑いながらヒュプノス少 年の頭 を撫でて自分とタナトス少年の間にヒュプノス少年を入れた。 ヒュプノス少年はほっと安堵したのを隠すように唇を尖らせて、兄とヒュプノス両方と手を繋いだ。 …双子神達は四人で手を繋いで、地上に向かって飛び立った。 |
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コラボSSの話が固まりかけていた頃だったと思います。蝶様と『当サイト双子神から小宇宙を貰った蝶様双子神は大人に戻れるか戻れないか?』を打ち合わせ
している時、『大人に戻れるのも、戻れなくてしょんぼりも、どちらも捨てがたくて選べない!』ということで、『大人に戻れるけど一晩経ったら子供に逆戻り
していてしょんぼり』という結論で落ち着きました。そんなわけで(突発ネタ系番外編をお読みの方には予想がついていたと思いますが)蝶様双子神はまたち
みっ子になりました。 寝室に何で執務机があるの?と思われそうですが、神々が寝ていた部屋は本来寝室ではなく使ってない執務室か何かに布団を敷いて使ったんだと思います。当 初は、蝶様タナ様が子供に戻ってしまったショックでワンワン泣いている展開にしていたのですが、流石にそこまで当サイトの神々に心は開いていないだろうと 言う事でこうなりました。蝶様双子神は辛いことや片割れにも言えない悩みがあるとハーデスの椅子の後ろに座りこむそうです。ナニソレ可愛い。 そして19話でチラッと触れましたが、ヘカーテが男神達と同じ部屋で雑魚寝させた理由が、『子供に戻った蝶様双子神を抱きしめて慰めるシーンの為』で す。こう言う時はタナトスの粗っぽい励ましやヒュプの理路整然とした励ましよりも、女性が優しく抱きしめてくれた方が子供は心が落ち着くんじゃないかな… と思いまして。そして美味しいところはハーデス様に持って行って頂きました(笑)。蝶様に、「蝶様ヒュプが『ハーデス様に会いたい』と呟くシーンを入れて 欲しい」とリクを頂きましてそのシーンも入れたのですが、当初の二泊三日の予定を切り上げて元の世界に返してあげたいとか思ってしまいましたよ(・ω・) 蝶様ヒュプの可愛さは異常。 んで、「蝶様双子神は一応7歳のはずなのにまだ学校行ってないの?」と脳内でセルフツッコミがあったのですが…蝶様タナ様は人間恐怖症克服中なことと、 彼らの環境が特殊すぎることで、小学校入学もこれからかな、と考えています。蝶様にお話を伺ったところ、学校入学はコラボの後の時間軸になるそうです。中 学・高校の三者面談には父としてハーデス様が出 てくるらしいです(笑)。ランドセル背負った蝶様双子神とかめっさ萌えます。当サイトヘカーテがその現場に居合わせたら、ヨダレを垂らしながら写真を撮り まくりそうです(笑)。 そして、子供の姿に戻ったせいで寝間着がぶかぶかで、裾を踏んで盛大にスッ転ぶ双子神のネタは当初からありました。最初は転ぶのは蝶様タナ様だけで、蝶 様ヒュプが「なんだかデジャヴを感じるぞ…」と言う流れを考えていたのですが、打ち合わせの結果ヒュプも一緒に転ぶことになりました(笑)。「あべ しっ!」という悲鳴は本家蝶様のパクリです(・ω・) そして再度トナカイ化(笑)するヘカーテもかなり当初からの予定通りです。彼女の作るホットケーキとクレープは、プロのパティシエである龍神秋乃(ベル セフォネー)よりも不思議と美味しいと言う裏設定もあったり。んで、「王子様にキスされると魔法が解ける」はベッタベタのありがちネタですね(笑)。通常 状態ヘカーテにキスするのは出来ないけど、着ぐるみ(トナカイ)だったら気にしない、と蝶様に伺ったのでこんな展開に。 あとは…「美術館と動物園が近くにある駅」は上野駅かな、と思っています。上野動物園と上野の森美術館が割と近くにあったような、なかったような (笑)。まぁフィクションなのでキニシナーイ。 そして挿絵!今回は蝶様ヒュプの可愛らしさにメロメロでした!タナタナコンビの可愛さもヘカーテ様の乙女っぷりも当サイトヒュプの優しい顔も素敵なんで すが、今回は蝶様ヒュプのべそ顔とむくれ顔にKOされました。可愛すぎる…。 次の22話は、一行がエルミタージュ洋菓子店に寄ってからハンズでぶらぶらする話です。 |