| 他愛もない話をしつつ、ヒュプノス(大)におんぶされた弟をタナトス(子)がちょっと羨ましそうに横目で見つつ、八雲紫が接触してくることもなく、一行は無事にエルミタージュ洋菓子店に戻ってきた。 タナトス(子)はほっと安堵の息をついて眠りの神(大)の背中におぶさった弟に声をかけた。 「ヒュプノス、秋乃の店に着いたぞ」 …返事がない。 ヒュプノス(大)におぶられている弟を見遣ったタナトス(子)が小首を傾げ、タナトス(大)がひょいと小さな眠りの神の顔を覗き込んだ。 「…寝ている様だぞ」 「え、マジ?」 「あれっ、本当だ」 「じゃあバックヤードの休憩室に行きましょうか。あそこなら横になれるし…。私は毛布を用意してきますから、皆さん先に行ってて下さい」 秋乃の言葉に、勝手知ったる双子神(大)が頷いて店のバックヤードに入って行った。遠慮がちに星矢達も後に続く。 エルミタージュ洋菓子店の休憩室は、店構えとは対照的に畳敷きでちゃぶ台が置かれている。タナトス(大)もヒュプノス(大)も慣れた仕草で靴を脱いで畳 に上がり、眠っているヒュプノス(子)を起こさないように靴を脱がせると、座布団を並べて布団を仮ごしらえするとそっと寝かせた。 何だ、どうのこうの言ってふたりとも優しいじゃん。 双子神(大)の行動に星矢が口元を綻ばせると、ワゴンに急須と湯のみと和菓子と毛布を乗せて秋乃がやってきた。 …穏やかな寝息を立てているヒュプノス(子)に毛布をかけると、冥妃の転生体は優しい笑みを浮かべてそっと金色の髪を梳いた。 「こんな言い方は変かもしれないけど、ちょっと、嬉しいかも」 「何がだ、秋乃?」 「こうやって髪に触っても目を覚まさないって事が、です。それってつまり、ヒュプノスさんが私達を信用してくれたってことでしょう?」 「確かになー。ミニタナトスサマは割とすぐ俺らに心を開いてくれた感じだけど、ミニヒュプノスサマは…何つーの?用心深いって言うか警戒心を解いてないって言うかそんな感じだったもんなー」 「いきなり知らない人に誘拐されて変な場所に来ちゃったんだもん、迂闊に他人を信じるのは危ないって思っても仕方ないよ」 「しかも本来なら頼りになるべき兄がこれではな…。タナトスらしいと言えば実にらしいが」 「「どういう意味だ」」 「…さて、そろそろ茶を淹れぬと濃くなりすぎてしまうな」 ふたりのタナトスから睨まれたヒュプノス(大)がわざとらしく視線を逸らして湯呑に緑茶を注ぐと、秋乃がテレビの下からPS2とPS3とWiiを出して来た。 「ヒュプノスさんが寝てるからあんまり大きな音は出せませんけど、どれで遊びます?ぷよぷよ、マリオカート、みんなのゴルフ、Wiiスポーツ、格闘ゲームもありますよ」 「へぇ、バラエティ豊富に揃ってますね」 「何だこの黒いゲーム機は?んん…?これがプレイステーションなのかっ?!」 「これはプレイステーションの次世代機PS2だな。で、こっちが更にその次のPS3だ。こっちはゲームキューブの後続…って言うのかな、Wiiって言うんだぜ」 「そっか、タナトスさんのいた時代はまだプレイステーションが最新なんですね。ひょっとしてセガのドリームキャストもまだかしら?」 「セガと言えばセガサターンだぞ」 「うっわ、懐かしい単語来たなぁ〜。そーいやそんな時代もあったわ」 「じゃあせっかくだからぷよぷよで遊ぼうか。…で、最初は誰が対戦する?」 ゲームをセットした瞬がコントローラーを差し出すと、ふたりのタナトスが同時に手を差し出した。 座布団を布団代わりにして眠っていたヒュプノス(子)は、周囲の騒がしさに覚醒を促されて金色の目をゆっくりと開けた。 …皆が集まっているな… まだぼんやりする頭でそんな事を考えつつ、目をこすりながら座布団に身体を起こすと、弟が目を覚ましたことに気付いたタナトス(大)が傍らにやってきた。 「目が覚めたか、ヒュプノス。少々うるさかったか?」 「ん、いや…。ところでタナトスよ、今は何時だ?」 「今か?ええと、もうすぐ六時になるところだ」 「六時?!」 時間を聞いた途端に眠気が吹き飛んだ。 家を出る時に星華姉ちゃんから『夕飯までには帰るのよ』と言われていたのに、もう六時?? 「門限が!星華姉ちゃんに怒られるっ!………」 ヒュプノス(子)は思わず大声を出して。 驚いている兄神と、その後ろにいる大人の姿をした自分達と、良い大人になった聖闘士達と、冥妃のソックリさんを見て、自分の置かれていた状況を思い出した。 ヒュプノス(子)の言葉にタナトス(子)は笑いを堪えるような困った顔でちょこんと首を傾げ、星矢は面白そうにクスクス笑った。 「そうだな、帰ったら星華姉ちゃんに怒られてしまうな」 「そりゃー大変だなぁ。そういや俺も、しょっちゅう門限破っては星華姉さんに怒られたもんだぜ」 「…………」 「あ、ヒュプノス」 「ヒュプノスさんも起きたことだし一旦ここまでにしましょうか。…ヒュプノスさん」 寝ぼけて叫んでしまった事がよほど恥ずかしかったのか、頭から毛布を被って蝸牛のような姿になったヒュプノス(子)に秋乃が優しく声をかけると、彼はもぞもぞと毛布から顔を覗かせた(本当に蝸牛みたいだ、と星矢は思った)。 「お腹の気持ち悪いのはもう大丈夫ですか?」 「ああ、それは大丈夫だ。…ありがとう」 「それは良かった。…うふふ、急に『門限が!』って言われてびっくりしちゃいましたよ」 「何だか戦隊モノの敵キャラにいそうだな。『時間怪人モンゲンガー』」 「ありそうだなー、それ。無茶苦茶な門限を勝手に押し付けて門限破った人間を捕まえちまうみたいな…」 「なかなか面白いアイデアだな。機会があればアテナに提案してみてはどうだ?案外採用されるかもしれぬぞ」 「へ?戦隊モノの怪人ネタを?沙織さんに?何でまた?」 「ああ…まだ公表はされていないのだが、城戸財閥がどこぞのスタジオと連携して戦隊モノを作るのだそうだ。どんな敵を出すかアイデアを一般公募するらしいぞ」 「へーぇ。…って、何でタナトスサマがそんな情報知ってんだ?」 星矢が何気なく素朴な疑問を口にすると、タナトス(大)は『しまった』と言いたげな顔でハッと口を噤んだ。 …タナトス(大)は城戸財閥のブランドモデルだから、沙織が雑談がてら一般公開されていない情報を伝えても特別おかしなことではない。現時点で外部に漏れて困るなら口外しないよう頼んでおけば済む話だ。 なのに、この妙に過敏な反応…。 何かあるな、と気付いた皆がじーっとタナトス(大)を覗きこむと、彼はぎこちなく視線を逸らした。 「あ、いや、これはまだ一般公開されていない情報でな、アテナからも口止めされていたのだ。故にこれ以上は言えぬ」 「そう言われると余計に気になるのが人の性」 「だよね」 「ですよねー」 「人でなくても気になるぞ」 タナトス(子)だけでなくヒュプノス(子)まで毛布から出て来てじーっと覗きこんできたので、タナトス(大)はますます困った顔で明後日の方を見つつ口にチャックをする真似をしたが。 死神最大のウィークポイントで地雷作成源である秋乃がふと呟いた。 「そう言えば、沙織さんがチラッと言ってましたね…タナトスさんの新しい歌を作ってるとか何とか…」 「新しい歌?」 「ああ、この世界のタナトスサマはCDデビューしてるんだぜ。まだ一曲しか歌ってないけどな、結構人気なんだってさ」 「へぇ…凄いな、この世界の俺はブランドのモデルで歌まで歌っているのか」 「歌はなりゆきで仕方なくだ!二曲目など作られたところで歌うつもりはないからな!」 「それで、二曲目の歌と戦隊モノに何の関係があるのだ?まさかテーマソングを歌う訳ではないだろうし」 「!……………」 ヒュプノス(子)の言葉に明らかにタナトス(大)がギクリとした。 …………… 途端に皆に詰め寄られて、タナトス(大)は頬を赤くしてそっぽを向いたまま乱暴に吐き捨てた。 「だ…打診は受けたが、俺は引き受ける気はないからな!」 「受ける気はないだと?!何て勿体ない事を言うのだ、引き受ければいいではないか!戦隊モノのテーマソングを歌うなんてカッコいいぞ!」 「無責任な事を言うな、チビ助!話がややこしくなる!」 「拒否する拒否すると言いながら押し切られてテーマソングを歌い、なし崩しにドラマ本編にもゲストで参加する訳か…」 「真顔で不吉な予言をするなヒュプノス!」 「タナトスサマは死神だからなぁ、なまじ絵になるだけに有り得ない話じゃねーな」 「部下の怪人がやられるたびにチェス盤で駒を動かして『恐怖と絶望のマスを進むだけの哀れな塵芥…』とか言って不敵に笑ってる敵のボスとか?」 「うわ、似合いそう」 「馬鹿を言え!大体敵のボスでは倒されることが確定ではないか、そんな役どころを引き受けられるか!!」 ガン!! ちゃぶ台を拳で叩いてタナトス(大)が喚いた言葉に皆が一瞬沈黙した。 え、気にするのはそこ?じゃあ味方側のボスだったら出演OKなわけ? 皆が同時に同じ疑問を感じた時、タナトス(子)が真剣この上ない顔でタナトス(大)に声をかけた。 「タナトスは敵のボスが一番似合うと思うぞ?それで、最後はヒーローと和解していい奴になるのだが、一番信頼していた部下に裏切られて、レッドを守って死ぬのだ!」 「え、死ぬのか!?」 小さな手を握り締め、銀の眼を真剣な色に染めて熱っぽく語るタナトス(子)の話を聞いていたタナトス(大)はオチを聞いてぎょっとなった(結構真面目に耳を傾けていたらしい)。 驚いた死神(大)の言葉に、死神(子)は厳かな顔で頷いた。 「そうだ、死ぬのだ」 「………。むう…最後は死ぬのか…」 「戦隊モノの王道展開ではあるけどな。敵の大物が改心するけど腹心の部下に裏切られて…ってーのは」 「王道なのか…」 「…タナトスよ、何を真面目に考えているのだ?そもそもお前は出演はおろかテーマソングを歌うのも拒否するのではなかったのか」 「ん?…あ、ああ、そうだ。俺はテーマソングも歌わんし出演もしない…つもりだ。…だ、だが、アイデアを提供するのはやぶさかではないぞ。俺も戦隊モノは結構好きだからな」 「何か今、タナトス様に盛大な死亡フラグが立った気がするんだけど」 瞬がボソッと呟いた時、対タナトス最大最終最強兵器の秋乃がわざとらしく考える振りをしながら小さな死神に話しかけた。 「ねぇ、タナトス先生。『改心した途端に部下に裏切られてヒーローを庇って死んだと思われた大物が奇跡的に一命を取り留めた』って言うのも王道展開じゃないかと思うんですけど、どう思いますか?」 「おおっ!確かにそれも王道だな!」 「敵組織のラスボスだった死神が改心した途端に以下略で奇跡的に一命を取り留めたけど、神の力は無くなって人間になってしまった。でも敵組織にいた時の知 識と経験を生かしてヒーロー達の良きアドバイザーになるって言うのはいかがでしょうか?それで、新しい敵のボスが『裏切り者』を抹殺しようとした時に色々 奇跡が起きて神様の力を取り戻すの。でも、人間になった後に始めたモデルの仕事が忙しいから普段は戦闘に参加する事はなくて電話とかでアドバイスするだけ なんだけど、ヒーロー達が絶体絶命のピンチになった時に『すまない、撮影の仕事が長引いた』って助けに来るなんてどうかしら?」 「おおおおおおっ!!」 楽しそうに秋乃が語った話の内容にタナトス(子)は小さな手をぎゅっと握りしめて顔を輝かせた。彼女の提案したストーリーはベッタベタのお約束だが、お約束だからこそ燃える展開でもあった。 目をキラキラさせてがぶり寄るタナトス(子)に秋乃は更に続けた。 「でね、その『元・敵のラスボス』は敵組織の事は知り尽くしてるから、ヒーローが苦戦した怪人もちょちょいのちょいでやっつけちゃうの。で、怪人を跡形も なく消し去って『久しぶりすぎて力の加減が分からなかった、少々やりすぎてしまったな。じゃあ次の仕事があるから俺はこの辺で』って爽やかに笑って去って 行くの。どう?」 「おおおおおおおおーーーーーーーーっ!!!ものすごくカッコいいではないか!タナトス、その戦隊モノに敵のラスボス役で出演しろ!そして今言った展開通 りに活躍するのだ!そうしたら俺は、毎週その戦隊モノを見て、ショーも見に行って、DVDもフィギュアも買ってやるぞっ!」 「う…ん………」 勢い込んでまくしたてるタナトス(子)の言葉に、『テーマソングを歌う事も拒否する』はずのタナトス(大)は眉間に皺を寄せて考え込んだ。 具体的な展開を熱く語られて心が揺れたのだろう。 真剣に迷っているらしいタナトス(大)の姿を見て、皆は同じことを思った。 …間違いなく沙織さんの口車に乗せられてテーマソング歌った挙句にラスボス役でその戦隊モノに出演するぞ、コイツ。 腕を組んで黙り込むタナトス(大)に、秋乃がしれっとした顔で言った。 「タナトスさん。テーマソング云々は別にして、こちらのタナトスさんが提案したストーリー展開は普通に面白そうだから沙織さんに提案してみたらどうですか?」 「俺が、ですか?」 「何事も話題性は大事です。『城戸財閥モデルの死の神タナトスがストーリーに関してアイデアを出した』となれば、それだけで話題になって注目が集まって視 聴率も上がります。メインターゲット層以外の人も『あのタナトスが脚本に参加してるなら見てみようかな』って見てくれるかもしれないし」 「ふむ…では逆に言えば、タナトスがモデルをしているブランドアクセサリーに興味が無い人間でもタナトスに興味を持つきっかけになるかもしれぬと…」 「そうですね、タナトスさんを知ってファンになる入口にはなるでしょうね。そうしたらタナトスさんの信仰集めに一役買うんじゃないかしら」 「!」 信仰、という言葉にタナトス(大)が反応した。 さすが冥妃の転生体秋乃さん、タナトスサマの動かし方を心得てるぜ。 皆が内心で感心する中、秋乃はとどめの一言を穏やかな笑みとともにタナトス(大)に告げた。 「流石に脚本への参加だけじゃ、テーマソングを歌って出演するほどの効果はないかもしれませんけど」 「……………」 「何だタナトス、お前は自分のファンを増やしたいのか?」 「ファンというか…増やしたいのは人間達の俺への信仰心なのだが…まぁファンを増やしたいと解釈して良かろう」 「ならテーマソングを歌うべきだ!そしてシリーズの途中でゴレンジャーの味方になる敵の大物役で出演すべきだ!そうしたら絶対にファンは増える!!」 「そうなのか?」 タナトス(子)が手をぎゅっと握って力説した言葉に、良い大人の神様であるタナトス(大)がかなり本気で食いついた。 幼い死神は真剣この上ない顔で、そうだ!と頷いた。 「戦隊モノのテーマソングを歌う奴は問答無用でカッコいい!そしていずれ味方になる敵のボスも文句なしにカッコいい!戦隊モノが好きな奴なら絶対にそいつを好きになる、間違いない!そして男は戦隊モノが好きだ、これも間違いない!!」 「そ…そうなの、か?」 「うんうん、そのちみっこいタナトス様の言う通りだぜ。オープニングを歌う歌手は注目されるし、敵のボスから味方に寝返った奴は主人公以上にカッコいいと 相場が決まってるからな。タナトスサマなら文句なしにドンピシャだぜ。まずオープニングを歌ってメインターゲットの男の子のハートを鷲掴み。悪役イケメン だから男の子のお母さんやお姉さんのハートも鷲掴み。シリーズ途中で味方にポジション変えして優秀な参謀役かつ主人公のピンチに颯爽と現れるカッコよさで 男の子とそのお父さんやお兄さんのハートも鷲掴み。味方に寝返った後は『モデル』って設定をフル活用して洒落た格好で画面に映ればオシャレに敏感な若者の 心も鷲掴み。ついでにDVDやCDを孫に買ってあげるおじいちゃんおばあちゃんも芋蔓式に鷲掴み。戦隊モノが好きな男の子の家族全員分の信仰を頂けるって 寸法だな。とりあえず俺は、タナトスサマが出演する戦隊モノなら見るぜ。面白そうだしな」 立て板に水の滑らかさで星矢が演説すると、かなり心が揺れているらしいタナトス(大)が『戦隊モノのメインターゲット層の男の子』に該当する双子神(子)に真剣な眼を向けた。 「…本当にお前の周りの男共は戦隊モノが好きで、味方に寝返る敵のボスが好きなのか?」 「私はあんな子供っぽいものは好きではない」 「俺は好きだぞ!ヒュプノスはこう言ってるが、星矢やマニゴルドも俺に付き合って見るうちに好きになったぞ!…ちょっと待て」 「マニゴルド??」 ヒュプノス(子)以外の全員が『マニゴルドって誰?』という反応をするのはお構いなしに、タナトス(子)は鞄を開けると戦隊モノらしいフィギュアを取り出した。何だか、主人公というより敵役かダークヒーローのような姿形をしている。 ほらほら!とタナトス(子)が得意気に悪役顔のフィギュアを皆に見せると、星矢が不思議そうに首を傾げた。 「これが何なんだ?何か、主人公っつーより敵のボスみたいな顔したフィギュアだけど」 「当たり前だ、これは俺が大好きな戦隊モノの敵のボスのフィギュアなのだからな。超がつくレアものなのだぞ。抽選に当たらないと見られない特別なショーを見に行って、そのイベントのジャンケン大会で勝ち残った五人だけが貰えた特別品だ!!」 「特別なショーの特別な賞品になるって事は、こいつは敵ボスだけど人気者なのか」 「確かにイケメンですね」 「で、お前はアテナに頼んで裏ルートからこのレア物を入手したと言う訳か」 差し出されたフィギュアをしげしげと眺めたタナトス(大)がニヤリと笑って冗談半分に言うと、タナトス(子)はあからさまにムッとなった。 「違うわ!そんな、コネを使うようなズルなどしていないぞ!」 「へー。じゃあ律儀にイベントに応募して抽選に当たってじゃんけん大会で勝ち抜いて自力でゲットしたって訳か。なかなかやるじゃねーか、タナトスサマ」 「え…あ…いや、その…」 星矢の言葉にタナトス(子)は気まずそうに口ごもってボソッと呟いた。 「イベント参加のチケットを当てたのもジャンケン大会で勝ち抜いたのもマニゴルドで、俺はそれを貰っただけなのだが…」 「ほう…ではこれは人間からの貢物か。お前の好みを把握した上で入手困難なレア物を献上する人間がいるとは…チビ助の癖になかなかやるではないか」 「あのう…ちょっと基本的なこと聞きますけど、マニゴルドさんって誰ですか?少なくとも僕は初めて聞く名前なんですけど」 「あ、それは俺も気になってた。何か『当然知ってるだろ』的な雰囲気でミニタナトスサマが話すから俺が忘れてるだけかなって思ってたんだけど、瞬も知らないのか」 「そのカニゴルドさんって、星矢さんのお友達とかですか?」 「『カニ』ゴルドではなく『マニ』ゴルドだ、秋乃。…まぁ星矢の友人と言えば友人だな」 「カニゴルドで十分だ、あんな無礼な奴!」 どこか不機嫌そうな顔でフィギュアに関するやりとりを聞いていたヒュプノス(子)があからさまな嫌悪の表情で吐き捨てた。 どうやらこの眠り神様(子)は、『タナトスの好みを把握した上で入手困難なレア物フィギュアを献上した人間・マニゴルド氏』に好印象はお持ちでないらしい。その理由を薄々察しつつ、ヒュプノス(大)は慎重に口を開いた。 「タナトスを崇拝して貢物をするような奇矯な人間は珍しい故、そんな奴がいたなら私も記憶していると思うのだが生憎と心当たりがないな。ただ、その名はどこかで聞いたことがあるような気はするのだが…」 「お前もかヒュプノス。俺も何となく聞き覚えのある名前だなと思ったのだが…」 「そのカニゴルドさんだけどさ、そっちの世界の俺の友達って言ってたよな。ひょっとして聖闘士なのか?」 「ああ。奴は蟹座の黄金聖闘士だ」 「へ?蟹座の黄金聖闘士?蟹座の黄金はデスマスクじゃないのか?」 「代替わりしたってことかな?あ、でもこの子達のいた世界は聖戦が終わって七年しかたってないんだっけ」 「聖戦の七年後ならまだデスマスクが蟹座の黄金だったはずだが…しかしそれはこちらの世界の話だからな。そちらの世界の蟹座はそのマニゴルドという奴なのかもしれん」 一輝の言葉に皆がなるほどと納得しかけた時、タナトス(子)がいやいやと片手を振った。 「今の蟹座の黄金はデスマスクで合ってるぞ。マニゴルドは先代というか…前聖戦の蟹座の黄金聖闘士だ。タナトスもヒュプノスも覚えていないのか?教皇と一緒に俺を聖櫃に封印した奴だぞ」 「………ん?」 タナトス(子)の言葉に思案顔になった双子神(大)はしばし沈黙し、ふたり同時にハッとなって口を開いた。 「無礼にも俺の顔を殴った忌々しくて小癪な教皇の弟子か!」「子供の頃は死であるタナトスに憧れていたと言うあの男か?」 「そう、そいつだ」 「そうか、道理で聞き覚えのある名前のわけだ。………。ん?ちょっと待て、何故あいつがお前達の時代で生きているのだ?あの塵芥は神の道で消滅したはずだが」 「んー…話すと長いのだが、そもそものきっかけは、前聖戦で覚醒したばかりのハーデス様が聖域のアテナと天馬星座に会いに行った時に、俺が…」 「私の兄のタナトスは人間恐怖症なのだ。聖域との和解の成立をきっかけに星矢の家に我々がホームステイすることになったのもタナトスが人間恐怖症を克服す るため。ハーデス様がマニゴルドを蘇らせたのも、奴はタナトスが人間恐怖症を克服するのに役立つと判断されたためだ。…私は、タナトスにあのような無礼を 働いた人間を蘇らせるなど絶対に反対だったのだが、ハーデス様のご決断に異議を唱える事は出来ぬ。あの人間はしつこくタナトスに付き纏ってしきりに機嫌を 取っているが、危害を加えるわけではないから抗議したくても出来ぬのだ」 兄神の言葉を遮って一気に経緯を話したヒュプノス(子)は唇を尖らせて不満気に呟いた。 眠りの神(子)が口にした『あのような無礼』の内容が気になるが、何となく聞くのが怖いなぁ…と皆が複雑に沈黙していると、彼の兄神が銀色の目をくるりと回して思案顔になった。 「確かにあいつは俺に無礼を働こうとしたが、お前とハーデス様のお陰で未遂に終わったし、俺が神罰を下したし、あいつも謝罪したし…お前もそろそろあいつを赦してやっても良いと思うが」 「何を呑気な事を言っているのだタナトス!今の私達は子供だからあいつはおとなしくしているが、元に戻れば遠慮なくお前にちょっかいを出してくるぞ!実際それっぽいことも言っていたではないか!」 「神の力が戻れば返り討ちにしてやると言っているであろうが!」 「神の力が戻ってもあの時のようにアテナの護符で封じられたらどうするつもりだ?!」 「アテナの護符などもう聖域には残っておらぬ!そもそもあいつは『俺に危害を加えない』という条件でハーデス様に蘇らせてもらったのだ、聖域と冥界の和解に悪影響を及ぼすと分かっていてその約束を反故にするほど馬鹿ではなかろう」 「なっ…タナトス、星矢はともかくあの人間を信用しているのか?たかがフィギュアや菓子で懐柔されて、お前には神の矜持というものが無いのか!」 「懐柔などされておらぬわ!人間からの貢物だから神として受け取っているだけだ!」 「何が『神として』だ!そもそもお前が『あの蟹座も殺す必要はなかったのかもしれない』などと寝言を言わなければこんなことには…」 「何が寝言だっ!!」 「あのう…」 何だか突っ込みどころ満載の問題発言が飛び交う小さな神々の口喧嘩に、仲裁に入るタイミングを掴みかねた男性陣が微妙な顔で沈黙していると、良くも悪くも空気の読めない爆弾魔の秋乃がおずおずと口を挟んだ。 彼女はタナトス(子)とヒュプノス(子)を交互に見ながら好奇心を孕んだ目で尋ねた。 「その、マニゴルドさんなんですけど。こちらの世界では男性みたいですけど、あなた達の世界では女性なんですか?」 「……………」 その発想はなかった、と双子神達と聖闘士達は思った。 つか、あっち側の世界のマニゴルド氏が女性ならば、突っ込みどころ満載かと思われた口喧嘩の印象も随分と変わるのだが…。 秋乃の質問とその表情に不吉な何かを感じたらしい双子神(子)は、後ずさりするような姿勢でボソッと答えた。 「いや、こっちの世界のマニゴルドも男だけど…」 「男性、ですか…。………」 「…………」 「…………」 微妙な沈黙が流れた。 秋乃は人差し指を顎に当てて明後日の方を見ながら、『BL系でショタコンで紳士でタナトスさんのファン…』と何やら物騒な単語を呟いている。何だか嫌な予感がして来て、さっさと話題を変えようと野郎どもが思った時、秋乃が紙とペンを出してきて双子神(子)に差し出した。 ふたりはその意味が分からず、きょとんと彼女を見上げた。 「何だ?八雲紫の似顔絵ならさっきこの世界の俺が描いたではないか」 「そうじゃなくて。噂のマニゴルドさんの似顔絵を描いて欲しいんです」 「…つかぬ事を聞くが秋乃、マニゴルドの似顔絵など描かせてどうするのだ?」 「どうもしませんよ。ただ、どんな人なのかなーって気になっただけです」 にっこり。 彼女の可愛らしい笑顔が何だかとても不吉な物に見えるが、断る理由も見つからないので双子神(子)は仕方なく紙とペンを受け取って『マニゴルドの似顔絵』を描き始めた。 真剣な顔でペンを動かすふたりに秋乃が好奇心いっぱいの顔で尋ねた。 「…で、そのマニゴルドさんってカッコいいんですか?」 「うーん…星華姉ちゃんは『ワイルド系でカッコいいけど、私はタイプじゃないな』って言っていたな」 「そうなんですか。ところでそのマニゴルドさんの本当のお目当ては星華さんで、タナトスさんに色々プレゼントくれるのは星華さんとお近づきになる為とか、そういう事はないんですか?」 「ないと思うぞ。さっき言ったが、ゴレンジャーのショーを見に行った時にマニゴルドは俺達に菓子やジュースをくれたのだが、そのことで星華姉ちゃんにガンガンに怒られていたからな」 「『ご飯が食べられなくなるほどお菓子をあげちゃダメじゃないですか!』って?」 「そうだ。マニゴルドはベッコベコにヘコんでいたな。説教が終わった後に『天馬星座の姉さんは若いくせに筋金入りの教育ババアだな』って言ったらそれも星 華姉ちゃんに聞かれてて、『そんな事を言うならもうタナちゃんやヒュプちゃんをあなたには預けません!!』って怒られて、平謝りしていたぞ」 「…何だか憎めないキャラですねぇ、マニゴルドさん」 「碌でもない下心を持ってタナトスに近づくからそういう事になるのだ、自業自得というものだ。…描けたぞ」 ふたりが差し出した紙をわくわくしながら受け取った秋乃は、描かれた『似顔絵』を見て何とも言えない顔になった。 一体どんな絵なのかと横から覗きこんだ双子神と聖闘士達も秋乃同様何とも言えない顔になった。 星矢は秋乃から紙を受け取り、縦にしたり横にしたりしてしげしげ眺めて真顔で双子神(子)に尋ねた。 「マニゴルドさんって…UMA?」 「「人間だと言ったであろう」」 「………。とりあえず、八雲紫の似顔絵はこちらの世界のタナトスに描かせて正解だったと言うのははっきりと分かるな」 「あ、そう言えばこちらの世界のタナトスさんとヒュプノスさんもそのマニゴルドさんに会ったことがあるんですよね?じゃあ…」 「生憎と俺は、不愉快な人間の事は早々に記憶から消去する主義でして。シジフォスもヘラクレスも件のマニゴルドとやらも、どんな顔だったか全く覚えておりません」 「私も、その男の顔は二百数十年前に一目見た程度ですので…」 マトモな似顔絵を描いたら何だかよろしくない結果になりそうだと直感した双子神(大)が秋乃の言葉に被せるように先回りした。言葉に出来ない嫌な寒気が背筋を這いあがってくるのを感じながらタナトス(大)が慌てて話題を変えた。 「お前達も秋乃様も、どこまで話を脱線させる気です?問題はこのチビ共の門限でしょう?」 「ああ、そう言えばそうだったな。…つっても、その大妖怪様が現れてくれないことには門限どうこう以前の問題だよなぁ…」 「ひょっとしたら姿を見せるかも、と思っていましたけどダメだったね」 「神々と聖闘士が雁首揃えて待ち構えているからな、捕まる事を警戒して出て来ないのかもしれないぞ」 「うむ………」 タナトス(大)が一気に話を引き戻したおかげで物騒な話題からは離れられたが、一輝の言葉に皆は複雑に黙り込んで顔を見合わせた。 八雲紫は遅かれ早かれ姿を見せるだろうが、それがいつなのかは全く予想が出来ない。このままズルズルとエルミタージュ洋菓子店に皆で滞在していても、秋乃に迷惑をかけるだけで時間を無駄に消費するだけのような気がする。 星矢は何となくきちんと座りなおして姿勢を糺すと秋乃に向き直った。 「じゃー秋乃さん。これ以上俺達が残ってても出来ることなさそうだし、引き揚げますよ。何かあったら連絡お願いします、出来るだけ急いで来ますんで」 「分かりました。緊急の用件だったら電話しますね」 「…秋乃様、そろそろ我々もチビ達を連れて一度冥界に帰還しようと思います」 「え?」 「「えっ?」」 タナトス(大)の言葉に秋乃も異世界の双子神も意外そうな顔をした。 聖闘士達がいなくなれば八雲紫が接触してくるかもしれない、それなら彼らはもうしばらく地上に残るのではないかと思っていたのだが…。 秋乃が目をぱちぱちさせてタナトスに尋ねた。 「え…まだ午後六時ですよ?お店は深夜まで開いていますし、こちらのタナトスさんヒュプノスさんが眠たくなるまではここにいても良いんじゃないですか?」 「そのお言葉は有難いのですが…碌に事情を説明せずに冥府を出て来たもので、ハーデス様やヘカーテ様がひどく心配されているのです。『地上にいてはいつま たその妖怪が襲ってくるか分からぬのだろう、とにかく一度、ふたりを連れて冥界に戻って策を考えてはどうか』とメールも来ていますし。…それに」 タナトスは(大)一度言葉を切って双子神(子)を見遣った。 「手洗いに行くのも我々の同伴が必要という状況ではチビ共も窮屈でしょう。それから八雲紫ですが、この時間まで待っても現れなかったということは、奴は今日は姿を見せない気がするのです」 「何を根拠に?」 「根拠と言われると…そんな気がする、としか言えぬな」 「…八雲紫の目的が『私とタナトスの困った顔を見ること』なら、今から来たところでそんなものは見れぬ故、無駄足になるのを承知で姿を見せる事はないだろ う。奴が姿を見せるなら別の何かを仕掛けてからになるだろうな。その『何か』を仕掛けるのがこの世界なのかこの子達のいた世界なのかは分からぬが」 タナトス(大)の直感をフォローしたヒュプノス(大)の言葉に皆がなるほどと頷いた。 「そーゆー事ならミニ双子神様も冥界に帰還した方が安心だな。その大妖怪サマも夜は寝てるだろうし、ふたりも今日はゆっくり休んでくれよ」 「ああ、そうする」 「そうだ、都合が合えば明日は星華姉さんにも会ってくれよな。あ、姉さんには絶対『オバサン』なんて言わないでくれよ」 「星華姉ちゃんにそんな事は言わぬ、安心しろ」 「では冥界に帰還するか。一度戻ったらまた地上に来るのは面倒故、お前達、忘れ物の無いようにな」 レア物フィギュアを大事に鞄に戻して、準備万端だ!とタナトス(子)が微笑んだ。 なら行くか、と立ち上がったタナトス(大)のシャツの袖をヒュプノス(子)がそっと掴んだ。…ひどく、おずおずと。 その仕草にタナトス(大)は怪訝そうに首を傾げた。 「何だ?」 「…何でもない」 今度は、振り払われなかった。 安堵の気持ちに口元にかすかな笑みを浮かべるヒュプノス(子)を見て、タナトス(大)はどこか嬉しそうに微笑んで金色の髪をくしゃりと撫でた。 …神々と聖闘士達は秋乃に挨拶してエルミタージュ洋菓子店を出て、それぞれの帰る場所へと戻って行った。 |
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| 予想外に長く
なった8話目です。余りに長くなったのでゲームで遊んでいる部分はカットしました…orz 蝶様の双子神が「門限がっ!星華姉ちゃんに怒られる!」と叫ぶネタはかなり早くからありました。色々悩んでこんな形で。導入部分、当サイトヒュプにおん ぶされた蝶様ヒュプが無防備に寝てしまう下りで、蝶様ヒュプが心を開いてくれた(警戒心を解いてくれた)事を表現してみました。けど、心は開いてくれても 蝶様ヒュプは手強いツンデレなのでなかなかデレてくれないのですがね。そこをデレさせるのがまた楽しくて嬉しいんですよね(=^^=) そして蝶様から頂いた設定で「タナトスの鞄には『チェス必勝法』みたいな本と彼のお気に入りの戦隊モノのフィギュアが入っている」と言うものがあったの で、この先のエピでマニさんも出てくるしちょっと伏線的にマニさんの話題に触れておくか…と思って戦隊モノネタを入れたらこれが楽しくて戦隊モノネタが伸 びる伸びる(笑)。当サイトタナトスは間違いなく戦隊モノに出演するでしょう。そのストーリーもポコポコアイデアがわいてくるので機会があればSSにした いところです。どこまで風呂敷が広がるのか当サイトタナトス…。まるでスケットダンスのモモカのようだよ!(笑) そして蝶様マニさんの設定紹介も兼ねた蝶様双子神の会話は描いててものすっごい楽しかったです。2012年3月上旬現在、蝶様サイトではまだ未公 開のネタにもちょろっと触れてるのですが、詳しくは蝶様の作品をお待ち頂くとして…。蝶様ヒュプはマニさんが嫌いだそうです。理由は言わずもがなです (笑)。蝶 様タナトスはマニさんに割と好意的と言うか一目置いているような発言をしていますが、これはマニさん本人が目の前にいないからぽろっと本音が漏れてるた めです。蝶様タナトス自身は「自分がマニさんを一定レベルで認めている」ことを認めていないそうです(笑)。 で、マニさんが戦隊モノのショーに双子神を連れて行く(そして双子神にお菓子やジュースをあげて星華さんに怒られる)ネタも蝶様との打ち合わせで出て来 たのですが、細かい私の脳内設定など。 観戦チケットはマニさんが沙織さんに頼んで調達してもらったんだと思います。沙織さんとしてもマニさんとタナトスの和解は歓迎すべきことなのでその程度 の便宜は快くはかってくれたんじゃないかなと。で、あーゆーチケットって大抵『保護者ひとり・お子様ひとり』のペア券ですよね。マニさんがタナトスだけを ショーの観戦に誘ってもタナトスは首を縦に振らないだろうし、そもそもふたりだけでお出かけなんてヒュプが絶対に許さないと思うので、マニさんはペア券を 二枚調達したんだと思います。で、マニさん+星矢か星華さん+双子神の四人でショーを観戦。ジャンケン大会はズルは出来ないのでガチ勝負だったと思うので すが、ハンターハンターで「人並み外れた動体視力があれば、じゃんけんの瞬間の相手の指の開き具合を見て相手の出す手を見抜ける(意訳)」というネタがあ りまして…マニさんはそれで相手の出す手を見抜いて勝ち進んだんだと思います。グリードアイランド初期のゴンとキルアが出来たんだからマニさんなら余裕だ よ!(多分) そして当サイト双子神のマニさんに対する認識の違いにもふたりの個性を出してみました。タナトスは『殴られた事』が印象的で、ヒュプは『タナトスに憧れ ていた事』が印象に残ってると言う。 んで最後は貴重な蝶様ヒュプのデレですね。7話で『蝶様タナトスのクリームを拭いている当サイトタナトスの袖を掴んだら振り払われてしまった』ことを気 にしてて、そーっと当サイトタナトスの袖を掴んでみたら今度は振り払われなかったので、嬉しくなったみたいな感じでしょうか。でも笑うと言っても少しだけ なのです。蝶様ヒュプは当サイトヒュプ以上にツンデレなのでデレてくれると滅茶苦茶嬉しくなりますね(^^) そして予定よりちょっと早く、エピ自体も予定外で突発的だったのですが、次に蝶様世界の話を挟むことにしました。マニさん視点の話を挟む予定はあったの ですが、書いても書いてもその地点まで行けないもので…(^^;)しかしマニさんとパンドラさんの動かしやすさにびっくりでした。マニさんはいじられキャ ラが良く似合う…。 ↓話が長すぎたのでカットしたゲームで対戦の部分です。秋乃がコントローラーを差し出して蝶様ヒュプが目を覚ますまでの間に入れる予定でした。 「よっしゃー連鎖来たぜー!!!」 「すごいぞ、10連鎖を超えた!!」 「これはいよいよ秋乃様も終わりか!?」 「なんのなんのっ!勝負はここからですよ!せーの…『変身』!ぎゃおー!どっかーん!!」 「なっ…ここから逆転するのか!?」 「ちょっと星矢、早く消さないと!」 「分かってるって!こういう時こそ落ち着いてだな…ってうああぁぁぁーー!!」 ヒュプノスが寝ているから大きな声は出せないなと言い始めてゲームを始めて二時間弱。『勝負に勝った方はそのまま残り、負けた方は次の人に交代する』と いうルールでゲームを始めたのだが、かれこれ一時間以上秋乃の独り勝ちが続いていた。 ニコニコしながら観戦しているだけの秋乃にコントローラーを差し出した時に『私、半端なく強いですよ?』と真顔で言われ、そう自称するからには相当強い んだろう、心してかかりますよと皆が軽い気持ちで彼女にコントローラーを渡したのが野郎どもの運の尽きだった。 秋乃は本当に本当に本当〜〜〜に、強かったのだ。最初こそ『うわーやられたー』『本当に強いなー』と笑いながらコントローラーを次に渡していた男性陣の 顔から笑みが消え、タナトス達や星矢だけでなくヒュプノスや一輝まで本腰を入れた本気で挑んでも歯が立たず、良い大人達(約一名お子様もいるが)は小さな ヒュプノスが寝ていることなど半ば忘れて見事なまでにぷよぷよにフィーバーしていた。 …怒涛の絨毯攻撃で敗北に追い込まれた星矢ががっくりとうなだれてコントローラーを差し出すと、ヒュプノスが真顔でコントローラーを受け取ると真剣な面 持ちでテレビの前に座った。先ほど秋乃に完膚なきまで叩きのめされたタナトスが悔しそうな顔で弟神に声をかけた。 「ヒュプノスよ、そろそろ勝たねば我々の沽券に関わるぞ」 「任せておけ、タナトス。私とて漠然と秋乃様のプレイを眺めていた訳ではない。コツも掴んできた故な、勝算はある」 「たかがゲームでタナトスサマもヒュプノスサマも大袈裟だな。…ま、俺も結構本気で悔しいけどさ」 「頑張れヒュプノス!」 小さなタナトスの声援にひとつ頷いてヒュプノスはコントローラーのスタートボタンを押した。 ここで蝶様ヒュプが目を覚まして『門限が!』と叫んで毛布にくるまるエピが挟まり、↓の展開になる予定でした。 その姿に皆が口元を綻ばせた時。 『ばたん、きゅ〜〜〜』 何とも間抜けな声がテレビから聞こえた。 …目を覚ましたヒュプノスの大声に驚いたヒュプノスと秋乃が思わずゲームの手を止めたせいで、ぷよが消えずに画面に落ち続けふたり同時にゲームオーバー になったらしい。 ポップな『GAME OVER!!』の文字が踊る画面を見て秋乃がどこか気の抜けた顔で呟いた。 「…一時停止するの、忘れてましたね」 「どうやらそのようですね」 「ヒュプノスサマ、結構良いとこまで行ってたのに惜しかったなぁ。ついに秋乃さんの連勝もストップかと思ったんだけど」 「確かに秋乃さんの連勝を止めたのはヒュプノス様だけどね」 |