双子神・神話時代 …黎明…
EPISODE 5

 生粋の夜の神々が部屋を出ると、お互いに何を話すべきか迷っているようなぎこちない沈黙が落ちた。
 オリンポス三兄弟の誰にも、巨人達を説得するだけの気力は残っていなかった。
 自分達が心をこめて万の言葉を尽くしても、あの銀色の神の言葉ひとつ程にも伯父達の心を動かす事は出来ないと気付いてしまったから。
 あの銀色の五芒星の神は一体…。
 ゼウスがぼんやりと考えていると、ヘカトンケイルがそっと口を開いた。

「…君達は、我々の姿を見ても驚かないのだな」
「え?あ、ああ…。ここに来る途中で色々とびっくりする事があったので、まぁ…」
「今更、というか…」
「クソ親父やジイサンがその姿を一目見るなりビビって追放したって言うから、一体どんな怪物かと思ってたら大したことないじゃないですか。正直拍子抜けですよ」
「ちょ、ポセイドン!」
「言いたい事は分かるがもう少し言葉を選べ、馬鹿!」
「ははははははは、それはご期待に添えなくて悪かったなぁ」

 次兄の正直すぎる発言にゼウスとハーデスは真っ青になったが、巨人達は気を悪くするどころか他意のない笑い声を上げ、しみじみと呟いた。

「我々の気持ちが大地と夜の一族の間で揺れている時ならば、必殺の口説き文句だったろうに…少しばかり遅すぎたな」
「いやいやコットスよ、我々に初めて会った時のタナトスの殺し文句に勝る言葉は今後も出てこないと俺は思うぞ」
「ああ、あれか…確かにあれこそ一撃必殺の殺し文句だったな」
「タナトス…と言うと…」
「死の神タナトス。夜の一族の実質的な長兄で事実上の一族のリーダーだ。頭が良く心は広く勇敢で、それでいて優しく思いやり深い。我々の最高の兄上で、親分だ」
「ウラノスに疎まれタルタロスに堕とされて困り果てていた我々を見つけて助けてくれたのがタナトスとヒュプノスの双子神だ」
「最初は我々を魔物かと思っていたようだが、事情を話したら我々の為に激昂してくれて、我々の事を『大きくて立派で素敵な姿』と言って褒めてくれたのだ」
「あの言葉を聞いた瞬間、我々は彼らを大好きになった。クロノスに裏切られた時も、『お前達は産まれた時から夜の一族で、俺の大事な子分だ』と言ってくれて、もっともっと大好きになった。夜の兄姉は皆我等の自慢だが、タナトスとヒュプノスはその中でも特に自慢の兄なのだ」

 巨人達は身振り手振りを交えて嬉しそうに『兄自慢』をしているが、オリンポス三兄弟が一番気になっている事に対する答えはくれそうにない。
 六人が好き勝手に喋るのでゼウスとハーデスは質問のタイミングを探しあぐねていたが、話が途切れた一瞬の間を見逃さずポセイドンが割り込んだ。

「んでさ、噂のタナトス兄上っつーのはどの神なんですか?」
「ん?」
「話の流れから察するに、俺達をここまで案内してくれた銀髪の方かなとは思うんですけど」
「おや、兄上は自己紹介をされなかったのか」
「お名前を伺おうとしたのですが、タイミングを逃してしまって何となくそのままに…」
「あー…ヒュプノスはともかくタナトスは好感を持っていない相手に愛想よくする性質じゃないからなぁ…素直すぎると言うか不器用と言うか…。彼がお前達に 冷ややかに接するのは、大地の一族の我々に対する仕打ちに誰よりも腹を立てているからなのだ。つまりは弟を想う気持ちの裏返しなのだ、悪く思わないでく れ」
「…素晴らしいお兄さんですね」
「そうだろう、そうだろう?」
「ところでその『素晴らしいお兄さん』は、お茶の準備が出来るまでに決断しろとかおっしゃってましたが…」

 ゼウスがさりげなく『ティタノマキアでオリンポス側に協力してくれるのか否か』を尋ねると、巨人達は顔を見合わせてうーむと唸った。

「決断と言われても…」
「タナトスにしては遠回しな言い方だったが、あれ、要するにクロノスをやっつけてけじめつけて来いって言ったんだよなぁ?」
「言ったんだろうなぁ…親分の命令じゃ逆らえないなぁ」
「えっ…と、それはつまり、私達に協力してくれるということですか?」

 期待に高なる胸を押さえてゼウスが尋ねると、巨人達はニヤリと笑った。

「クロノスに復讐しようと思ったら結果的にそうなるな」
「ネメシス姉上が蒔いてくれた種を他人に刈り取って貰うのも姉不孝だし」
「だいたい、ここで『別にクロノスに復讐しなくてもいい』なんて言ってみろ。タナトス兄上とエリス姉上から叱り飛ばされるに違いない」
「叱り飛ばされるだけで済めばいいが、下手したら向こう一週間おやつ抜き、遊んでも貰えなくなる」
「…おやつ…」
「『そんな腑抜けの腰抜けなど俺の子分ではない!』ってな」
「分かりやすくキレる分タナトスとエリスはまだ良いが、ヒュプノスやオネイロスはチクチク厭味で攻めて来るから地味に嫌…」

 バァン!!
 巨人達が妙に楽しそうに兄弟の悪口を言っていると、ものすごく乱暴に部屋の扉が開けられた。
 オリンポス三兄弟はびっくりして椅子から飛びあがり、ヘカトンケイルとキュクロプスはその巨体を小さくして互いに目配せして口にチャックをする真似をした。
 …扉を開けたタナトスとエリスがムスッとしているのは、大地の一族に好意的な感情を持っていないから…だけではなさそうだった。死と争い以外の兄弟姉妹は一歩下がったところで笑いながら様子を見ている。
 ティーカップをのせた盆を仏頂面で運んできたエリスは、半ば叩きつけるような勢いでカップと茶菓子をオリンポス三兄弟の前に置き、飲み物を乗せ たワゴンにいったん戻って、盆に載せてあったティーカップとジュースの入ったグラスをわざわざ取り替えて運んでくると、今度は本当に叩きつける勢いで巨人達の前にコップを置いた。

「そーゆーナマイキ言うあんたらはお菓子無し!氷無しのオレンジジュースで十分!おかわりも無しっ!!」
「えー」
「えーじゃない!」
「姉上、せめておやつ…」
「だーめっ!」
「ケチ」

 ぶーぶー言いながら巨人達が氷無しのオレンジジュースに口をつけると、不機嫌顔を隠しもしないタナトスが口を開いた。

「で?心は決まったのか」
「…行かないって言ったら『お前は俺の弟ではなくなるがそれでも良いのだな?』って脅すのだろう?」
「脅すなどまどろっこしい事はせぬ。即座に蹴り出すだけだ」
「ならば答えは一つだ、兄上」

 ジュースを飲みかけたコップを置いて巨人達は笑った。

「我々は夜の一族だ。誇り高き夜の一族として、あなた達の弟として、今まで曖昧にして眼を背けてきた全てに決着をつけに行く。そして帰ってくる。家族のいるタルタロスに、我々の家族がいるこの場所に、必ず、帰ってくる」
「…絶対だな」
「ああ、絶対だ」
「ならば勝手にしろ」
「ああ、勝手にする。ありがとう」
「………。クロノスの息子達よ」
「はっ、はい!?」

 自分達の存在は素通りで話が進んでいたので、声をかけられるとは思っていなかったオリンポス三兄弟が素っ頓狂な声で返事をすると、タナトスは懐から鍵束を取り出してゼウスに放り投げた。

「…これは?」
「庭の魔獣達は弟達の命令なら聞く故、乗って帰るが良い。歩くよりは早く地上に戻れるだろう」
「え?あ、ありがとうございます」
「返しに来るのは全てが終わった後で構わぬ」

 言うだけ言ってタナトスは踵を返し、部屋の入り口で足を止めた。

「ヘカトンケイル、キュクロプス」
「何だ、兄上」
「…無事に帰って来なかったらただでは済まんぞ」

 背中を向けたまま言葉を投げて、振り向きもせず彼は行ってしまった。
 他の兄弟姉妹達は巨人達に笑顔を見せ、あるいは手を振り、頑張れよと声をかけ、ちゃんと帰ってきてねと告げ、最後にエリスが満面の笑みで親指を立てた拳をぐっと突き出して片目をつぶり、兄姉達の後を小走りに追いかけて行った。
 ヘカトンケイルとキュクロプスは残っていた生ぬるいオレンジジュースを一気に飲み干すと、オリンポス三兄弟がゾクリとするほど真剣な目になってコップを置いた。

「家で最後に口にしたのがぬるいジュースでは死んでも死にきれんな」
「全くだ。クロノスへの復讐を果たしたら冷たく美味な酒でも飲ませてもらわねば」
「そうだな。…では行くか、クロノスの子らよ」

 差し出された無数の手を、オリンポス三兄弟はしっかりと、ひとつひとつ、握り返した。
 この手で、勝利を掴むのだと強く心に誓って。



 六人の巨人と一緒に、巨大な魔獣の背に乗ってオリンポスの本拠地に戻ってきた三兄弟の姿を見るなり味方の神々からわっと歓声が上がった。
 夜の協力は望めないと半ば諦めていただけに喜びはひとしおだった。
 特に巨人達の母ガイアの喜びは他の誰よりも大きく、歓声を上げて息子達に駆け寄った。

「ああ、お前達、お前達…来てくれたんだね、来てくれたんだね…。十年前に力を借りに行って断られた時は全てを諦めかけたと言うのに、協力してくれるのね…ああニュクス、私は妹に何とお礼を言えばいいのか分からないわ」
「お祖母様。夜の一族には今回も協力を断られたのです」

 ゼウスは真剣な眼でガイアを軽く制した。
 本音と建前はどうであれ、彼女が事情を誤解したままでは後々トラブルになりかねない。
 怪訝そうな顔をするガイアと他の神々を見回して、ゼウスはひとつずつ丁寧に言葉を口にした。

「仲裁の女神の一族は特定の勢力に協力する事は出来ないと、そう言われました。伯父上が我々と一緒にここに来たのは、利害と目的が一致したからです。あの魔獣も死の神タナトス殿のご好意で貸して頂いたにすぎません。もう一度言います。夜の一族は中立の立場から動きません」

 集まった神々は、口々に『そういう事で了解した』と答え、微笑を浮かべて席を外した。
 …その場にはガイアとオリンポス三兄弟、巨人達が残った。
 眼に涙を浮かべて唇を震わせ、かける言葉を必死に探す母に、巨人達はどこか恥ずかしげに躊躇いながら話しかけた。

「…母上。お願いしたい事があるのです」
「何かしら?言ってごらん」
「この戦に勝利したら、我々が夜の一族になることを赦してほしいのです」
「………」

 ガイアは眼を見開き、何か言いかけて口を閉じ、顔を伏せて涙をぬぐい、気丈に微笑んで見せた。

「…そうね、私は母でありながら息子のお前達を守れなかったものね。お前達の家族は私ではなく、ニュクスとニュクスの子供達なんだもんね…」
「母上。ウラノスやクロノスに裏切られた後も、あなたが我々を気づかい愛してくれていた事はタナトス兄上から聞きました」
「俺達はあなたを母だと思っています。今までも、これからも」
「え………」
「我々は夜の一族の優しさに甘えていました。受けた仕打ちにただ傷つき泣くだけで、あなたが我々を愛してくれていることも知らず、自分達で何かを為そうと考えもしなかった事に今更気付いたのです」
「母上。我々は大地と夜を繋ぐ懸け橋になりたいと思ってここに来ました」

 ヘカトンケイルは無数の眼に真剣な光を孕ませてガイアをじっと見つめた。

「ウラノスが我々を捨てた時、夜は大地と交わる事を止めました。我々は心のどこかでその事実を歓迎して喜んでいたのではないかと思うのです。ああ、夜の一 族はこんなにも我々を大事にしてくれている、想っていてくれるんだ、と。夜と大地の溝を造ったのは我々だったのかもしれません」
「だから、今度は我々があなた達と夜の皆を繋ぎたいのです。ゼウスもポセイドンもハーデスも我々を怖がらなかった。疎まなかった。それどころか『一体どんな怪物かと思ってたら大したことない、正直拍子抜けだ』と言ってのけたのです」
「………」
「彼らなら大丈夫です、きっと夜の皆と仲良くやっていける。…大地から生まれた夜の一族の我々が懸け橋となれば」
「この戦に勝利した暁にはきっと孝行しに参ります。だから母上、我々が夜の一族になる事を赦して下さい」
「………お前達…」

 ガイアはぽろぽろ涙を零しながら嬉しそうに微笑んで、息子達の頬に精一杯手を伸ばして優しく触れた。

「子供だ子供だと思っていたのに、こんなにも立派になっていたなんて…。手のつけられないヤンチャ坊主だと思っていたタナトスもニュクスに何も言われなく ても自分の意見が言えるような大人になっていたし、私も心と考えを入れ替えないといけないようね。…ううん、違うわね。私達が出しゃばる時代は終わった、 これからはお前達の時代になるんだわ」
「母上…」
「クロノスを討ちなさい、息子達。そして胸を張ってタルタロスに凱旋なさい、夜の一族として」
「…ありがとうございます、母上!」

 漸く母子の絆を取り戻した地母神ガイアと巨人達は、長らく離れていた時を埋めるように、かたく、かたく抱き締めあった。





 ヘカトンケイル、キュクロプス兄弟の参戦は純粋な戦力強化以上の効果をオリンポス陣営にもたらしていた。
 ガイアを長らく苦しめていた息子達への呵責の念が消えたことで雰囲気は一気に明るくなり、それは味方の士気高揚にも大きく貢献した。
 無数の腕と巨体ゆえの戦闘力を生かす形で戦いに参加したヘカトンケイル達は、オリンポス山に近づく敵神めがけて大岩を投げつけて撃墜、撃退する役目を請け負った。
 敵が攻め込んでくる心配が無くなったオリンポス側はじっくりと作戦を練り、オリンポス三兄弟はタナトスに借りた魔獣達に乗りながら戦う訓練をし、キュクロプス達は産まれ持った鍛冶の才能を生かして決戦に備えた武具を造った。
 兄弟の誰よりも責任感が強く優しい心のハーデスには姿を消せる兜を。
 明るく快活なポセイドンには貫けぬものなど無いほど鋭い三つ又の矛を。
 世界の王となる資質を秘めたゼウスにはいかなるものでも撃ち砕く烈光を放つ雷霆を。
 キュクロプス達の珠玉の逸品を受け取った彼らはその素晴らしい武具を惜しみなく使った。
 ハーデスは堂々と敵陣に侵入して彼らの作戦を探り、ポセイドンとゼウスは武器を手に馴染ませるのを兼ねて敵の撃墜に加わった。

 


 そして――



 決戦の時が

 来た。
 
 


 口火を切ったのはヘカトンケイルの三兄弟。
 ティタン軍が陣を置いていたオトリュス山めがけて大岩を昼夜問わず投げ込み続け、不死の神々を瓦礫の下に生き埋めにするという形で敵の数を激減させた。 敵の主力が陣のどこにいるかは事前にハーデスが下調べ済みだったから、的確な投擲で見る見る間にティタン陣営の戦力は半減した。
 動きを封じられてはならぬと総大将クロノス自らがアダマスの大鎌を構えて前線に出てくるのを見ると、ゼウス、ポセイドン、ハーデスの三神が愛用の武具を携えてそれぞれワイバーン、ガルーダ、グリフォンに乗って飛び立った。
 …タルタロスから戻って決戦までの間に、三兄弟は魔獣に乗ったまま戦えるようになっていた。クロノスは愛用の大鎌を振り回して応戦したが、オリンポス三 兄弟が乗る魔獣達は死の神タナトスの大鎌を相手にじゃれて遊んでいたような怪物だ、今さら農耕神の鎌など意にも介さない。魔獣達は雨霰と飛んでくるヘカト ンケイルの大岩を鮮やかにかわしながらクロノスの周囲を旋回し、その背に乗ったゼウスとポセイドンはそれぞれの武器でクロノスを休みなく攻め立てた。
 額に汗を浮かべたクロノスが焦りから余裕を無くしていくのが手に取るように分かる。
 父神の意識が完全にゼウスとポセイドンに向いた時、ハーデスは姿を消す兜を被ってグリフォンを駆った。
 クロノスが鎌を上段に構えたその瞬間、ハーデスはクロノスの背後を飛び去りざまにアダマスの大鎌を奪い取った。
 いかな大神と言えども、武器を奪われ丸腰となっては為すすべがない。
 自陣は総崩れとなり、無様に背を向け逃げ出すクロノスとその兄弟神の姿にゼウスは勝利を確信した。

「敵の大将が逃げる!皆、追うぞ!追って追って追い詰めて、かつて奴が己の兄を『追放』した奈落に追い落とせ!!」

 おおっ!!
 味方陣営から鬨の声が上がり、魔獣の背に乗った三兄弟を先頭にオリンポスの神々はもはや惨めな敗者となったティタン神族を猛追した。
 …奈落タルタロスの入口までティタン神族を追い詰めたオリンポスの神々が、敵が決して逃げぬよう瞬きすら惜しむように見張りながら数歩下がると、入れ替わりにヘカトンケイルとキュクロプスの兄弟達が前に出た。
 異形の『兄』の姿に顔を引き攣らせるティタン神族に勝者の笑みを向け、ゼウスは高らかに言った。

「さぁ伯父上。今こそ全てに決着をつけられよ!」

 巨人達は力強く頷き、六人一緒にクロノスを掴み上げた。
 なにやら喚くクロノスの言葉には耳を貸さず、巨人達は嬉しそうに奈落に向かって大声を上げた。

「叔母上、兄上、姉上!今から勝利の証をそちらに送る!どうぞお受け取りください!!」

 そして彼らは、微塵も躊躇うことなく、欠片も手加減する事もなく、クロノスをタルタロスの奈落めがけ、投げ落とした。





 ズッ…ドォォォォォンンン!!!!
 タルタロスに轟音が響き、奈落全体が激しく揺れた。
 ニュクスと彼女の子供達は『それ』の落下地点に全員集まって、次から次に堕ちてくるティタン神族達を眺めていた。

「これで全部だ!」
「戦後処理が終わったらタルタロスに戻る故、今度は冷たい飲み物とおやつを頼むぞー!」

 …話の続きを待っていた夜の兄弟姉妹は、それっきり声がしなくなったので、何とも微妙な顔を見合わせた。

「ひょっとして飲み物おやつだけ要求して話は終わりだった訳?」
「え?じゃあどーすんの、コレ。勝利の証とか言ってたけど」
「どうと言われても…此度の戦には無関係を主張している我々だ、どうもこうもできまい」
「じゃあ放置?」
「それしかないんじゃ?うっかり触ったらマズいっしょ」
「えー。腐ったらどーすんの?」
「その時は土でもかけるしかないだろう」
「腐る前にヘカトンケイルとキュクロプスが戻るだろうし、その時にどうするか聞けばよかろう。それよりも連中が戻った時の祝賀会の準備でも始めぬか?」
「さんせーい!」
「リクエストにお答えしてとっておきのお酒を冷たく冷やしておかなくちゃね」
 
 巨人の怪力で地上から奈落に叩きつけられたクロノス達が折り重なってうめき声を上げる姿には眼もくれず、夜の一族は祝賀会の計画をワイワイと話し合いながらニュクスの館へ戻って行った。


NEXT


星矢部屋
総合目次
SS・2012時代
SS・神話時代
SS・蟹座達


 7話と8話の前半は巨人達の夜の一族(特にタナトス)への感情を主に解説してます。というか、巨人達と夜の一族の仲のよさを伝えたいと言うか、そんな感じで書きました。
 エリスが巨人達にオレンジジュースを出したのは、彼らが初めてタルタロスに来た時の再現を意識してるからです。「あんた達が夜の一族になったあの日を忘れないで、ちゃんと帰ってきてよ」的なメッセージがあるというか、そんな感じでしょうか。
 …そう言えば、『冥界の食べ物を口にした者は冥界の住人にならなければいけない』という神々の掟があるそうなのですが、飲み物はどうなんでしょうね?? しかし冥界の食べ物を口にしたはずのキュクロプス達はティタノマキア終結後に地上に残ったし…ひょっとしてギリシア神話の彼らはウラノスに堕とされてから ゼウスに救出されるまで呑まず食わずだったとか?いやいやまさか…うーん…。
 ティタノマキア終結です。オリンポス三兄弟が夜の一族に協力要請 に来る話だけで3話使ったのに最終決戦は1話(の、半分)で終わりと言うあたり、愛情の偏り具合が良く分かります(笑)。実際のギリシア神話でも巨人達の 参戦で一気にオリンポス側が有利になり、畳みかけるように勝利したらしいですが。三兄弟が魔獣に乗って決戦に行くシーンは自分で描いてて熱かったです。
 巨人達の精神的な成長は書いてる私にも意外でした。双子神2012を書いてる時は、彼らがこんなに立派になるとは思ってなかったですよ。
 んで、キュクロプス達がオリンポス三兄弟に作った武具、ゼウスとポセイドンは凄い武器なのになんでハーデスは兜なのか。原点のギリシア神話でも、ハーデ スが貰ったのが兜だった時に「うわ、ビミョーw」「これこそまさに隠れん帽w」って空気が流れた的な記述があるそうです(笑)。いやまぁ、ド派手な武器よ り姿を隠せる兜の方が色々と使い勝手は良さそうですけどね。ですけどね!(笑)
 ちなみにゼウスの武器「雷霆」は「らいてい」と読むそうです。具体的にどんな形なのかは不明ですが、絵画などでは三つ又の炎の槍のような形で描かれる事が多いそうです。