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…エリシオンに聳え立つハーデス神殿の最奥の部屋。 所在無げに寝台に腰を降ろしていたベルセフォネーは、見覚えのある女神が部屋に入ってきたのに気付いて立ちあがった。 争いの女神エリスと因果応報の女神ネメシス。冥王の片腕たる双子神の妹達だ。 彼女達が部屋を訪ねて来たという事はつまり、双子神がオリンポスから戻ってきたに違いない。 ベルセフォネーは妹神達が何か言う前に自分から尋ねた。 「お兄様方が戻られたのですね?」 「はい。その件でベルセフォネー様にお話をしたいと。あの、それで…」 「…良くない知らせなのでしょうか」 期待に胸を膨らませていたベルセフォネーは、エリスとネメシスの浮かない表情に話の内容を察してしまったが。 女神達は言って良いものか悩むような顔を見合わせ、言いにくそうに告げた。 「兄の様子を見た限り、話し合いの結果は思わしいものではなかったのではないかと。それで、その、ご報告の場にはハーデス様も同席されるそうなのですが、 よろしいでしょうか?差し支えがあるようでしたら別々にお話をしますが、出来ればご一緒して頂きたい雰囲気だったのですが…」 「………」 よろしいでしょうか、出来れば…と控えめな言葉を使ってはいるが、彼女達の態度を見るにハーデスが同席している場で話を聞けと言うのはあの双子神からの事実上の強制らしい。 話し合いの結果が思わしくなかったという事はつまり、ベルセフォネーが地上に帰るのは無理という事とほぼイコールで、そうなると双子神のご機嫌を下手に損ねるような事は避けた方が良い気がする。 何せあの銀と金の神は立場こそ冥王の臣下だが、冥王は彼らを兄と呼んで慕って頼りにして何かにつけてアドバイスを求めている。歯に衣着せぬアレスは 『ハーデス伯父貴は夜のお兄様達の言うなりだ。あれじゃどっちが冥王か分かんねーぜ。難しい言葉でいえば傀儡の王って奴だな』と言っていて、言葉には問題 は有るが内容はは概ね事実らしい。 気は進まなかったが、ハーデスとベルセフォネーを同席させて報告をしたいと言うからにはそれなりの理由があるのだろう。 そう考えたベルセフォネーは、分かりましたと頷いて夜の女神達の後を付いて行った。 神殿の応接間らしい部屋に通されたベルセフォネーは、(冥王とベルセフォネーがいるにもかかわらず)顔と態度と小宇宙で不機嫌オーラを遠慮なくばらまく 双子神に驚いて足を止め、二人に挟まれてビクビクと小さくなっているハーデスの姿に少しにホッとして、女神達に勧められた椅子におずおずと腰かけた。 「兄貴さぁ、ハーデス様だけならまだしもベルセフォネー様までいるんだよ?何があったか知らないけど不機嫌アピールは自粛してよね」 「これでも十分に自粛しているぞ」 「タナトス兄さんはともかくヒュプノス兄さんが自粛してその様子だって事は、話し合いは散々だったようね」 「まぁ…それは今から話す」 エリスとネメシスの言葉に短く答えた双子神は、女神達が席に着いたのを見て組んでいた手と足を戻して背筋を伸ばした。 プライベートから仕事に切り替わったと言う事だろう。 「では結論から述べさせて頂きます。大変心苦しいのですが、ベルセフォネー様には今しばらく冥界に滞在して頂きます」 「冥界に滞在している間は我々が責任持って御身をお守り致します。時が来ましたら必ず母上の元にお帰し致しますゆえ、おひとりで地上に帰るなどと無謀な 事は決してなされぬよう。エリシオンの外は死者を罰する地獄です、乙女の身で通り抜けられる場所ではありませぬ。万が一、姫君がエリシオンの外に出られた場合は我々は安全を保証できかねます。重々ご承知置きを」 「わ…わかりました…」 ベルセフォネーは消え入りそうな声で答えた。 双子神の言葉こそ丁寧だったが、口調はもはや命令レベルに近い。 要するに俺達に黙って逃げだしたら何があっても知らないぞ、いずれ地上に帰してやるから大人しく待っていろと言っているわけだ。 臣下の発言内容はハーデスにとっても意外だったらしい。驚いた様子で左右に座った双子神を交互に見る冥王を、銀の神がじろりと睨んだ。 「…そういう訳ですのでハーデス様」 「な…何だ?」 「姫君をお帰しする時が来たら我々がお知らせします。それまでは何があっても…ベルセフォネー様に泣いて懇願されても、エリシオンから連れ出したりなさらぬよう。よろしいですね?」 「あ…ああ、分かった」 ビクッと震えてハーデスが何度も頷いた。 …冥王様なのに、臣下のお兄様に怒られるのは怖いのかしら。 そう思うとただ憎らしく恐ろしかったハーデスがどこか可愛く思えて来て、ベルセフォネーがそんな自分に戸惑っていると、銀の神が努めて事務的な口調で口を開いた。 「では詳細をご報告いたします。我々がオリンポスを訪ねた際、デメテル様は既に事の経緯を御存知で、ゼウス様を詰問しておいででした。ゼウス様は『娘は既 にハーデスに嫁入りしたのだからその事実を受け入れろ』、デメテル様は『黙って攫って行った娘を一度返せ』。おふたりの主張は真っ向から対立して平行線、 話し合いは物別れに終わりました」 「ゼウス様よりハーデス様への伝言を預かっております。『娘を兄上に嫁がせる約束を撤回する気はない、デメテル様とベルセフォネー様の事は時間が解決するから心配は無用だ』…だそうです」 「心配無用?」 とてもそうは思えぬが…と言いたげな顔でハーデスが首を傾げると、金の神が浅く顎を引いて言葉を続けた。 「このお言葉をお聞きになったデメテル様は酷くお怒りになり、『私は愚弟達の思い通りにはなりません。必ず娘を取 り戻します。ゼウスとハーデスが折れるま で、娘の結婚は認めません。絶対に、絶対に、赦すものですか!』と仰せでした」 「そ…そんなに姉上は怒っていたのか」 「ええ、それはそれはお怒りでしたよ。デメテル様ベルセフォネー様の気持ちなど全く考えず、ご本人を蚊帳の外にして話を進めた事を詫びもせず、『こんな良 い縁談なのに何故嫌なのだ』と言って、 デメテル様を石頭だのヒステリックだのと悪しざまに罵った挙句に時間が解決するから心配無用と言ったゼウス様にも、ベルセフォネー様を愛していると言いな がら、デメテル様に堂々と会いに行ってどれだけ姫君を愛しているかアピールする事も出来ない情けない男ハーデス様にも」 「余りにもお怒りの内容が正論すぎて我々はぐうの音も出ませんでした」 「あ…う…」 頼りの兄上達から情け容赦ない言葉と視線を浴びせられてますます小さくなるハーデスに女神達が同情交じりの目を向けていると。 女性達の前でこれ以上情けない姿は見せられないと思ったのか、ハーデスは必死に背筋を伸ばして臣下に尋ねた。 「そっ…そのようなやり取りがあったにもかかわらず、ベルセフォネーを冥界に滞在させる理由は何だ?」 「姫君を愛しているから手放したくない、何とかしてくれとハーデス様がおっしゃったからですが」 「う…そ、そうであったな…。…あ。いや、しかしだな、そなたらの話を聞く限りではゼウスではなくデメテルが真っ当な事を言っている気がするぞ。確かに余 は我儘を言ったが、真っ当な事を言っている方の意見に反する行動をとる理由は何なのだ?いくら弟の初めての我儘とはいえ、道理に反する行動をそなたらが由 とするとは思えぬのだが」 「………」 双子神は一度瞬きして視線を合わせ、タナトスはふっと息を吐いた。 「…我々は納得できなかったのですよ」 「?」 「大神の言動も行動も、理屈では理解できる。しかし感情はどうしても納得せぬのです。今回の一件でも、アテの一件でも」 「……!」 タナトスの言葉に、ヒュプノス以外の神々の顔色がサッと変わった。 半ば戯れのようにゼウスとエリスが愛を交わして生まれた女神、アテ。 迷妄を司る彼女は父神ゼウスに要らぬ進言をし、彼の判断を迷わせた咎で天界から追放された。実の父であるゼウスに首根っこを掴まれて地上へと投げ落とされたのだ。 姪が受けた仕打ちに双子神が何も感じなかったはずはないが、彼らは口を噤みゼウスに抗議など一切しなかった。 その時点でエリス母子がゼウスに対する情も絆も持っていなかった事、アテ自身にも非があった事も理由だろうが、何よりもゼウスの実兄である主君ハーデスの心情を慮ってのことだったのだろう。 死の神はあくまでも静かに言葉を続ける。 「我々が『自主的に』姫君をお返しすれば、この騒ぎは収まりましょう。大神ゼウスは何の痛痒も感じず、デメテル様ベルセフォネー様のお心を無視して縁談を 成立させたご自身の行動を顧みる事もなく、我々やデメテル様の納得できない感情は燻って宙に浮いたままで。我々の感情は、そんな『一件落着』は受け入れら れなかったのです」 「デメテル様の怒りも決意も相当なものです。どのような形で抗議されるのかは分かりませぬが、ゼウス様がご自身のお言葉を撤回するまであの方は徹底抗戦す るでしょう。姫君を離したくないのはハーデス様の我儘、感情が納得しないのは我々の我儘、大神の決定を拒否するのはデメテル様の我儘。三者の我儘は奇妙な 形で利害が一致しているのです」 「ええっと、兄さん達はなんだかとっても綺麗な言葉を使ってるけど…」 双子神の言葉を今ひとつ理解しきれていないらしいハーデスとベルセフォネーを見遣ったネメシスが小首を傾げた。 「女性をナメ過ぎなゼウス様にデメテル様がブチ切れて何かしでかしてくれそうなのを見て、『いいぞやれやれ!自分達の代わりに目一杯その男を困らせて痛い目にあわせてメン ツを潰してやれ!』と思ったわけね?で、ベルセフォネー様を帰さずに冥界に引きとめておけば、ゼウス様のお言葉に従ってる体を保ちつつ、デメテル様がゼウ ス様に徹底抗戦を続けるための口実を作れるし、姫君を手放したくないハーデス様のお望みも叶えられるし、色々と都合が良い…要するにこういう事ね?」 「………」 身も蓋もない妹神の言葉に、双子神は口を閉ざしたまま否定も肯定もしなかった。つまりは事実上の肯定である。 ベルセフォネーは目を見開き何度も瞬きし、膝の上で指を組みかえた。 彼らの発言内容に怒りや憤りを覚えて良いはずなのに、彼女の心を満たす感情は好奇心や小気味よさに近い。そんな自分自身にベルセフォネーが戸惑っていると、真剣に考え込んでいたハーデスが納得したように呟いた。 「なるほど。…なるほど」 何が『なるほど』なのか怪訝そうな皆の視線に気づく様子もなく、ハーデスははっきりと顔を上げてベルセフォネーを見つめた。 「べルセフォネー」 「…はい?」 「余からも改めてそなたに頼みたい。時が来るまで冥界に滞在して欲しい」 「………」 「そなたが余に会いたくないと言うのならそうしよう。顔も見たくないのなら顔を合わさぬよう努力しよう。時が来たら必ずデメテルの元にそなたを帰すと今ここで約束する故、しばし辛抱をしてもらいたい」 「え?ええ…」 冥界に滞在する事は双子神の話で否応なく了解せざるを得ないと思っていたけれど。どうしてこの方は改めてそんな事を言うのだろう?しかも、地上に返すと約束までするなんて。 戸惑うベルセフォネーの心をエリスが代弁した。 「どーしちゃったのよハーデス様?ついさっきまでベルセフォネー様を地上に帰すなんてヤダヤダ!って言ってたのに、一体どういう心境の変化?」 「余は目が覚めた。漸く気がついたのだ、ベルセフォネーに一目惚れしてから今までの余はどうかしていた。狂おしいほどベルセフォネーが愛しくて、目が眩み、正常な思考が出来なくなっていたのだ」 「………」 「余は…そなたらが相手だから正直に言うが、ゼウスの女性に対する行動を身内の恥と思っていた。見染めた女性を手に入れるためなら手段を選ばず、相手の気 持ちも考えず、自分本位に勝手な事をする…弟の唯一の、最大の欠点だと思っていた。しかし冷静になって考えれば、余がベルセフォネーに為した事もゼウスと 大差ないではないか。愛している、自分のその想いだけで無謀な事をした」 ハーデスの言葉を、双子神は静かな思いやりに満ちた目で、ベルセフォネーはただ驚いて、エリスとネメシスは興味深げに聞いていた。 「ベルセフォネー」 「…はい」 「そなたには申し訳ない事をした。驚かせ、怖がらせ、愛する母といきなり引き離して、更に無理を強いて…本当にすまないと思っている」 「え…あ…いえ…あのぅ…えっと…」 「ハーデス様が反省してるのはよーく伝わったわよ。でもさ、そこから何がどうなって『なるほど』で『冥界に滞在してくれ』になるのかが、さっぱり分からないんだけど」 再度ベルセフォネーの気持ちをエリスが代弁すると、ハーデスは考え考え話を続けた。 「余は、兄上達に叱責された事や姉上の話を聞いて目が覚めた。自分の行動が間違っていたと気付いた故、今後は愛した相手をいきなり攫うような事はせぬ。し かしゼウスは違う。兄上達も言った通り、我々が今ベルセフォネーを帰しては、ゼウスは己が間違っていたとは露ほども思わず、何も反省せぬ。そしてまた同じ ように女性の心を踏みにじる行動を起こすだろう。大神である自分は何をやっても良いのだなどと錯覚し、相手の心を慮らず気に入った女性を力づくで手に入 れ、都合が悪くなったら切り捨て、己の利益の為に望まぬ結婚を強要するだろう。メティスやテミスや姉上達やエリスやアテ、そしてアフロディーテやベルセ フォネーにそうしたようにな。しかし痛い目を見れば僅かでも考えは変わるやもしれぬ。相手の心を無視して行動を起こせば手痛いしっぺ返しを食らうかもしれ ぬと考えて、無茶な行動は慎むようになるかもしれぬ。弟の勝手で女性が辛い想いをする事が少なくなるかもしれぬ」 「要するに、『この馬鹿ゼウス、一度痛い目見て少しは女性関係自粛しろやボケ』と」 「あ…まぁ…うん…」 何だか情けない顔になったハーデスと、思わず笑いかけて慌てて真面目な顔になったベルセフォネーを見遣って、タナトスはわざとらしく咳払いした。 「…我々の勝手な都合でベルセフォネー様にご迷惑をおかけすることは大変心苦しく思います。この一件が解決した後はどのようなお叱りも受ける覚悟、どうかしばしのご辛抱を重ねてお願いしたく」 「いえ、叱るだなんてそんな。お話はよく分かりましたし、母にも考えがあるようですし…しばらく冥界に滞在する事、了解しました」 「ありがとうございます。身の回りのお世話は妹達やニンフが不都合の無いようさせて頂きますゆえ、何なりとお申し付け下さい。エリシオンの中ならばご自由に散策して下さって構いません」 「分かりました」 ベルセフォネーが頷くと、双子神は柔らかな笑みを浮かべてもう一度丁寧に礼を言った。 エリスとネメシスに付き添われて部屋に戻る途中、ベルセフォネーはどきどきと高鳴る胸にそっと手を当てた。 まるで深い湖のように澄んで美しいハーデスの瞳。 狂おしいほど愛していると言う真っ直ぐな言葉。 鉄壁の母の愛に守られて異性と接することすらほとんどないまま過ごしてきた乙女の心に、ハーデスの純粋で真摯な想いは強く強く響いた。 胸にともる甘い疼きに戸惑うベルセフォネーは、その正体は何なのかぼんやりと想いを馳せていた…。 「大人になられましたね、ハーデス様」 タナトスの穏やかな言葉に、ハーデスは膝を掴んだ手に落としていた視線を上げて彼を見た。 死の神は優しい笑顔を浮かべてくしゃりと冥王の頭を撫でた。 「……?」 「ベルセフォネー様愛しさに何もかも見失っておられるかと心配しておりましたが、ご自身の行動を振り返り姫君の心を思いやる事が出来るとは。ご立派ですよ」 「そんな…褒められる事ではないだろう、当たり前のことだ。それに…ベルセフォネーが余の元を去ってしまう未来は変わらぬのだし」 頬を染めて恥ずかしそうに微笑んだハーデスは、呟いて悲しそうに目を伏せたが。 そんな冥王にヒュプノスが穏やかに声をかけた。 「そう悲観なさる事はないでしょう。先程はベルセフォネー様がいらしたのでお話しませんでしたが、デメテル様は『ベルセフォネー自身が望むのならハーデスとの結婚を赦す』と仰せでしたよ」 「え…姉上が?余とベルセフォネーの結婚を許すと?本当にそう言ったのか?」 「厳密にはもう少し違う言い回しでしたが、発言内容はそういう事です。最大の障害は突破しました故、後は姫君の御心を動かすだけ。幸いベルセフォネー様も 冥界に滞在する事を了解して下さいましたし、予定外のハプニングは有りましたが概ね計画通りの展開です。なぁヒュプノス」 タナトスの自信に満ちた言葉を聞いたハーデスは、ヒュプノスが淡い笑みを浮かべて頷くのを見てぱぁっと顔を輝かせた。 銀の神が計画通りと言うのなら、そして金の神がその言葉に同意したのなら、ベルセフォネーを妻に娶る計画は順調と言う事だ。 ふたりの『兄』に絶対的な信頼を寄せる冥王は何も疑問を抱かず、途端にそわそわと落ち着かない様子になって両隣りに座った臣下を交互に見た。 「で…では、余は、何をすべきであろう?」 「やる気満々のところに冷や水を浴びせるようですが、ここは距離を取ってしばらくお会いにならない方が良いかと。色恋に関しては、『押してダメなら引いてみろ』『追えば逃げる、逃げれば追うの恋心』という名言がございます」 「姫君を攫ったハーデス様の行動は正に『押し』。強引な押しに姫君はまだ戸惑っておいでです。これ以上追いかけては逆効果、ここは一度引くのが得策で有り ましょう。『あれほど私を好きだ好きだと言っておいて会いに来ないとはどうしてかしら』と思わせるのです。ハーデス様が逃げの姿勢を見せれば姫君の方から 追いかけてくるやもしれませぬ」 「決して悪いようにはしませぬ故、しばらくは我々にお任せを」 「そ…そうか。そなたらがそう言うのならそうしよう。よし、余は一旦引くぞ」 臣下のアドバイスにハーデスは素直に頷いた。 …双子神は思う。 ハーデスの熱い想いと真摯な言葉に既にベルセフォネーの心は揺れ始めている。ハーデスの『余の顔も見たくないならそのようにする』と言う言葉に対して『では顔を見せないで』と言わなかったことから見てもそれは明らかだ。 しかし不器用で恋愛音痴のハーデスが積極的に動けば、大成功する可能性もあるが大失敗する可能性も大いにある。ベルセフォネーの心が良い方向に揺れている今、リスクの高い危険な行動をとる必要はない。 デメテルがとんでもない猛抗議をしたところで、ゼウスも大神としての面子が邪魔しておいそれと自身の発言を撤回など出来まい。 つまりベルセフォネーの心を動かす時間は十分にあると言う事、急いて事を仕損じてはならない…。 頬を染めて拳を握りきらきらと目を輝かせる主君の姿に、双子神は視線を合わせて微かに笑みを交わした。 ――凄まじい怒りと決意を胸にオリンポスを去ったデメテルが神としての職務の一切を放棄したのは…そして地母神に見放された地上のあらゆる植物や穀物が枯れ果て世界を大飢饉が襲ったのは、それから間もなくの事だった。 |
| 星矢部屋 | 総合目次 | SS・2012時代 | SS・神話時代 | SS・蟹座達 |
| 色々と試行錯誤しながら方向性を決めて行った第7話です。後々のエピソードに繋げる要素もポツポツと入れたり。 んで、ハーデスとベルセフォネーの結婚成立の為に双子神は水面下で色々と動くわけですが、花嫁の心を動かして射止める役はハーデス様自身にやって頂こう かなと。当初の予定では双子神が全部お膳立てして彼女の心を動かす筋書きを考えていたのですが、書き始めるとハーデス様がきちんと動いてくれて、嬉しい予 想外です。 冥府に訪れている夜の女神は、エリスだけにしようかエリスとケールにしようか悩んで、双子神の妹ネメシスに登場してもらいました。姉のケールだと影響力や行動力が強すぎて話の流れそのものにまで関わってきそうだったんで(笑)。 |