| 西暦2012年、初夏――東京。 巨大ターミナル駅の構内、待ち合わせ用の目印として建てられたとしか思えない個性的なオブジェの前で、アテナの聖闘士達は久々の再会を果たしていた。 「久しぶり!待ったか?」 「大丈夫、5分くらい前に僕らも来たとこ」 「………」 星矢の言葉に瞬は笑顔で答え、一輝は無言で頷いた。 アテナとハーデスの『最後の聖戦』とそれに伴う諸々が集結して二十数年。聖闘士を事実上引退した彼らは城戸財閥の関連会社で相応の居場所を与えられ、戦いとは無縁の日々を送っていた。そんな彼らに城戸沙織がアテナとして連絡を取ってきたのは数日前の事。 星矢は何とも複雑な顔で首を傾げた。 「沙織さんの言ってた話、本当かな?『冥王ハーデスと和解交渉をするので、護衛兼話し合いの証人として同席して欲しい』って…。いや、疑ってる訳じゃないんだけど、いまいちピンとこなくてさ」 「俺もそんな感じだ。…すっかり平和ボケしてしまったな」 「あの聖戦以来、聖闘士として何かすること自体がほとんどなかったもんね」 「だよなぁ。情けない話だけど、沙織さんの話を聞いた時に『ハーデスって誰だっけ?』って一瞬思っちまって」 「ちょ、星矢、それ平和ボケじゃなくて普通にボケなんじゃ…」 「一瞬だって、一瞬!ちゃんとすぐ思い出したぜ!思い出したんだけど…」 モゴモゴと言葉尻を濁した星矢は情けない顔になって頭を掻いた。 「あの戦いが確かにあったって実感が無いんだよな。俺も皆も姉さんも殺されそうになって大変だったって言うのに、何か他人事みたいでさ」 「大いなる女神の力であの戦いで命を落とした皆も帰ってきたから余計に実感が無いのかもね」 「それもあるだろうな」 「俺、未だにハーデスの顔も思い出せないし…やたら悲しそうで綺麗な眼をしてたって事だけは覚えてるんだけど。あっちから声かけられるまで気がつかないってーのもマズいよなぁ?」 「今回の交渉に来るのは彼の側近の双子神らしいから、いかにも『ガイジンサン』な双子がいれば分かると思うが…」 「あの仰々しい冥衣で来てくれればすぐ分かるんだけどね」 「流石にそれは無いと思うけどな…」 まさかなぁ、と言いながら三人は周囲を見回した。 この大都会では『ガイジンサン』など珍しくもなんともない。それを言えば『ニッポンジン』はもっと珍しくないので、逆に向こうが星矢達を見つけられるのかという気もするのだが…。 そんな心配をしていると、涼やかな女性の声がした。 「ごめんなさい、待たせてしまったかしら?」 声の主は今生のアテナ、城戸沙織だった。 長い髪を背中に流し、落ち着いた色合いのツーピースにほっそりした体を包み、控え目なデザインのネックレスを付けている。少女の頃の瑞々しさの代わりに 落ち着いた大人の魅力を纏ったその姿は誰が見ても『良いところのお嬢様』だ。やはり一般人とは雰囲気が違うのだろう、通り過ぎる人々がちらちらと彼女に視 線を投げて行く。 女神の登場に星矢達はほっと安堵の息をついて笑顔を見せた。 「いいえ、俺はさっき着いたところです」 「俺と瞬も10分ほど前に」 「そう、それならよかったわ」 「交渉相手の顔をすっかり忘れてて、すぐ近くに来てるのに気が付かなかったらどうしようって話してたんですよ。でも沙織さんがいれば安心ですね」 「あら、私も結構うろ覚えよ」 「え…」 悪びれた様子もなく沙織が言った言葉に三人はあんぐりと口を開けた。 その反応に女神はクスクスと笑って続けた。 「でも大丈夫。双子神の妹さんが彼らを連れて来てくれることになってるの。その妹さんと私は知り合いだから」 「へーぇ」 「……?冥界の神の妹が沙織さんと知り合いなんですか?」 「ええ。彼女は色々と事情があって神話の時代から地上で暮らしているのよ。ハーデスと和平交渉をしようと思った時に彼女の事を思い出したから、頑張って探し出して冥界との橋渡し役を頼んだの。…あ」 ちょっとごめんね、と沙織がバッグから携帯を取り出した。着信音がすぐ止まったのを見るとメールが届いたらしい。 「噂をすれば、ね。駅の東口に着いたらしいわ」 「沙織さーん!お、ま、た、せーっ!!」 星矢達が『東口はどっちだっけ』とあたりを見回した途端、ターミナル駅の喧騒などものともしない大声が響いた。 おかっぱの銀髪に赤いカチューシャを付けた娘が大袈裟に手を振りながら小走りに近づいてくる。 …彼女の後ろには銀髪と金髪の若い男。小宇宙を知らない一般人でも足を止め振り向くほどのオーラを漂わせ、振り向かせた人々の視線をその類稀な容 姿で釘づけにしてやってくる二人。その姿を見た途端…正確には彼らの纏う小宇宙を肌で感じた瞬間、二十数年前の記憶が星矢達の脳裏に鮮明に蘇った。 (言ったはずだぞ、ハーデス様の臣下とはいえ俺は神だと!) (教えておくがこのヒュプノス、短慮なタナトスとは訳が違うぞ) 冥王ハーデスの側近、死の神タナトスと眠りの神ヒュプノス。 彼らの小宇宙は相当抑えられていたが、それでも星矢達を緊張させるには十分すぎるほどの威厳と迫力があった。 「あの時は無我夢中で必死だったとはいえ、あんなの相手に良く戦ったね、僕達」 「若さゆえの怖いもの知らずな勢いだったのだろう」 「だな」 そっと瞬が囁いた言葉に、星矢も一輝も深く頷いた。 …銀髪の娘は沙織の前まで駆け寄ると芝居がかった仕草でびしっと敬礼して見せた。 「お待たせしました城戸様。ご依頼通り兄貴達をお連れしましたよっ!」 「ありがとう、エリスさん。そしてお久しぶりです、タナトス殿、ヒュプノス殿。わざわざご足労いただいてありがとうございます」 「こちらこそ、招待に預かり光栄だ。双方に益のある良き話し合いが出来ればと思っている」 「ええ、私もそう望んでおりますわ」 死の神タナトスの慇懃な返答に沙織は真摯な眼で頷いた。 金色の神、ヒュプノスは星矢達に曖昧な視線を向けて口を噤んだままだ。かといって星矢達も特に何か言うべき事も見つからず、タナトスも沙織も言葉を続けず、緊張交じりの沈黙が流れた時。 エリスが気まずい空気をブチ壊すように兄と沙織の間に割り込んだ。 「ねぇねぇ沙織さん。話は変わるんだけど、兄貴達の格好どう思う?私が見立てたんだけど、結構イケてるよね?少なくとも変じゃないでしょー?」 エリスは兄達の腕を掴んでふたりを引き寄せると、タナトスとヒュプノスを交互に見上げて意見を求めた。 双子神が纏っているのはあの仰々しい冥衣などでは決してなく、素人目でも高級品だと分かるダークカラーのスーツだ。タナトスはシャツを出してネクタイも 緩く結び、軽く開いた襟元や両手指にはシルバーのチョーカーやバングル、指輪をジャラジャラ付けて、だらしなさ寸前の絶妙のかっこよさで着こなしている。一 方のヒュプノスは襟もネクタイもきちんとしめてアクセサリーと言えばフレームの無い眼鏡だけだが、タイピンやカフスボタンのセンスがいちいち良い。 彼らの事を知らなければ、外国のファッション雑誌のモデルかハリウッドの俳優かと思うだろう。 良い意味で空気を読まないエリスに、沙織は緊張が解けたのか自然な笑顔で頷いた。 「ええ、とてもよくお似合い。見惚れてしまうほど素敵だわ」 「だよねだよねー?兄貴達ってば、『本当にこれが地上の一般的な服装なのか、実は珍妙な格好なんじゃないか』って疑うんだもん。花の女子大生が合コン行くのも断って用意してあげたっていうのに、その言いぐさは無いじゃんよー」 「アテナは『似合っている』とは言ったが『珍妙ではない』とは言っていないぞ」 「まだ言うか!周り見てよ、おんなじよーな服着た男の人がたくさんいるでしょーが!」 「しかし一般的な服装ならこんなにもすれ違う者に凝視されぬと思うのだが…」 「我々の後をフラフラついてくる奴もいたぞ。何だったのだ、あれは?」 先ほどのエリスの大声と『只者ではないオーラ』をバリバリ放つ容姿端麗な神々のせいで、これでもかと言うほど彼らは注目を集めている。 恐らく双子神は地上で目立ちたくないから無難な服装を選んだのだろうが、残念ながら効果は無かったようだ。 怪訝そうな顔の双子神の姿に、沙織は柔らかな表情で告げた。 「無理もありませんわ。服装は一般的でも、お二方の小宇宙は一般的ではありませんもの。ねぇ、皆?」 「うむ。普通の人間でもその小宇宙を感じたら振り向くぞ」 「振り向けば人並み外れたイケメンふたりだもんねぇ…そりゃマジマジ見ちゃいますよ。なんかあそこで写メとってる人もいるし」 「むしろ変な格好で来た方が『何だオカシイ奴か』で流されて逆に注目を浴びなかったかもなぁ」 「………。我々の小宇宙はハーデス様の力で封印してきたのだ、これ以上抑えろと言われても無理だぞ」 星矢の言葉をスルーして、妹の見立てを疑っていた事もさりげなくウヤムヤにしてタナトスは眉根を寄せた。 何か言いたげなエリスは無視してヒュプノスが頷いた。 「そうだな。…すまぬがアテナよ、あまり人目の多くない場所に移動したいのだが」 「ここで長々と立ち話も宜しくありませんものね。車を回させますから地下の駐車場に行きましょうか」 「んじゃ、私はここで」 「ありがとう、エリスさん」 「あれ?一緒に来ないのか?」 星矢が尋ねると、エリスはむっとした顔で両手を腰に当てた。 「あのねぇ聖闘士さん、私は聖戦とは無関係な女子大生なの。とってもお人好しだから沙織さんのパシリになってあげたけど、最後までついてってあげる義理も義務も無いのよ。第一、これから医学部学生との合コンがあるんだから」 「あ、そ…」 「争いの女神が合コン…」 「荒れそうだな」 「うっさいわね、大きなお世話よっ!じゃー兄貴達、結果報告よろしくね!あと報酬も忘れないでよ!」 「分かった分かった」 じゃーねー、と大袈裟に手を振るエリスを見送って、一行は駅の地下にある駐車場に向かった。 巨大ターミナル駅とはいえ、地下の駐車場は人影もまばらで神々が注目を集め過ぎて困ると言う事は無かった。 迎えの車が来るのを待ちながら星矢はそっと横目で双子神を見上げた。 再会して小宇宙を感じその姿を見て声を聞いているうちに当時を思い出してきたのだが…彼らはこんな若造だったろうか。もっとずっと大人びた姿だったような気がしていたのだが。 (俺が大人になったってことなのかな、これって) 何しろあれから二十年も経ったのだ。少年だった星矢達も成長して、世の中の色々な事が見えて来て、あの頃は到底受け入れられないと思っていたデスマスクやアフロディーテの主張も(共感は出来ないが)多少は理解できるようになった。 そして、『絶対悪』だと信じて疑わなかった冥王ハーデスにも、きっと彼なりの『正義』があったのだろうと今なら思える。今ここにいる死神タナトスだって、ただ邪悪なだけの神ではないのかもしれない。彼もまた自身が信じる正義のために戦っていたのかもしれない。 世の中には人間ではどうしようもない理不尽があって、その理不尽を冥界で神が罰してくれるのだと信じることで救われる人もいるだろう。そんな人々にとってはアテナではなくハーデスが正義に見えるのかもしれない…。 そんな事を考える星矢の視線に気付いたのか、銀色の神は片眉をそびやかした。 「何か言いたい事でもあるのか?天馬星座」 「あ、いや…」 言いたい事と言うか聞いてみたい事は無くもないが、彼らの信ずる正義なんて改めて聞いてどうすると言う気もするし、好奇心を満たす程度の雑談を積極的にしたい相手ではない。これから和平交渉をするのに、下手な事を言って険悪ムードになってもまずいし…。 星矢が曖昧に言葉を濁して眼を伏せると、タナトスもフンと鼻を鳴らして視線を逸らしたが。 ヒュプノスがふと思い出したように兄神を見遣った。 「そう言えばタナトスよ、お前は天馬星座に話があるのだろう」 「………」 タナトスは唇を捻じ曲げて弟神を睨んだ。 明らかに不機嫌になった兄神など素知らぬ顔でヒュプノスは淡々と言葉を続けた。 「こういう話は先にしておいた方が良いのではないか?後になればなるほど話し辛くなると思うが」 「うるさいぞ、ヒュプノス!そんなことお前に言われずとも分かっているわ!」 「そうか、それはすまなかった」 ヒュプノスはしれっと答えて眼を逸らした。タナトスは仏頂面で眉間に皺を寄せていたが、何か心を決めたように短く息を吐いて星矢を見た。 ひんやりと真剣な銀色の眼差しを、星矢は意識して真正面から受け止めた。 「天馬星座よ」 「な…何だよ」 「………。聖戦とは無関係なお前の姉を殺そうとした事、悪かった。すまなかったと思っている」 「へ?」 一体何を言われるのかと身構えていた星矢は、予想の外側の更に外側のそのまた裏側を行くようなタナトスの言葉に耳を疑った。 今こいつ、何て言った?『姉を殺そうとして悪かった』?『すまなかった』? え?それってつまり、姉さんを殺そうとした事を俺に謝ったってことか? 星矢は眼を丸くして口をポカーンと開けたまま死神をまじまじと見つめた。 タナトスの態度は相変わらず傲岸不遜で、言葉は謝罪の範疇に入るものだったがとんでもなく上から目線だし、謝られたという実感が全くない。 聞き間違いだろうかと沙織と瞬と一輝を振り返ったら、彼らも星矢と同様に驚愕を顔にはりつかせたままタナトスを見ている。 死神様の謝罪の言葉は事実らしいと分かったが、あまりの驚きで星矢の思考回路は完全に停止していた。何と答えるべきか見当もつかなくて黙っていると、タナトスはどこか寂しそうに笑った。 「フ…やはりたった一人の姉を戯れに殺そうとした事は許せぬか。それとも俺のような二流の神の謝罪は受け入れるに値せぬか?」 「え、……」 「まぁ良い。お前に謝罪したのは俺自身のけじめの為、赦されたいなどと思っていた訳ではない。俺は忌まわしい死神だ、人間に嫌われる事など今に始まった事ではないしな…別に構わぬ」 自嘲気味に言葉を吐いてタナトスはふいっと星矢から眼を逸らした。 その端正な横顔にどこか悲しみの色が見えた気がして星矢がますます戸惑っていると、タナトスの隣にいたヒュプノスの静かな金色と目が合った。 「天馬星座よ。勝手な頼みだと承知はしているが、兄の謝罪を受け入れてはもらえぬか?神聖衣を纏っていたとはいえ人間であるお前に敗れた事も、『死を弄ぶだけの二流の神』と言われた事も、タナトスはかなりこたえているのだ」 「余計な事は言うなと言っただろう、ヒュプノス!」 「………」 兄神に睨まれて弟神は嘆息交じりに口を閉じた。 ヒュプノスの発言も意外すぎる内容で、ますます呆然としている星矢の前にワンボックスが停まった。 運転席からスキンヘッドの厳つい男が顔を出した。城戸家の使用人、辰巳である。 「お嬢様、お客様、お待たせいたしました!いやもう、この駐車場は分かりにくいっすね、一方通行やら侵入禁止やら…随分迷ってしまいましたよ!ささ、どうぞ」 車のドアが開いたが、誰も動かずに黙っているので彼は怪訝そうな顔になった。 …が、ただ事ではない雰囲気は察したようで、運転席から顔を引っ込めてそーっと窓を閉めた。 硬直した沈黙を破ったのは沙織だった。 「…星矢」 「はっ、はいぃ!?」 「神であられるタナトス殿が、ご自身の行為を謝罪されたのですよ。黙っているのは失礼でしょう?」 「あ、ああ…そ、そうですね。謝罪、されたんですよね」 あんまりにも偉そーな態度だったから本当に謝罪されたのか疑ってたけど、沙織さんがそう言うんだからタナトスは謝ったんだろう。多分。 星矢は適切な言葉を探しながら銀色の神に向き直った。 「ええと…タナトス、サマ」 「………」 「まさかあんたに謝罪されるなんて思ってなくて、頭がフリーズしてて…あー…すいません。姉さんの一件なら俺はもう気にしてないし、姉さんが聖域にいるっ て分かっただけで、何て言うか、あの時はすごく希望が持てたし。えーと、つまりだ、あんたの謝罪はちゃんと受け入れた!今この瞬間綺麗さっぱり水に流した から、だからなんだ、その、気にしないでくれ…って言うのも、変か。ええと、それと…」 タナトスの眼差しが多少和らいだ気がして、ホッとした星矢はさっきまでよりも落ち着いて発言内容を考える事が出来た。 「こっちこそ、神様ぶっ飛ばしたり、二流とかって悪口言って、その上、そちらのお母さんに助けてもらったりして…色々と、すいませんしたッ!!」 直立不動の大声で謝って星矢は勢いよく頭を下げた。 その姿に釣られたように一輝と瞬もぺこりと頭を下げて、沙織も恭しく頭を下げた。 「天馬星座に便乗する形になってしましますが、私も聖闘士達の無礼をお詫びいたします。そして母神様の寛大な対応に、ゼウスの娘として心から感謝いたしますわ」 「………」 今度はタナトスが眼を丸くして絶句する番だった。 柔らかな笑みを浮かべたヒュプノスに軽く小突かれて、どこか気恥かしそうに彼は口を開いた。 「まぁ…聖戦は敵味方に分かれた戦争だった故な、無礼があるのは致し方の無い事。だが互いに非を認め謝罪したことでもはや我々の間に禍根はないと、そう解釈して良いのだな?アテナよ」 「ええ。あなたからそのお言葉を聞けた事を嬉しく思いますわ」 沙織は曇りの無い笑みを見せて右手を差し出した。 冥王ハーデスを討ったその手を、死神タナトスは照れくささを隠すような仏頂面で、しかし躊躇い無く握り返した。 聖域と冥界の間に存在した冷たい壁が崩れた気がして、星矢ははっきりと嬉しくなった。嬉しくなった勢いで先ほどよりずっとリラックスした態度で口を開いた。 「ところで、真面目に和解した後でこんなこと言うのもどうかなと思うんですけど」 「ちょ、星矢?何を言い出す気?」 「俺、タナトスサマのこと『死を弄ぶだけの二流の神』なんて言いましたっけ?」 「……何?」 「いやほら、あの時はマジで必死でさ、神聖衣が発動して一発逆転!みたいな雰囲気でなんかもうイケイケな気持ちになってたから、何を言ったかなんて碌に覚えてなくて…。俺、本当にそんなこと言ってた?」 へらりと笑いながら振り返ると、一輝と瞬がジト目で星矢を見ていた。 「………。言ってたよ、思いっきり」 「ああ、言っていた。『所詮』二流とか、相当失礼な事をな」 「そーなのか。あ、でも、俺は本気であんたを二流の神だと思ったわけじゃないぜ?子供が喧嘩して『お前の母ちゃん出ベソ!』って言うようなもんだから、気にしないでくれよな」 「俺は別に気にしてなど…。大体どうして貴様、神の俺に対してタメ口なのだ?」 「いいじゃねーか。そんなちっさい事気にするなよ、神様だろ?」 「………」 「一本取られたな、タナトスよ」 「じゃあこれで一件落着って事で、皆そろそろ乗りましょうか。こんなところでずっと車を停めてたら邪魔になるしね」 「だな!そろそろ腹も減ってきたし、さっさと行こうぜ」 和平交渉は食事の席で、ということになっている。空腹のせいもあってさっさと車に乗りこんだ星矢達は、きちんと沙織をエスコートした双子神に何とも言えない目で見られて顔を赤くする羽目になったのだった。 |
| 星矢部屋 |
総合目次 | SS・2012時代 |
SS・神話時代 |
SS・蟹座達 |
| 無印青銅のキャラを把握しきれてなくて話し方とか口調とか悩みました…。テンマ、アローン、輝火が会話してたらこんな感じになるかな、と考えながら頑張りました。沙織さんは色々なファンサイトの影響を受けてる気がします。それと、「覚醒」でちらっと触れた、タナトスが星矢に謝罪する話です。大まかな流れ は頭の中になったのですがやはり文章にするのは難しいですね…。タナトスも星矢も素直で根に持たない性格なので、お互いに謝罪したらそれ以上ウジウジ言わ ない気がします。沙織さんが妙にお嬢様口調で話しているのは、普通の丁寧な喋り方だと瞬と区別がつかないためです。 |