| 「いいえ。ハーデス殿が双子神だけをお供に聖域に来て、私に一騎打ちを申し込んだのです」 「あれ?じゃあどういう経緯で神聖衣を纏った天馬星座がハーデスの肉体に傷を付けたんです?」 「アテナ不利と見た天馬星座がハーデス様とアテナの間に割り込んだのだ。最初に一騎打ちだと言ったにも関わらず、な」 「…昔っから天馬星座って人の話を聞かない考え無しだったんだね…」 「え…えーと、他の黄金聖闘士とかはどうしてたんだ?大将同士の決闘を手を出さずに見てたのか?」 「最初に神同士の一騎打ちで決着をつけようと申し出て、アテナも了解したのに、納得できんとわらわら出てきたのでな、俺とヒュプノスで排除した。つまり大将戦が始まる前に黄金どもは戦闘不能になっていて、その時まともに動けたのは青銅聖闘士くらいしかいなかったのだ」 「事情はどうあれ天馬星座の乱入でハーデス様は傷を負った。神であるアテナには暗黙の了解が通じるが、追い詰められた人間は何をするか分からぬ。ハーデス 様の身に万が一の事があってはならぬ故、我々は冥王の敗北を認め撤退した。…それが最初の聖戦。その反省を生かして、ハーデス様の魂は心の清らかな少年の 器に入れ、冥闘士を準備して挑んだのが二回目以降の聖戦だ」 ヒュプノスの言葉に、沙織が不意にクスリと笑った。 今の話のどこに笑う要素があったのかと怪訝そうな皆の視線を受けた彼女は、実は…と口を開いた。 「二回目の聖戦の宣戦布告は、こーんな分厚いレポート用紙の束で届いたの。それを見た時、私は思わず笑ってしまって、即座にベルセフォネーを呼んだわ」 こーんな、と沙織が指で示したその厚みは辞書かと思うほどだ。 双子神は何とも微妙な顔で沈黙し、聖闘士達は首を傾げた。 「何をどう書いたらそんな分厚くなるんです?」 「中身はね、冥王軍108の冥闘士の紹介文だったわ。まず三巨頭、そして部下の冥闘士達がどんな名前でどんな魔星があってどんな能力を持っているか、事細 かに書かれていたの。私の聖闘士達の情報は冥界側は全て把握しているから、冥界側も情報を開示するのが礼儀とか、そんな但し書きがついて…その時私は思っ たの。ああ、ハーデス殿は本気で地上が欲しいんじゃなくて、ベルセフォネーに対してパフォーマンスしつつ冥闘士に冥妃捜索をさせつつ寂しさを紛らわすゲー ムがしたいんだなって」 「………」 アテナの推測はまさに図星だったのだろう、双子神はどこかバツの悪そうな顔でコーヒーを啜った。 「で、それを見たベルセフォネーさんはどんな反応だったんです?」 「頭を抱えてたわ。『いずれ目的と手段を取り違えると思ってたけど、まさか二回目からやるとは思わなかった…』って」 こんな感じでね、と沙織はテーブルに肘をついて頭を抱えてベルセフォネーの口調を真似て見せた。 「なんかもう眼に浮かぶわね、タナトスが真っ先に『アテナに対抗してこっちも人間の兵士を準備しよう!300人くらい!』って言って、ハーデスがそのアイ デアに『おおっ!』って感激して、ヒュプノスが『88人しかいない聖闘士に300人も兵士を用意して恥ずかしくないのか』とか冷静〜に突っ込んで、ハーデ スが『それもそうか』って言って、タナトスが渋々『じゃあ100人くらいで…』って妥協して、男三人であーでもないこーでもないってはしゃいで盛り上がっ て決めたんだわ。お兄ちゃん達が何か言うたびに、ハーデスが右向いて頷いて左向いて感心して。本来の私を探すって目的はほったらかしで!何よ、何なのよ、 私だけ仲間外れにしてそんな楽しそうなことして、ずるい!ずるいずるーい!!」 「………」 「おーい神様、何か反論しないのかー」 「何かさっきまでのとても良い話が色褪せて行く気がするな…」 星矢や一輝の言葉には無反応で、双子神は凄まじく微妙な顔になって無言を貫いている。 そんな冥王の側近にはお構いなしで沙織は楽しそうに話を続けた。 「ベルセフォネーがあんまり愚痴るから、私が『もう出て行ってあげれば?』って言ったら、彼女何て答えたと思います?『新しいおもちゃを自慢しに友達の家 に行ったらそこに自分のお母さんがいて、そんな馬鹿な遊びしちゃダメ!って怒られたらものすごーくガッカリするでしょ?それはちょっとかわいそうだもの。 悪いけどアテナ、ハーデス達の気が済むまで戦争ごっこに付き合ってあげて。しばらくしたら我に返って本来の目的を思い出すでしょ』って」 「………。あのさ、冥妃様ってあんたらのオカンみたいなポジションだったのか?」 「…ベルセフォネー様がおっしゃっていた事はそれで全部か?」 暴露話はそろそろ勘弁してほしそうな様子の双子神に、沙織はこれが最後ですわ、と微笑んだ。 「あなた方に伝えててくれと言われた事があります。『ヤキモキしながらハーデスが迎えに来るのを待ち続けるのも辛いだけだし、私は次から女神の力も記憶も 封印して転生するわ。戦争ごっこに飽きたら、アテナに頭を下げてでも私を見つけてね。見つけてさえくれれば手段と目的を取り違えて私をほったらかしてた事 は怒らないでおいてあげる』…だそうですわ」 「…結局我々は、貴女に頼って冥妃様を見つける羽目になってしまった訳か」 金色の神の言葉に、銀色の神はふと何かを思い出した顔になった。 「いや待てヒュプノス、重要な事を忘れるな。先ほどアテナは言っていたではないか、『ベルセフォネー様と思しき人物を見つけたが確証はない、人違いの可能性がある』と。だから人違いだった時はどうするか決めるはずであろう。何故こんなにも話が逸れてしまったのだ」 「そういやそうだったな」 「見事な話の脱線だったな」 「そもそも星矢がちゃんと予備知識と一般常識を仕入れて来てれば、神様に長々と説明をしてもらう事もなく、ハーデス様がバ…天然だとか冥妃様が毒舌のオカン…じゃない、包容力のあるツッコミ系の女性だとか、そういう話が暴露される事もなくすんなりここまでこれたのにねぇ」 「お前もさりげなく毒舌だな…」 「それで、私が見つけたあの方が別人だった場合ですが」 また逸れかけた話を沙織が一気に元に戻した。 「可能な範囲で私達もベルセフォネーの捜索に協力する、という条件を提案しますわ。具体的には聖域の聖闘士達や城戸財閥の捜索への参加、そして冥界の関係者による捜索を妨害しない事の二点です。如何でしょう?」 「そこまで協力してもらえるのならこちらとしても和解の条件として異存はない。約束通り地上からは手を引こう」 「…ありがとうございます」 ほっとしたように微笑んだ沙織は、店のスタッフを呼んで3つのグラスと緻密な細工が施された金色の水差しを用意させた。 星矢はそれが意味する正確なところは知らなかったが、双子神の表情からして神々の誓いの儀式に使うものなのだろうと察していた。 略式ですけれど、と断って沙織が手づから水差しからグラスに水を注ぐと、双子神は厳かな表情で立ち上がった。 一つ目のグラスをタナトスが、二つ目をヒュプノスが、そして最後の三つ目をアテナが取った。 「死を司る神タナトス、地上と人間達に危害を加えぬ事を」 「眠りを司る神ヒュプノス、地上と人間達に危害を加えぬ事を」 「知恵と戦いを司る神アテナ、冥妃ベルセフォネーがあるべき場所に帰る事に協力する事を」 「「「…スティクスに誓う」」」 三柱の神が水の入ったグラスを掲げ、優雅に水を飲み干す姿はまさに芸術のように美しく、聖闘士達はただ言葉もなく見惚れていた。 誓いの儀式を終わらせた沙織は、では…と双子神と聖闘士達を交互に見た。 「皆様、まだ時間は大丈夫ですよね」 「ああ。……?」 「僕達も特に予定とかはないですけど」 「これからどこか行くんですか?」 「ええ。私のお勧めの、ケーキやお菓子がとっても美味しい洋菓子屋さん。知る人ぞ知る隠れた名店ですから、妹さんに教えて差し上げればきっと喜んでくれると思いますわ」 「そうか…そう言えばエリスへの礼を何も用意していなかったな」 「心遣い、感謝する」 「でも、エリスがその店知ってたら意味がないんじゃ?」 「大丈夫、絶対知らないはずです」 沙織の意味深な微笑みと言葉の意味を皆が知るのは、それからしばらく後の事…。 神々と聖闘士を乗せた車は賑やかな街中を通り過ぎ、大通りを外れて走ること数分。 城戸沙織お勧めの『知る人ぞ知る名店』は、そこに店があると知らなければ気付かず素通りしてしまうほど控え目な店構えだった。 さりげなく店の前に建てられた看板には『エルミタージュ』と書かれている。 車を降りた星矢はその看板を見て首を傾げた。 「エルミタージュ…なんか、どっかで聞いたことあるような名前だな」 「ロシアの美術館の名前じゃないか?日本語で『隠れ家』という意味の」 「隠れ家だけに隠れた名店ってわけか」 「あの…沙織さん、せっかく来たけどお店閉まってるみたいですよ?」 瞬が店のドアにかかった『CLOSED』の札を指すと、沙織はにっこり笑って見せた。 「大丈夫。きちんと予約を入れて今日は貸し切りにしてもらってるから」 「へー。予約や貸し切りが出来るんだ」 「結婚式の二次会とかで利用するお客さんもいるのかな?」 元聖闘士達は他愛もない会話をしていたが、双子神は店に到着した時から黙り込んだままだ。 沙織は彼らを振り返り、意を決したような顔でドアを開けた。 カランカランカラン…ドアに付いた鈴が涼しげな音で鳴って来客を知らせると、店を仕切るレースのカーテンを開けて若い女性が姿を見せた。 「…城戸様」 「こんにちわ、秋乃さん。…皆さん、紹介しますわね。こちら、エルミタージュの店長の龍神秋乃さん。ちょっとしたご縁で知り合って、公私ともに親しくさせて頂いてるの」 「初めまして、龍神秋乃と申します。城戸様からお話は伺っています、ようこそいらっしゃいました」 紹介された女性は砂糖菓子が溶けるような笑顔で挨拶した。 年齢は星矢達より一回り若いくらいか。腰まで届く緩く波打つ淡い茶色の髪、濃い茶色の睫毛、うっすらと青みがかった瞳、可憐な唇、薄紅色の頬…非の打ちどころのない可憐な容姿は妖精や女神と例えても大袈裟ではあるまい。 「こ、こちらこそ初めまして。俺、星矢って言います」 「瞬です」 「一輝です」 予想外の美女の登場にぽうっと頬を染めながら星矢達は挨拶を返したが、双子神は龍神秋乃を食い入るように見つめるばかりで何も言葉を返さない。 いくら相手が人間とは言え、アテナが紹介した女性なんだから挨拶くらい返せばいいのに。それとも神様もこの女性が綺麗過ぎて言葉を失うほど見惚れてるんだろうかと星矢が思った時。 タナトスが震える声で呟いた。 「ベルセフォネー様…!」 「え?」 双子神は秋乃に一歩近づき、近づきかけた足を止め、唇を噛み、眼を伏せ、彼女の前に片膝をついて傅くと深々と頭を垂れた。 予想外の行動に星矢達はあんぐりと口を開け、神に傅かれた秋乃も驚きと戸惑いで眼を丸くしている。 ベルセフォネーと呼んだ彼女の足元に膝まづいた死と眠りの神は、震える声を絞り出した。 「長らく…長らくお探し申し上げておりました。我らが冥界の女王、ベルセフォネー様」 「よもや、このような形でお目にかかることになろうとは…全ては我等の力不足故、お詫びを申し上げる言葉も見つかりませぬ」 「え…あ、あの…」 血を吐くような悔恨の言葉を告げてただ頭を垂れるだけの神々を見て、秋乃はオロオロと沙織を見た。 沙織が優しく微笑んでそっと頷くと、彼女は両手をぎゅっと握って一度深呼吸し、床に膝をついた。傅き俯く神々の顔を覗き込むように。 「あの…私が『女神の記憶を完全になくしてしまっている』ということは、城戸様からお聞きなんですよね?」 「存じております」 「じゃあ、顔を上げて、立って頂けませんか?このままじゃ、すごく、お話がしにくいです…」 「………」 双子神は唇を開いたが、何も言わないまま口を閉じた。 きっと彼らは自分自身が情けなくて許せないんだろうな、と星矢は思った。 本来の目的を置き去りに戦ごっこに興じた結果、アテナの力を借りてベルセフォネーを見つける羽目になって、まさに『合わせる顔が無い』のだ。 龍神秋乃にも神々の心情は察する事が出来たのだろう。少し困った顔のまま考え考え口を開いた。 「『私』を見つけられなかった事でご自身を責めないで下さい。仮に私に記憶があったとしても同じ事を言ったと思います。過ぎてしまった事を悔いるより、これからの事を相談しましょう、って」 「………」 「城戸様から『あなたは冥王ハーデスの妃ベルセフォネーの転生体らしい』と言われてから、ずっと考えていました。『前世』の記憶が無い私は、あなた方に 会ったらどんな話をしたらいいのか…たくさん、考えました。私は、あなた達と、話がしたいです。あなた達が私を冥妃と呼ぶのなら、私の言葉に従ってくれま すよね?だからお願いします。顔を上げて、立って下さい」 「………」 二柱の表情が僅かに動いた。 記憶はなくとも、女神の小宇宙は無くとも、龍神秋乃の態度も纏う空気も臣下に対する冥妃のそれだった。 双子神は改めてもう一度深々と頭を垂れ、仰せの通りに…と答えて立ち上がった。 秋乃は漸くほっとした笑みを見せたが、呵責の念を『冥妃の命令』で無理やり押し込めた冥王の臣下達には、まだぎこちなさが残っていた。 そんな彼らの心情を多少なりとも慮った星矢は、雰囲気を和らげようと努めて明るく口を開いた。 「しっかし立派なお店ですねー。そんなに若いのに店長やってるなんて、龍神さんって凄い人なんだなぁ」 「超がつく甘党の酔狂なお金持ちにヘッドハンティングされたんです。だから店長と言っても名前だけなんですよ」 「ヘッドハンティングの時点で既に凄いと思いますけど…」 「そうよ、秋乃さんは冥妃の転生体だけあって凄い人なの。作るお菓子は頬が落ちそうなほどおいしいし、世界的名探偵の助手として犯罪解決に貢献した事もあ るし、街で痴漢やひったくりに遭ったら犯人逮捕に協力して刑事さんとも顔見知りになるくらいテコンドーも強くて、まさに文武両道才色兼備の女性なんだか ら」 「沙織さん、前半はともかく後半は余計ですっ」 「…何か、テコンドーの話題は強引にねじ込んだ感があるが…」 一輝が首を傾げると、沙織は意味深ににっこり笑い、秋乃は慌てて両手を振った。 「その話は触れないで…じゃなくて、気にしないで下さい!」 「気にしないでって言われると気になるのが人の性」 「沙織さんがわざわざ強いって言うんだから本当に強いんでしょうね。テコンドーは護身術としても女性に人気だって言うし」 「そう聞くと余計気になってきたなぁ。せっかくだし、いっちょ俺に技を入れて下さいよ」 星矢が言うと、沙織はますます意味深な笑みを深くした。 彼女が不自然にテコンドーの話題を入れてきたのは、こういう展開にしたかったからでは…という星矢の読みは正しかったようだ。『拳で語り合って親睦を深める』ではないが、双子神の緊張をほぐすにはちょうどいい茶番になるだろう。 沙織の意図を察しつつも、申し出を受けるかどうか秋乃は迷っている様子だったので、星矢はあくまでも爽やかな笑顔で両手を広げた。 「俺はそこの神様達を倒したアテナの聖闘士なんですよ?…まぁ二十年前の話だけど。でも、女性の攻撃も受け切れないほど鈍ってない…はずだから、遠慮も手加減もいりませんよ。本気でどーぞ!」 そのセリフにタナトスの頬がぴくっと引き攣った。流石に聞き捨てならなかったらしい。 複雑な仏頂面になった死の神を見遣った秋乃は、薄く青みがかった瞳をくるりと回して沙織を見た。 「…アテナさん。冥妃の転生体である私が臣下の借りを返すのはアリでしょうか」 「アリだと思います」 「彼のお言葉に甘えて遠慮も手加減もしなくていいでしょうか」 「いいと思います」 どこかの漫才コンビのようなやり取りに秋乃が頷いて一歩前に出ると、星矢以外の皆は邪魔にならないよう壁際まで離れた。店の備品が壊れないようにと、沙織はご丁寧に結界まで張った。 素人相手に沙織さんも大袈裟だな。ま、指先で受け止めても場が白けるし、ここは空気を読んで蹴りを食らって吹っ飛ぶのがオトナってもんだぜ。 星矢がそんな事を考えていると。 「行きますね」 さらっと言った秋乃が予想外の速さで星矢の間合いに踏み込んできた。 え、と思った瞬間、秋乃が全体重をのせた蹴りを星矢の鳩尾にストレートに叩き込んだ。想定よりもはるかに重い攻撃に怯んだ直後、横っ面に回し蹴りを食らった。 完全に不意をつかれてまともに食らった星矢は、沙織が張った結界に叩きつけられ思わず呻き声を出した。 ちょ、待った、何だこの攻撃は!俺が鈍ってるのを差し引いても素人のレベルじゃないぞ!? 「せ…星矢!」 やはりこの展開は予想外だったらしい瞬が星矢に駆け寄ろうとした、その直後。 星矢を蹴り飛ばした足を軸にして、秋乃が振り向きざまに瞬に手加減なしの回し蹴りを叩きこんだ。 ドカッ!! 余りにも予想外すぎる攻撃に、流石の元聖闘士も受け身の体制もとれず反対側の結界に叩きつけられ、呆然と床に座り込んだ。 蹴り飛ばされた星矢と瞬と、それを見ていた一輝は口を半開きにしてただ呆然とし、双子神は何とも微妙かつ複雑な顔をし、沙織だけが予想通りと言う顔をしていた。 予定外に瞬まで蹴り飛ばした秋乃は一瞬遅れて我に返った。 「あっ…ご、ごめんなさい!あの、私、戦闘モードに入ってる時に後ろから近付かれると反射的に攻撃する癖があって、ええと、大丈夫、ですか?」 「え…ええ、まぁ、元聖闘士ですから…ちょっとびっくりして痛かったけど、それだけです。うん、平気ですよ、全然」 「背後に立たれると攻撃するって…ゴルゴ13ですかあなたは。つか、後ろから近づいてきたのが犯罪者じゃない一般人とか、警察官だったらどうするんですか」 「だから言ったでしょう?秋乃さんは犯人逮捕に絡んで警察の方と顔見知りになってるって」 「ああ…そーゆーワケ…」 完全に油断して彼女を侮っていたとはいえ、大真面目にぶっ飛ばされて星矢のプライドは少なからず傷ついていた。 二十年前、俺にぶっ飛ばされたタナトスサマもこんな気持ちだったのかなぁなどと遠い目をしていると、眼の前に手が差し伸べられた。手の主はまさにそのタナトスサマで、星矢は眼をぱちくりさせた。 「あ…ど、どーも…」 モゴモゴと礼を言いながら有難く差し伸べられた手に掴まって立ちあがると、反対側に吹っ飛ばされた瞬がヒュプノスに差し出された手に掴まって立ち上がるのが見えた。 何だか居心地悪そうな顔をしている秋乃に半ば呆れたような眼をやって、タナトスはふっと息を吐いた。その表情は確実に先ほどより緊張が解けて柔らかくなっている。 「今ので確信した…ああいや、会った瞬間に99.9%の確信があったが今ので120%になったと言うべきか。この方は間違いなく冥妃ベルセフォネー様だ」 「無駄な肩の力が抜けたし、冥妃様の記憶があれば蹴りを食らっていたのは我々だったかもしれぬし、その点でもお前達に感謝すべきなのだろうな」 「へっ?何であんたらが蹴られるんだ?」 「アテナに頼ってでも探し出せば、目的と手段を取り違えてたことは怒らないって冥妃様は言ってたんでしょう?」 「『怒ってない、ほんとに全然怒ってないから。でもとりあえずそこに立って歯を食いしばってね☆』と笑顔で言って本気の右ストレートを叩きこんでくる方だ、ベルセフォネー様は」 何かを悟りきったような目のタナトスの言葉に、ヒュプノスが至って真面目な顔で頷いて。 ひょっとしてこいつら、冥妃様に殴られた経験あるのか?と星矢は思ったのだった。 |
| 星矢部屋 |
総合目次 | SS・2012時代 |
SS・神話時代 |
SS・蟹座達 |
| 趣味満載のエピソードも漸くここで一区切りかな…と言うとこまで来まし
た。完結のめどはまだ付きませんが、ピクシブ投稿版とサイト公開版でここまで違う事はもうないかな、と思っています。んで、ちょい前のエピソードで告知し
た気もしますが、次のエピソードから当サイトオリジナルのキャラが登場します。前情報なしでも読める話にするつもりですが、デスノコーナーの小説「パティ
シエ」と「セカL・If」をお読みになっておくとより良いかなと思います。 以下、テスト段階では沙織のセリフに入れてたんですが流石に余分だろうと思ってカットした部分です。↓ 「でね、レポートを見たベルセフォネーが、『三巨頭のワイバーンとグリフォンとガルーダってタナトスとヒュプノスが実家で飼ってるペットじゃないの!手抜 きし過ぎよ、もうちょっとひねりなさいよね!次に会ったらあいつらに伝えといて!』って。ああそれから、『タナトスも108の魔星を造るならちゃんと半分 受け持ちなさい!途中で飽きたからって残りをヒュプノスに押しつけちゃダメ!お兄ちゃんでしょ!』って言ってたわ」 108の魔星のうち天○星はタナトス、地○星はヒュプノスが作ったと当サイトでは設定しています。で、当初はタナヒュプがそれぞれ54ずつ受け持つ予定 だったのが、30か40作ったところでタナトスが飽きて放り出して、仕方なくヒュプノスが残りを全部作ったという裏設定があります。 前回のヒキで、ここで登場するオリキャラがどういう立ち位置かは予想できただろーなーと思うのですが…冥妃ベルセフォネー(の、転生体)こと龍神秋乃 (タツガミ・アキノ)の登場です。彼女は私がデスノで同人活動やってた頃に作ったキャラで、軽い気持ちで付けた「アキノという名前は苗字かファーストネー ムか分かりづらい」という設定が非常に便利に使えて、ネウロで同人やってた頃にも出て来てもらったキャラです。その分思い入れもキャラ設定もかっちり決 まってて動かしやすく有難い存在です。現代の彼女がどういう存在かは、デスノやネウロの小説をお読み頂ければ分かるのですが、ここではまだ伏せておきま す。 |