拝謁の時
EPISODE 3

 心を満たす柔らかなぬくもりが嬉しくて、唇に淡い笑みを浮かべて巨蟹宮に戻ってきたシラーは、リビングのソファを我が物顔で占領している巨体を見つけた途端に顔から笑みを消した。
 淡い藤色の髪と片目の大男…牡牛座のハービンジャー。
 ハービンジャーとは任務で組むことも多く宮も近いので、他の黄金よりは親しい仲だと言える。留守中に宮に入られるのはこれが初めてではないし、リビングなら入られ て困る事情も特に無いし、彼の行動に抗議してもどうせ無駄なので文句を言うつもりは無い。無いのだが、今は一人になりたい気分だったので訪問を歓迎する気 になれなかった。
 シラーは眉間に皺を寄せてあからさまに溜息をついた。

「ハービンジャー…僕が教皇に呼ばれて留守にしている事は知っていたはずだろう?どうしてここにいるんだ?」
「んー?」

 君の相手をする気にはなれないから帰って欲しいんだけど。
 そんな本音を(彼には伝わらないことは承知で)言外に含ませて抑揚のない声で告げると、ハービンジャーは二カッと笑ってシラーの質問に答えた。

「教皇にしこたま叱られたお前がメソメソ泣きながら帰ってくるかもしれないからよ、その泣き顔を拝んで…ああいや、胸を貸して慰めてやろうかと思って待ってた」
「………………」
「けど、無駄骨だったかなぁ?」
「…あ、ああ。そっ…そのよう、だね」

 一瞬で色々なことを考えすぎてショート寸前の思考回路で何とか言葉は返したが、ぎこちなく視線を逸らしたシラーの狼狽ぶりを見て鈍いハービンジャーも何かを察したらしい。怪訝そうな顔でソファから身を乗り出した。

「あっれー?何だよその反応。何でそんなにウロタエてるんだ?」
「………、べっ、別に僕は、うろたえてなんか…。君が予想もしなかった事を言ったからね、驚いただけだよ」
「んんー?」
「…何」

 ハービンジャーは無遠慮にシラーの顔をじろじろと覗きこみ、至って真面目な顔で彼を指差した。

「ほっぺたに涙の後が残ってるぞ。お前、その顔で教皇宮から皆の宮を通ってここまで戻ってきたのか?」
「え、嘘!だって帰る前にちゃんと鏡を…」
「……………」
「……………」

 確認したのに、と言いかけてシラーはハッとした。
 カマかけに引っかかって口を滑らせたと気付いた時は既に遅く、ハービンジャーは何とも言えない楽しそうなニヤニヤ笑いを浮かべてソファから立ち上がった。
 …ちなみに。
 ハービンジャーの辞書には『遠慮』という文字は無い。
 失言を聞かなかったことにしてそっとしておく、という発想も無い。
 頬を染めて俯き黙り込んでいるシラーに歩み寄って、何がそんなに楽しいんだと言いたくなるような顔でハービンジャーは口を開いた。

「お?なになに?今、何て言った?『帰る前にちゃんと鏡を』?」
「…………。何だその、物凄くイイ笑顔は」
「ってーことはお前、教皇に説教食らって泣いたのか?え、マジで?冗談のつもりで言ったのにマジで泣いたのか?」
「…まさか」
「えー?だって今、帰る前に鏡を見たとか言ったじゃねーか」
「外に出る前に身だしなみを確認するのはマナーだからね、鏡くらい見るさ」

 片方だけの眼をキラキラさせて覗き込んでくる大男から視線を逸らしてシラーは素っ気なく吐き捨てた。が、その程度でハービンジャーが引き下がるはずもなく、ますます楽しげに笑いながら言葉を続けた。

「んで、散々泣いた痕跡が残ってないのを確認したから帰って来たと」
「どうしてそうなるんだ」
「今の話の流れだとそうなるだろ。ジーサンの説教は長いもんだけど、それにしても帰りが遅いなと思ってたんだがなるほどなー、泣いた痕跡が消えるのを待っ てたからなのか。それで納得だぜ。で?で?一体どんな泣ける説教を食らったんだ?あ!ひょっとしてもしかして、しこたま叱られた揚句に蟹座の黄金聖闘士の 資格を剥奪するとか言われたのか?それじゃ泣きたくもなるだろうけど」
「僕は今後も蟹座の黄金聖闘士だよ、資格剥奪なんてされてない。それから泣いてなんていない、何度も言わせないでくれハービンジャー」

 これ以上彼を相手に無駄話をしていたら動揺からまた口を滑らせてしまうかもしれない。ここはさっさと話を切り上げるのが得策とばかりにシラーは私室に足を向けた。

「僕は少し一人になりたいんだ。悪いけど君の話相手を続ける気はないよ」

 無遠慮で無神経なハービンジャーも踏み越えてはいけない一線は理解しているから、私室まで入って来ることはない。私室に入ってしまえば安心とばかりに扉を閉めようとした途端、閉めかけた扉を掴まれた。
 予想外の展開に一瞬呆気にとられ、シラーは慌てて扉を押さえた。私室の扉を完全に開けられてしまってはお終いだ。

「ちょ、ハービンジャー!僕は一人になりたいんだって言っただろう!聞いてなかったのか!?」
「心配すんな、ちゃーんと聞いてたよ」
「じゃあ何故…」
「お前を泣かせた教皇のお説教が気になって眠れねーから、どんな内容だったのか教えてくれよ!それだけ聞いたらお望み通りお前を一人にしてやるからさ!」
「僕は泣いてないって言ってるだろ!」
「ガハハハハ!!もうバレバレなんだから苦しい言い訳すんなって!安心しろ、誰にも言わねーからよ!」
「君の『誰にも言わない』が信用できるわけないじゃないか!」
「なーんだ、やっぱり泣いたんじゃねーかよー。で、どんな深イイ話をされたんだ?」
「君に話す事は何もない!!」

 ハービンジャーがこじ開けようとする扉をシラーは必死で押さえたが状況は芳しくない。得意分野こそ遠距離攻撃だがシラーは決して非力ではないし、純粋な腕 力は黄金の中でも真ん中よりは上だろう。しかし今回は相手が悪すぎた。私室の扉が内側に開く作りなら体当たりで無理矢理閉めることもできたが、外に開くから 引っ張って閉めなければならないので更に分が悪い。悪いが、諦めるわけにはいかない。
 往生際の悪いシラーにいい加減ゲンナリして来たハービンジャーは、扉の隙間から彼を覗きこんで至って真顔で尋ねた。

「最後にもう一回聞くぞ。お前は泣いてないし、教皇からどんな話をされたかも言うつもりはない。だな?」
「ああ、そうだ。何度も同じ事を言わせないでくれ」
「ふぅーん。そこまで言い張るなら仕方ねーな。教皇のとこ行って『シラーに一体どんな話をしたのか教えて下さい、あいつが泣きながら帰ってきたから心配で心配で』って聞いて…」

 バァン!!
 ずがんっ!!!

「あべしっ!!」

 全力で扉を引っ張っていたシラーがいきなり手を離した揚句に扉を突き飛ばした(?)ので、ハービンジャーは勢い余って扉の直撃を食らって床に尻餅をつく羽目になった。

「ってーなオイ!何すんだいきなり!」
「何をするはこっちの台詞だ!教皇に話を聞きに行く?教師に告げ口しに行く子供か、君は!!」

 扉の直撃を食らった顔を押さえてハービンジャーが涙目で抗議すると、怒りと羞恥で真っ赤になったシラーが怒鳴り返した。
 その反応に、ハービンジャーは床に座ったままニヤッと笑った。

「んー?じゃあ何か、俺が教皇に話を聞きに行くと困る事情でもあるのか?」
「それは…、別に、ない、けど…」
「じゃあいいじゃねーか。お前の言ってることが嘘じゃないなら、教皇に『何の事だ』と言われてお終いだ。だろ?」
「…………」

 複雑な顔で口を噤んだシラーの姿に、ハービンジャーはケラケラ笑いながら立ち上がった。宮の出口に足を向けながら彼は何気なく話を続けた。

「お前はさ、頭は良いのに変なところで馬鹿っつーか抜けてるよなぁ。最初に口滑らせた時に『涙が出るほど感動する話を伺ったが他人に話す内容じゃない』と でも言っとけば俺はそれで納得して帰ったのによ、変にムキになって否定するからどんどんドツボにハマってさ。ま、そこがお前の可愛いとこだよシラーちゃ ん。さーて、教皇に話を聞いてくるとするかね」
「…積尸気」
「ん?」
「冥界輪舞!!!!」
「おぅわぁ!!!」

 ゴオォッ!!
 轟音と共に闇色の竜巻が背後から襲いかかり、紙一重で避けたハービンジャーの鼻先を掠めて通り過ぎた。
 …コイツ、溜めなしで最大奥義ブチかましてきやがった。
 いくら黄金とは言え、同じ黄金の最大奥義をまともに食らってはタダでは済まない。ハービンジャーの背中がゾゾッと寒くなった。

「ちょ、シラー、おま…照れ隠しでいきなり最大奥義ブチかます奴があるか!事前に宣言しろ!!」
「これから最大奥義で攻撃します、なんて宣言する馬鹿がいるか!」
「お前いつも宣言してんじゃねーか、『僕の最大奥義で世界の果てまで吹き飛ばしてあげるよ』とかってよ!!」
「そうか分かった、宣言すればいいんだね。僕の最大奥義で世界の果てまで吹き飛ばしてあげるよ、ハービンジャー」
「分かってねぇ!つか問題はそこじゃねぇ!!」
「積尸気冥界輪舞!!」
「待て待て待て待て!」
「冥土引導!!」
「え、ひょっとしてこれ、照れ隠しじゃなくて口封じ!?」

 かなり真面目に身の危険を感じたハービンジャーが宮の外に逃げようとすると、その逃げ道を塞ぐように闇の混じった輝く水流が飛んできた。これは逃げの一 手は通用しそうにない、反撃して隙を作って逃げるしかないか…とは思ったが、病み上がりのシラーを相手に牡牛座の奥義を出すのはフェアでない気がした。そ うなると接近戦に持ち込んで動きを封じるしかないのだが、緩急をつけて絶え間なく飛び道具が襲ってくるので間合いを詰めるタイミングが掴めない。小宇宙を 凝縮した水流程度なら食らってもどうという事はないが、ランダムに奥義を混ぜて来るので迂闊に飛び込むと派手にカウンターを食らってしまう。
 その巨体に似合わぬ身軽さで雨霰と飛んでくる水流や奥義を避けながら、ハービンジャーは内心で感嘆の溜息をついていた。

(冥界で死にかけて、神に助けられたとは言え死の小宇宙を注ぎこまれて、半年眠り続けて目を覚まして間もないのに、ノーモーションで奥義を連発して息ひとつ切らしてねぇとは…やっぱコイツ、素の能力は黄金の中でも頭一つ抜き出してるんだなぁ)
(けど、メンタルの脆さっつーかこのテンパりやすさが洒落にならないほど致命的な欠点なんだよな。これさえなけりゃ蟹座の特殊能力と合わせて向かうところ敵なしなのに勿体ねぇ)
(そういや、テンパリすぎて変な方向にタガが外れたシラーを『暴走したエヴァ初号機』と例えたのは誰だったっけ?確かに暴走した初号機は敵を完膚なきまで 叩きのめすまで止まらないし、敵の中に味方がいてもお構いなしだし、アレは確かに上手い例えだったなぁ。つーかこんだけピンピンしてるなら俺も奥義で反撃 していいんじゃないか?)

 妙に冷静にそんな事を考えながらハービンジャーは反撃のタイミングを伺ったが、軽く『エヴァ初号機暴走モード』に入ったシラーは隙らしい隙を見せない。
 無いなら仕方ない、作るか。
 ハービンジャーは巨蟹宮の中をマラソンしながらシラーに声をかけた。

「おいシラー、からかったのは悪かったって!んーなマジになるなよ、そのくらいで!」
「黙れ!蟻の穴から堤も崩れると言うだろう、僕を脅かす危険因子は排除しなきゃいけないんだ、全部!」

 氾濫した川の濁流のような水流がハービンジャーの脇腹を掠め巨蟹宮の柱を抉り取って弾けた。
 隙を作るつもりで別のスイッチ押しちまったかな?と彼が首を傾げると、慟哭するような声でシラーが吠えた。

「お前に…お前に何が分かる!!片目と引き換えに小宇宙に目覚めて、常人を圧倒する力を手に入れて、骨の砕ける音を聞きながらスラムで楽しくやってきたお前に、僕の何が…!」
「へ?」
「いきなり地獄に叩き落とされて、地べたを這いずって、泥水を啜って、死体の懐を漁って、自分より小さな子供から食べ物を取り上げて、『友達』になった子 供を囮にして逃げて、悪趣味な金持ちに愛玩動物として飼われて、捨てられないために必死に尻尾を振って飼い主の機嫌を取って…」

 闇と光の混じった濁流が轟音と共に飛ぶ。

「漸く人間扱いされるようになっても、試験に合格できなければ消される恐怖、自分より優秀な奴が現れたら捨てられる不安に苛まれて、だから僕は、他の後継 者候補を殺した、都合の悪い事を知った者を消して来た!ずっとずっと死と隣り合わせの日々を生きて来た僕の気持ちが、他人の死を積み重ねないと生きられな かった僕の気持ちが、お前に分かるか!!」
「分かるわけねーだろ」

 パァン!!
 シラーの撃ち放った大砲のような水流を撃ち砕いてハービンジャーはケロッとした顔で答えた。

「超能力者じゃねーんだから言われてないことが分かるわけないだろ。お前と違って俺は馬鹿だから言われても分からないこともあるくらいなのによ」
「…………」

 あまりにも当たり前すぎる正直な言葉に虚を突かれたシラーが水流を撃ち出しかけた動きを止めた。
 漸く反撃のタイミングが出来たので、小宇宙を高める為に両腕を組んだハービンジャーは、至って真面目な顔で言った。

「分かって欲しいなら愚痴でも泣き言でも良いから話せばいいだろ?俺にお前の気持ちが分かるかどうかは分かんねーけど、ちゃんと話は聞いてやるよ、俺達は仲間なんだから」
「…………」

 仲間なんだから。
 さらりと言われたその言葉をどう受け止めようかシラーが考えを巡らせたその時。

「グレートホーン!!!」
「……!!」

 ハービンジャーが渾身の力で放った衝撃波がシラーを襲い、彼は宮の壁に叩きつけられた。
 …台無しだ、色々な、何もかもが。これだから脳筋は嫌なんだ!!
 苛々が一瞬で限界を超えて何かがブチ切れたシラーは、唇に冷ややかな笑みを浮かべてゆらりと立ち上がり、右手の人差し指に小宇宙を集めた。
 それを見たハービンジャーが顔色を変えた。

「ちょ、おま」
「落ちるがいい。本物の死の世界へ…震えろ、真の死の恐怖に…!」
「やっべぇ!」
「積尸気…」

 シラーの指がゆっくりとハービンジャーを指す。
 ハービンジャーは床を蹴り一気にシラーとの間合いを詰めるなり、差し出された右腕を掴んで一本背負いの要領で彼を投げ飛ばした。
 ドッターン!!
 シラーが床に叩きつけられると同時に集めた小宇宙も乱れて消えて、ハービンジャーは盛大に安堵の息をついた。

「はぁ…危なかったぜ」
「…力技で積尸気冥界波を止めるなんて、無茶苦茶だ」
「どっちが無茶だよ。…で、気分はどうだ?シラー」
「?」

 床に大の字になって不貞腐れているシラーの横に屈みこんだハービンジャーは、彼の顔を覗きこんで二カッと笑った。

「みっともなく泣いて、散々喚いて、思いっきり暴れて、溜め込んでたもんぶちまけて、スッキリしたか?」
「…………」

 シラーはその言葉にしばらくきょとんとして、そしてふっと表情を和ませて微笑んだ。

「ああ、お陰様でね」
「オッケーオッケー。なら俺も深夜のマラソンした甲斐があったってもんだ」

 満面の笑みを浮かべて立ち上がったハービンジャーは手を差し出して、シラーは有難くその手を取った。

「んじゃ、一杯やりに町まで行くか!お前が寝てる間にいい店見つけたからよ、そこで飲みながらお前の話を聞いてやるぜ」
「…誘ったからには君の奢りなんだろうね?」
「おうよ!」
「なら、有難く御馳走になるよ」
「おっし、じゃあ行くぞ!」

 シラーが淡く笑んで頷くと、ハービンジャーは上機嫌で十二宮の外に足を向けた。
 …シラーの倍以上飲み食いしたハービンジャーが、悪びれる様子が欠片もない爽快な笑顔で『悪い!財布忘れた!』と言うのはこれからしばらく後の事になる。

NEXT


星矢部屋
総合目次
SS・2012時代
SS・神話時代
SS・蟹座達

 当初の予定では全く入れる気の無かった、シラーさんとハービンジャーさんがドッタンバッタンしつつシラーさんの心に一石を投じる話です。このふたりの漫才、書いてて本当に楽しい(笑)。
 シラーさん初登場の回だけ見た時は、彼が心の底から完全に壊れてしまってる『天然物の屑』なのか、心の底にはマトモな感覚が残ってるけど、自分を生かす ために(肉体的にも精神的にも)壊れざるを得なかった『人工的な屑』なのか判別が出来ませんでした。二回目の登場を見て、『壊れざるを得なかったけど、同 時に壊れるのが怖い矛盾を抱えた臆病な人』という印象に変わったので、その辺の『私の中のシラー像』を整理するためにこのエピを入れました。シラー=サイ キの刹那、ハービンジャー=サイキのガデスと考えると非常に動かしやすかったです。サイキでは優男系イケメン刹那が単純馬鹿で、筋骨隆々ワイルド系ガデス が頭脳派でしたけど、表面的な会話は同じような感じになるかなと。
 Ω本編を見ると、シラーさんの素質は非常に優秀、と言う印象でした。牽制に使える弱ショット的な気功術から竜巻を起こす大技に一撃必殺の飛び道具(積尸 気冥界波)まであって、死体を操って攻撃手段に出来て、更に肉弾戦も(嫌いそうだけど)決して不得意ではないし、先入観で敵を判断せず、状態や状況を分析 して的確な対応が取れるし、おまけに『聖闘士を仮死状態にして小宇宙を燃やさせる装置』まで造れて、粛清された敵幹部(アリア)の処遇まで知っている。こ れで、どんな時でも冷静でいられるほど神経が図太ければ完璧なのですが、想定外のイレギュラーが起きた時に動揺すると一気にガタガタと崩れるメンタルの脆 さが文字通り命取りと言う感じ。けど、メンタルの脆ささえ上手くフォロー出来れば文句なしに優秀なので、周囲も苦言を呈しにくい…みたいな話を、4話目で 入れたいと思います。
 で。
 シラーさんのキャラの方向性が決まったところで、シラーさんがハービンジャーさんに八つ当たり的にぶつける台詞が出てきました。この辺、SS「逢魔」の 設定と繋がってるのですが…。シラーさんがまだ弱い子供だった頃、生き延びる為にやった色々なことに対して、彼は心の奥底で良心の呵責とか嫌悪感を感じて いて、開き直ったつもりでも最後の最後が開き直りきれてなかった。そして、生きる為に喧嘩は強くなって、金持ちの養子になって格闘術を学んでも、小宇宙に も目覚めてないので強いと言ってもあくまで一般的な人間レベル。当たり前だけど銃や毒の前では無力なので、養父の期待(と言う名の、後継者としての合格ラ イン)を越えられなければ殺されるかもしれない。崖を登っても登っても登り切れない、自分より先に崖を登り切りそうなライバルや自分を脅かす情報を知った 人間は崖下に蹴落として、それでも不安で不安で仕方がない。不安だから強くなる、でも、強くなっても強くなっても、小宇宙に目覚めて銃や毒でも殺せない黄 金聖闘士になってもまだ不安に駆られて、自分を脅かすものは排除しないと怖くてたまらない、普段は冷静に余裕綽々に振る舞ってるけど、心の底には猜疑心と 強迫観念がずっと存在していて、誰かに心を開いて弱みを握られたり裏切られたりするのが怖いから仲間なんていらない、と拒否し続けて来た…という設定を考 えながら話を書きました。
 んで、心に積もり積もって一杯になっていた感情がシオンの言葉とハービンジャーさんの冷やかしで堰を切って溢れて来て、八つ当たり的に『お前に何が分か る!』と喚き散らしたら『話してないことが分かるわけないじゃん。分かって欲しいなら話せば?』とあっさり返されて、シラーさんポカ───( ゚д゚ )───ンです。今までずっと、『人を信じたら利用される、弱みを見せたらハメられる、自分が脅かされる』と思いこんでいたのでその発想はなかった。一度 本当に死にかけた事と、シオンの諭しとハービンジャーさんのド直球な台詞でシラーさんの心は大きく揺れているので、揺れた後の方向性がどうなるかは4話 で、他の黄金聖闘士と話をしたりすることで表現出来たらなと思っています。ちなみに、シオンは自分の言葉がどう影響するか色々考えてシラーさんに話をして いますが、ハービンジャーさんは何も考えてません。でもそこが良いんだと思います。
 それから、シラーさんの小宇宙の属性はどうやら水のようなので、特に名前の無い飛び道具はサイキ2012の水属性超能力者・カルロのハイドロスパイラル みたいな感じかなと思いながら書きました。ハイドロスパイラルのネット画像が見つからなかったのですが、DNAっぽい螺旋状の水流をイメージして頂けれ ば。そしてしつこいほど『水流に闇と光が混じっている』描写を入れた理由も4話で明かします。今後のSSに使えるかもしれない思い付きは仕込んでおこうと 思いまして。