拝謁の時
EPISODE 4

 …翌日。
 十二人の黄金聖闘士は任務の通達を受ける為に教皇宮に集まっていた。シラーの姿を認めた皆は少なからず表情を動かしたが、特に声をかけて来ることも無く それぞれの定位置に立った。任務の通達の為に教皇宮を訪れた時は私語を自粛するのが暗黙の了解でもあるし、シラーを相手に雑談したがる者も少ないという理 由もある。
 皆が揃うタイミングを見計らったように教皇シオンが姿を見せたので、聖闘士達は背筋を伸ばして手を背中で組んだ。

「久々に黄金聖闘士が全員揃ったな。喜ばしいことだ」
 
 書類を手に姿を見せた教皇シオンは十二人の黄金聖闘士を見回してにこりと笑った。

「まずは蟹座のシラーが無事に復帰した事を伝えておこう。それに関して確認事項や通達事項もあるが、まずは本人に復帰の挨拶をしてもらおうか。…シラー」
「…はい」

 シラーは一歩前に出て皆を見回した。

「教皇からお話のあった通り、昨日になって漸く目が醒めた。皆には色々と迷惑をかけたようで申し訳なかったと思っている。今後もアテナの聖闘士として、蟹座の黄金として、より一層努力していくつもりだよ。そう言う訳で…と言うのも変かな?皆、改めてよろしく」

 挨拶を終えたシラーが軽く一礼して下がると、シオンがパチパチと手を叩いた。それに続いて黄金聖闘士達も拍手すると、シラーは微かに頬を染めて照れ臭そうに笑った。
 その反応に意外そうな顔をする者がいるのを視界の端に捕えながら、シオンは顔から笑みを消してシラーに声をかけた。

「時にシラー。ひとつ確認したいことがあるのだが…お前は昨夜、ハービンジャーを相手に模擬戦をしたな?」
「はい。模擬戦と言うほど改まったものではありませんが」
「ではハービンジャー。シラーと模擬戦をして気付いた事、気になった事はあるか?」
「へ?」

 いきなり話を振られたハービンジャーはきょとんとして、太い腕を組んで天井を仰いでうーんと考え込んだ。

「病み上がりとは思えないほどバリバリ小宇宙を燃やしてガンガン奥義も連発して、コイツやっぱスゲーなーとは思いましたけど、気になった事とかは特に…」
「そうか。では他の皆はどうだ?」
 
 シオンが皆を見回すと場が微かにざわめき、獅子座のミケーネと双子座のパラドクスが何か考え込む顔になった。思う事が無くはないが確証が無いので言おうかどうしようか迷っている…という様子を見てシオンが発言を促した。

「ミケーネ、パラドクス。気付いたことがあるなら些細な事でも構わないから言ってみるが良い」
「………。私は彼の小宇宙を見たり感じたりの機会が少なかったので気のせいかもしれませんが…シラーの小宇宙の波動が以前とは若干違うように感じました」
「私もミケーネさんと同じ事を感じました。なんて言えばいいのかしら、シラーの小宇宙の属性は水なのに、水以外の何かが少しだけ混ざっているような…。でも、ハービンジャーさんは気になった事は何もなかったのよね?」
「ああ。シラーの撃った水流にちょっと闇が混じって光ってたくらいで、気になった事は何もないぞ」

 一瞬シーンと場が静まり返って、そして。

「それを『気付いた事、気になった事』って言うんだよこの馬鹿脳筋がぁ!!」

 ガン!!
 突如出現したパラドクスの第二人格が、靴の踵で床を盛大に蹴り付けてハービンジャーを怒鳴りつけた。
 その迫力に気押されつつ、だってよ…とハービンジャーが釈明した。

「夜だったし、部屋とか月の明かりもあったし、水流に闇っぽいものが見えたり光ったりしててもおかしかないだろ?」
「明かりのせいで水流が光ってるように見えたとしても、夜だからって闇が混じるかこのボケ!!」
「あ、そうか」
「そうかじゃないだろう!這いつくばって詫びろこのゴミ虫が!!」
「ええー?この程度でそこまでしなきゃいけねーの??」
「パラドクス、その辺で良い。私もシラーの小宇宙が以前と多少違っている気がしていたのだが、どうやら間違いないようだ」

 パラドクスを片手で制すると(制された彼女は第一人格に戻った)、シオンは表情を曇らせているシラーに視線を戻した。

「そう言う訳でシラー。お前の小宇宙を皆の前できちんと確認をしたい。良いな?」
「…はい」
「では、ハービンジャーの言う水流を私に撃ってみろ」

 ひとつ頷いて、シラーは小宇宙を高めて凝縮した水流をシオンに向けて撃ち込んだ。僅かに闇が混じった輝く水流を片手で受け止めたシオンは、もう一度、と真剣な顔で促した。
 …数回シラーの水流を受け止めたシオンは真剣な顔で何かを考え込み、シラーは不安そうな眼で自分の手に視線を落とし、黄金達は複雑に沈黙したままシオンとシラーを交互に見た。
 重苦しい沈黙を最初に破ったのは年長者のイオニアだった。

「教皇。属性は水であったはずのシラーの小宇宙に闇と光が混じっているようですが、これは一体…」
「…推測の域を出ないが、シラーを救う為にタナトス神が注ぎ込んだ小宇宙が残っているのだろうな。タナトス神の小宇宙が完全に抜けていない状態でシラーが目覚め ただけでいずれ消えるのか、あるいはシラーの命を繋ぐ為に最低限必要な神の小宇宙故に半永久的に残り続けるのか、現時点で判断するのは不可能だ。何を言ってもアテナの聖闘士が死の神の小宇宙で命を救われるなど前例のない事、影響が出 るのか出ないのか、影響があるならどんなことがあるのか全く予想が付かない」
「…………」

 ある意味とんでもなく無責任とも言えるシオンの言葉に絶句している皆を見回して、シオンは穏やかに言葉を続けた。

「無論、アテナを通して冥界の神々にお話は伺うつもりだ。もしも死の神の小宇宙で命を繋がれた人間の前例があるのなら、タナトス神の小宇宙が残り 続けても深刻な悪影響が出る事はないだろう。悪影響が出るのを承知でアテナの聖闘士を救えば後々揉め事が起きる、和平成立後に揉め事を起こす様な事をタナ トス神がなさるとは思えないからな。しかし、冥界にも前例が無いと言われる可能性も考慮して対策は立てておいた方が良いだろう。同時に死の神の小宇宙がどう影 響するのか、どの程度影響するのかも確認する必要がある」

 シオンの言葉に皆が無言で顎を引き、次の言葉を待った。

「以上の理由により、しばらくの間はシラー単独での任務遂行は行わず、誰かの任務に同行させる形で様子を見る。万一のイレギュラーに対する備えと、より正確に状況を確認する為に、シ ラーを含め最低三人で任務の遂行に当たって貰おうと思う。とりあえず今月分の任務スケジュールを渡すが、これはシラーが目覚める前に決まった予定しか入っ ていない。出来るだけ早く組み直すので、動かせない予定のある者は早めに申し出るように。…さて、何か質問はあるか?」
「質問と言うか、素朴な疑問なんですけどね」
「何かな?ハービンジャー」
「シラーの小宇宙にタナトス神の小宇宙が混じってるそうですけど、混じった属性は光と闇の二つでしょう?闇はタナトス神でしょうけど、光はどこから混ざったんです?」
「神を人間の常識で測ろうとしてはいけないぞ。二つ以上の属性を併せ持つ神など珍しくない。確かにアテナの属性は光だけだが、むしろアテナが例外的に光の属性に特化した神だと考えた方が良かろう」

 シオンの言葉にハービンジャーはますます不思議そうに首を傾げた。

「え、でも冥界の死神が光と闇なんて真逆の属性を両方持ってるんですか?闇は分かるけど、光?いや、まぁ、『神様だから』と言われたらそれまでなんですけど」
「これも私の推測だが、神は先天的に光の小宇宙を持って生まれ、己が司るものに近しい属性を後天的に身につけるのではないだろうか。それに、タナトス神の 母である夜の女神ニュクスは、夫である闇の神エレボスとの間に天空の光の神アイテルと昼の女神ヘーメラーをもうけている。光と昼の神の兄であるタナトス神 が光の属性を持っていてもおかしくはなかろう」
「はぁ…要するに神様だから何でもアリって事ですね」

 シオンの説明に分かったような分からないような顔をしていたハービンジャーは、結局『神様だから』で納得することにしたらしい。シオンは微かに苦笑して皆を見回して、質問をする者がいないのを確認して解散を申し渡した。




 …スケジュール表を受け取った黄金聖闘士は各々の宮に戻るためぞろぞろと教皇宮を出て行った。教皇宮で仕事がある貴鬼が残るのも、乙女座のフドウが目を閉 じたままさっさと出て行き、ハービンジャーとシラーとパラドクスの『十二宮下層階』のメンバーがフドウに続いて出て行くのも、半年ぶりに目にする見慣れ た光景だ。
 天秤座の玄武は十二宮の階段を降りながらスケジュール表にざっと目を通した。
 戦闘を伴う可能性がある直近の任務は四日後の『某国の異変調査』で、担当者の欄には玄武とパラドクスの名前がある。

(黄金二人を派遣すると言う事はそれなりに厄介な任務と言う事か。シラー復帰後の初仕事がこれになる可能性は十分あるな)

 玄武は、斜め前を歩いている長い赤毛の男にちらりと眼をやった。
 蟹座のシラー。
 玄武と彼は雑談らしい雑談もしたことが無く、任務で何度か組んだ時に必要最低限の会話を交わす程度の浅い付き合いしかない。その浅い付き合いに基づくシ ラーに対する印象は『金持ちの道楽の延長線で黄金まで上り詰めた、実力は折り紙つきだがお高くとまっていけ好かないお坊ちゃん』だった。初めて任務で組ん だ時、 さも当然のように彼から指示を出され、思わずムッとしたら『君の今回の役目は僕のサポートだよね?僕は君より年上だし先輩だし実力も上だし、君よりも的確 に状況が判断できる自信があるから指示を出したんだけど、それが不満なら好きにすればいいよ。ただし、最後まで自己責任でね。君が危なくなっても僕は助け てあげないよ?』と厭味たっぷりの笑顔で言わ れた(そして事実彼の出した指示はケチのつけようがないほど完璧だった)のが大きな理由だろう。
 が、緩く波打つ赤毛から垣間見えるシラーの横顔は最悪だった第一印象にはそぐわなくて、玄武は少なからず戸惑いを感じた。
 高慢ちきな厭味の色が抜けたと言うより、むしろ…。
 玄武の視線に気付いたのか、シラーが微かに笑みを浮かべて半分だけ振り返った。空の一番高い場所の色を閉じ込めたような、スティールブルーの眼と視線が合った。
 
「…何か?」
「!………」

 以前の彼なら、誰かの物言いたげな視線に気付いても無視を決め込んでいたのに。
 声をかけられたことに玄武は多少驚き、一度大きく息を吸ってシラーの隣に歩を進めた。
 …並んで歩きながら改めて彼の顔を見て、玄武は正直な感想を口にした。

「…憑き物が落ちたような顔をしているな」
「………。そんな風に、見える?」
「ああ」
「あはは、じゃあ本当に落ちちゃったのかもしれないね。あの灼熱の池に落ちた時に、僕の中でガチガチに凍りついていた色んな物が溶けちゃってさ」
「…………」

 こんな自虐ネタのような言葉が返ってくるとは思いもよらなかった。
 それは驚きだったが決して不快な感情ではなくて、シラーに興味を引かれた玄武は、磨羯宮に入っていくイオニアを視界の端に捕えながら会話を続けた。

「お前がそんな冗談を言うキャラだとは思っていなかったな」
「僕は結構マジメに言ってるつもりなんだけど。…でも、君を相手にこんな話をしている事は自分でも意外だよ。僕は結構、人見知りするタイプだからね」
「…それは初耳だ」
「そうだろうね。自分の弱味を自分で他人に晒そうなんて、僕は今まで考えたことも無かったから」
「弱味なんて大袈裟だな。『僕は人見知りなんです』なんて、仲間に対して自己紹介してるだけだろう?」
「仲間に対する、自己紹介…」

 玄武の何気ない言葉を反芻したシラーは目を見開いた。
 そんな考え方、したことなかった…と真顔で呟く姿に、シラーとの会話が面白くなってきた玄武は微笑を浮かべて口を開いた。

「じゃあ俺も弱味を晒す自己紹介をしようか」
「え…」
「実は俺は酷い猫舌で、コーヒーは砂糖を二杯入れないと飲めない」
「…それはとんでもない弱点だね。しっかり覚えておかないと」

 シラーは本当に嬉しそうにクスクスと笑った。
 風が長い赤毛をふわりと舞わせると、毒も厭味もない柔らかで自然な表情が見えて、玄武は目を細めた。

「…俺の弱味を知ったのがそんなに嬉しいか?」
「何も考えずに他愛無い会話が出来るのが嬉しい、かな。今までは雑談ひとつでも計算したり警戒したり裏を読んだり裏を掻いたり言葉を選んだり、色々と神経を尖らせる世界にいたからね。こんなお喋りが出来る日は二度と来ないと思ってた」
「え?……」

 さらりとシラーが紡いだ言葉に玄武は目を瞬いた。
 シラーはどこぞの事業家の御曹司だという噂は聞いていた。確かに上流階級の人間なら迂闊な発言が命取りになりかねないから会話には気を使うだろうが、そ れにしても、まだ事業に関わっていないはずの二十歳そこそこの彼が『こんなお喋りが出来る日は二度と来ないと思ってた』とまで言うのは奇妙な気がした。
 突っ込んで聞くのは憚られる話題だと言う事は十分理解していたが、どうしても好奇心を押さえきれず、玄武は努めて軽い口調で尋ねてみることにした。答えたくないなら曖昧にはぐらかすだろう。

「下らん雑談にも神経を使うって…一体どんな厳格な家庭で育ったんだ?親の仕事も碌に分からない子供の頃は学校の友達とお喋りくらいするだろう」
「あー…あんまり大きな声じゃ言えないんだけどね。実は、僕がきちんと学校に通い始めたのは12歳の時なんだ。その時にはもう『雑談にも神経を使う』生活になってたんだよ」
「は?ちょっと待て、お前確か、17で聖域に来た時点で大学卒業してなかったか!?」
「そうだよ。12歳で学校に通い始めて、これもあんまり大きな声じゃ言えないけど、養父の七光りで反則技使って大学に編入して、17歳で卒業。あ、念の為に言っておくけど単位は自力で取得したからね?」
「待て待て待て待て!俺は一体どこから突っ込めばいいんだ!?」

 想像の斜め上空を飛び越えていく話に思わず大声を出すと、シラーは本当に怪訝そうに首を傾げた。

「僕の話にそんなに突っ込みどころがあった?」
「有りすぎだ!12から学校に通ったとか、それで不正無しで17で大学卒業とか…大学の授業について行くだけの基本的な学力は一体いつ身に付けたんだ?それに12で雑談ひとつに気を使う?それからナチュラルに言ったが『養父』って何だ、お前を大学に捻じ込んだのは…」

 実の親じゃないのか、と言いかけて玄武は言葉を呑みこみ目を逸らした。
 そうだ、きっと実の親ではないのだろう。実の親ではない『養父』の元で12歳から学校に通い始め、その時には『雑談にも気を使う生活』になっていたと言う事は、複雑な事情があるに違いない。
 触れてはいけない話題に踏み込んでしまったと気付いた玄武がぎこちなく口を噤むと、シラーは唇を僅かに微笑ませて口を開いた。

「…僕は戦災孤児だったんだ。あの頃は食べる物も満足に手に入らなかったから、食事が目当てで教会の勉強会に行ってたんだよ。真面目に授業を受ければパン が貰えて、試験で良い点を取ればお菓子も貰えたからね。そりゃあ一生懸命に勉強したものさ。おかげで基礎的な学力が身に付いたって訳」
「あ…その、別に、無理に話さなくてもいいんだぞ。複雑な事情があることくらいは察しがつくからな」
「その『複雑な事情』を勝手に想像して変に気を使われるくらいなら、差し支えない範囲で話しておいた方がマシってこと」
「そう、か」

 シラーの言葉にほっと安堵の息を吐いた玄武は、自分の中で急速に膨れ上がる好奇心をぐっと押さえて努めて軽く言った。

「そう言う事なら拝聴させて頂こうかな。その『複雑な事情』ってやつを」
「あれは、僕がまだ小学校にも通ってない頃だ。某国で反政府テロ組織による爆弾テロが起きてね…政府の要職についていた祖父がそのテロで殺されて、現場に 向かった父と様子を見に行った母が家を出たきり戻らず、何が何だか分からないうちに僕は気が付いたら地獄の底にいた。綺麗な水も無い、食べる物も無い、寒 さをしのぐ服も無い、ちょっと歩けば死体に躓く、何の前触れもなく爆弾や銃弾が飛んでくる。そんな異常な日常を、僕は必死に生きたよ。生きる為には何でも した。盗んで、騙して、強奪して、時には殺して…そして教会に行って神様に真剣にお祈りする。『他人はどれだけ死んでもいいから僕は生きていたいです。天 に召すなら僕ではない他の誰かにしてください』ってね。余りにも身勝手すぎて神様にも嫌われたのかな、おかげで僕は今こうして生きている」
「…………」
「パンやお菓子を貰う為と身勝手なお願いをするため、あとは裕福な人間に食べ物や小銭を恵んでもらうためにせっせと教会に通っていたら、ある日そこの神父 から願っても無い話を持ちかけられた。『子供のいない裕福な夫婦が戦災孤児を養子として迎えたいと言っているのだが話を聞いてみる気はあるかい?』。大人のご機 嫌をとるために教会では神様を信じる敬虔で純粋な子供の振りをしていた甲斐があったというものさ」

 壮絶な過去を語るにしてはシラーの口調は皮肉めいて軽かったが、彼の蒼い目は強い痛みを孕んで揺れている。『生きる為に何でもした』部分はさらりと流さ れたが、きっとそれは、他人に話すには重く辛すぎる過去なのだろう。本人がさらりと流そうとしている話題をつつく必要はない。玄武は微かに笑みを浮か べて至って軽く続きを促した。

「上手くやったんだな。それで?」
「他にも養子の候補はいたんだけど、『経歴はともかく血筋は間違いない』と言う理由で僕が選ばれて、昼ドラかエロゲーみたいな生活をしながら学校に通って、大学卒業と同時に養父のコネでパライストラに入って、あとは君も知っての通りさ」
「昼ドラとかエロゲーなんて俗な単語がお前の口から出るとはな。じゃあ何か?若くて綺麗な奥様や血の繋がらない妹と一線越えた仲だったとか?」
「うん、大体合ってる」
「は!?」

 冗談で言った言葉をすんなりと肯定されて玄武が思わず目を見開いて足を止めると、数歩先で立ち止まったシラーが振り返った。

「合ってるよ…大体ね」

 彼は笑っていた。底の見えない、掴みどころのない、完璧すぎるほど整った端正な顔に浮かぶ酷く寂しげな儚い笑み。
 …本当に、『大体合ってる』のか。本当に。では、シラーが養子として引き取られた本当の理由は、富豪夫妻の素晴らしいボランティア精神などではなく…。
 急に胸が詰まって、玄武は努力して呆れた表情を浮かべて歩き始めた。

「お前、『どこまで本気で言ってるのか分からないキャラ』って言われた事あるだろう?」
「へぇ、良く分かったね」
「…あのな。今のお前はアテナの聖闘士の最高峰である黄金なんだし、『雑談にも気を使う』上流階級の人間なんだろう?身の上話にはもっと気を使え!大真面目 に受け取った奴に誰かれ構わず言い触らされたらどうするんだ?話に尾鰭がついてスキャンダルになったりしたら火消しが大変じゃないのか」
「ああ、そうだね。人の口に戸は立てられないって言うし…立てられないから口の無い死人にするしかないんだけど、確かにそれは大変そうだな。…じゃあ」

 シラーが当たり前のように呟いた言葉の物騒さに玄武が驚いて彼を見ると、透き通ったスティールブルーの眼と視線が合った。
 玄武の眼を真っ直ぐに見ながら、シラーはしなやかな指を緩く弧を描いた形の良い唇にそっと当てて甘く囁くように言った。

「今の話は、僕と君の秘密って事で…お願いできるかな?」
「…………」

 同性とは思えないほど妖しい艶っぽさに玄武は思わず息を呑んだ。
 ゾクリと背中を這う面妖な感覚に少なからず戸惑いながら視線を逸らして、彼は意識して声を落ち付けて言葉を返した。

「ま…まぁ、俺は、話していい事と悪い事は判別できるつもりだから誰にも言う気はないが…散々大声出したからな、あいつらにも聞こえてるんじゃないか?」
「ああ、彼らは…」

 数歩先を歩いているハービンジャーとパラドクスを目線で指して尋ねた玄武に、シラーが何か言おうと口を開きかけると同時に二人が振り返った。

「その話なら俺も聞いたぜ。『誰かに言ったら君の口を封じるよ』って脅されてるから誰にも言ってないけどよ」
「私も同じく」
「な…」
「だから、『情報漏洩』を心配するなら俺らじゃなくそっちだろ」

 そっち、とハービンジャーが指した先を見ると、皆の後ろを歩いていたらしい獅子座のミケーネが立っていた。淡く笑みを浮かべたシラーが小首を傾げて意を尋ねる仕草を見せると、ミケーネは常と変らぬ生真面目な顔で口を開いた。

「私は、他人のプライベートな話を盗み聞きするような趣味は持ち合わせていない」
「そう。なら安心だね」
「…………。では、私はここで」

 シラーに複雑な一瞥を投げて曖昧に言葉尻を濁らせたミケーネが獅子宮に足を向けると、その背中にハービンジャーが声をかけた。

「おいミケーネ。言いたい事があるなら今のうちに言っておけよ。プライドのお高いシラーが素直に他人の意見に耳を貸すチャンスなんてそうそうないぜ」
「……………」

 獅子は一度足を止め、目線だけをシラーに向け、いや…と首を振った。

「私は実績も実力もあなたより劣っている。同じ黄金と言う立場である以上、あなたに及ばぬ私があれこれ意見する事は出来ない」
「っあー!相変わらずガッチガチの石頭だな、お前はよ!同じ黄金なら立場は対等なんだし、お前はシラーより年上で先輩なんだから、言いたい事があれば言えばいいじゃねーか!ま、こいつが聞くかどうかは別だけどな」
「む………」

 ミケーネはしばし逡巡し、シラーが柔らかな表情で発言を促すのを見て生真面目な表情で口を開いた。

「あなたは、もっと肩の力を抜いて良いのではないかと思う」
「……………。僕、そんなに頑張っちゃってるように見えてた?」
「うむ」
「…そっか」

 茶化して返した言葉を大真面目に肯定されたシラーは肩をすくめて苦笑して見せたが、ミケーネはにこりともしないで話を続けた。

「黄金聖闘士で一・二を争う実力を持ちながら、常に高い目標を掲げ、より高みを目指そうとするあなたの姿勢は正に青銅や白銀の手本となるべきものである し、我々も見習わなければならぬと思っている。だが同時に、何かに追い立てられ急きたてられているようにも見受けられた。高みを目指さねばならぬ、強くな らねばならぬと言う強迫観念に取りつかれ、雁字搦めになり、身動きが出来なくなっているのではと感じることがしばしばあった。あなたは既に十二分に強い。 もう少し、力を抜いて立ち止まっても良いのではないかと思う」
「…そっか。君の眼にはそんな風に見えてたんだ。…………」

 唇から笑みを消して目を伏せて何か考えていたシラーは、皆がじっと自分を見ていることに気付いて微かに無理の見える笑みを浮かべた。

「皆、僕より年上だし先輩なんだから、思う事があれば遠慮なく言ってくれれば良かったのに」
「言われて素直に聞くキャラじゃねーだろお前はよ」
「まぁ確かに、ハービンジャーの意見は聞かないけど」
「おい」
「…主張する意見は異端だし大層な口も叩くが、お前は叩いた口以上の結果を出して来たからな。いくら綺麗事を並べても、実力主義の聖域で最後にモノを言う のは実績、数字だ。最終的なトータルで助けた人数が一番多く、犠牲にした人数が一番少ないのがお前である以上、否定的な意見は言いにくいだろう。さっきミ ケーネも言ったが、『実績や実力で劣る奴が何を』と言われればそれまでだ」
「…………」

 玄武の言葉に複雑に口を噤んだシラーを見て、パラドクスが柔らかく声をかけた。

「要するに、先輩とか年上と言うアドバンテージだけでは意見するのが憚られるほどあなたは優秀だって事よ。誇っていいわ」
「…でも」
「でも、先輩や年上の意見に耳を傾ける素直な謙虚さが無いのは欠点だったわね。そこを直せば更に好感度アップだけど…どうする?これからは先輩や年上の意見に耳を傾ける?」

 パラドクスが冗談めかして尋ねると、シラーはクスリと笑って頷いた。

「ああ、今後はそう心掛けるよ」
「素直でよろしい。じゃあ今後は私の事は『パラドクスお姉様』と呼んで教えを請いなさい!何と言っても私は、あなたより年上で先輩なんですもの!」
「おいパラドクス、何をふざけた事言い出すんだ」
「お姉様って…いつの時代の少女漫画だよ」
「あははははっ」

 ハービンジャーと玄武がジト目になってパラドクスを見たが、シラーは楽しそうに笑うと片手を胸に当てて恭しくパラドクスに一礼した。

「仰せの通りに。では、今後は未熟な僕をよろしく御指導下さい、パラドクスお姉様」
「うむ!やっぱりあなたは素直でいい子ね、とっても可愛いわ。どこかの脳筋な牛や生意気なガキとは大違い。やっぱりお育ちが違うのかしらねぇ」
「…………」

 満面の笑みで山盛りの厭味を言うパラドクスと、その言葉に何とも言えない仏頂面で黙り込む玄武、必死に笑いを堪えるミケーネ、『憑き物が落ちて肩の力が抜けた』ような顔で微笑むシラーを順番に見て、ハービンジャーは腕を組んでふんぞり返った。

「こんなクソ寒いところで立ち話も何だしよ、シラーの宮でお茶でもしようぜ。何で自分の宮を素通りしてここまで来たのかしらねーが、玄武もこのクソ寒い中天秤宮まで帰るのはしんどいだろ?あったかいもの飲んでから帰れよ。シラーの淹れるコーヒーや紅茶は美味いぞ!」
「…ちょっと待てハービンジャー。僕の宮でお茶は良いけど、何で君が皆を誘ってるんだ?」
「男が細けぇ事を一々気にすんじゃねーよ!さぁ行こうぜ!」

 ハービンジャーは寒風を肩で切って歩きだし、盛大な溜息をついたシラーがその巨体を追い、パラドクスがニコニコしながら続き、ミケーネと玄武は顔を見合わせて同時に吹きだしてから皆の後をついて階段を降りて行った。

NEXT


星矢部屋
総合目次
SS・2012時代
SS・神話時代
SS・蟹座達


 当初の予定では前後編だったなんて嘘だろうと思うほど伸びて伸びてまだ終わらないけど書いてて楽しくて楽しくてたまらなかった4話目です。
 ピクシブを見ると、ミケさんとか玄武君もシラーさんと絡んでるようなので、シラーさんの人間関係と世界を広げる為にミケさん+玄武君を出そうかなと思っ て色々妄想してみたらこれが予想外に楽しくて、私の脳内シラーさん設定のお披露目も兼ねたお喋り回となりました。次こそお茶会とタナトスとの再会を…。
 そして解説など。
・教皇宮に全員集合
 任務の通達とか黄金同士の連絡の確認とかを兼ねた朝礼みたいなものをやってるかなと思ってこんなエピを入れてみました。十二人の黄金は、LCの時のよう に『二列で整列』ではなくぐるりと円になって立ってる姿をイメージしました。あと、聖衣は着てません。私服です。21世紀ですから、任務でもないのにフル アーマーなんて着ないんじゃないかな。
・照れ笑いするシラーに意外そうな顔をする黄金
 以前のシラーさん(ガチガチに心を閉ざしてた)は照れ笑いなんてしなかったので、「あれ?コイツ、照れ笑いなんてするキャラだったっけ?」と思った人が何人かいたと。
・シラーの水流に闇と光が混じってる
 シラーさんを助ける時にタナトスが注ぎ込んだ小宇宙が残ってる、という設定を作っておきたかったので。何の役にも立たないかもしれませんが、後で何かの話のネタになったらいいなぁと思いつつ。現時点では細かい事は決めていません。
・玄武に語ったシラーの過去
 SS「逢魔」で詳しく書こうと思っていますが、ダイジェストで説明するとあんな感じです。4〜5歳で戦災孤児になり、10歳前後から『世話してくれる金 持ちの家を転々とする生活』を送り、12歳で養父母に引き取られ、学校に通い始めて高卒程度の学力を身につけ、養父のコネで14歳くらいで大学に編入し て、17歳の時に養父の正式な後継者として育てられることになり(シラー17歳の夏に養母死亡)、大学卒業後に養父の紹介でパライストラに入って聖闘士候 補生になり、18か19で蟹座の黄金を引き継ぎ、現在21歳。聖闘士を目指す子は小学校に入るような年齢でパライストラに入るので、17歳で修業開始した シラーはかなりの『出遅れ』で、周囲からも『金持ちのお坊ちゃんの道楽だろ』と陰口叩かれたりしたけど、全部実力でひっくり返して、適任者が現れず後継者 が決まってなかった蟹座の黄金に1〜2年でなっちゃった、レグルスみたいな天才。それが当サイトシラーさん。
・黄金仲間から見たシラー
 私の中にある設定はミケさんと玄武君の台詞に集約させました。『弱い奴は生きる価値なし』とか『死の淵にいる奴を助けに行って共倒れするなんて愚の骨 頂。助けられる見込みのない人間はさっさと切り捨てるべき』というシラーさんの主張には全く共感できないけど、かと言って真正面から意見するにはシラーさ んは出した結果が優秀すぎたと。「この間君は、助けられる見込みのない人間を無理して助けに行ったね。その時に何人の聖闘士を犠牲にした?そして一体何人 の人間を救えた?」と言い返されたらもう何も言えないし、みたいな。
・他の黄金の年齢
 Ωの公式では明らかになってないので勝手に設定。シラーさん21、パラさん22、玄武君18、ハビさん25、ミケさん30、貴鬼26、イオニア50代半ば。ちなみにシラーさんの年齢は下から二番目だけど、聖闘士の経験年数(候補生時代含)では一番後輩。
・シラーの衝撃の告白を聞いていたのは玄武とミケーネだけ?
 シラーさん衝撃の告白が始まったのは天蝎宮を通り過ぎた後。貴鬼は教皇宮に残り、処女宮のフドウは真っ先に帰ってしまったので、近くにいて話を聞いていたのはハビ・パラ・ミケ・玄武の4人。

以下、ツイッターで吐き出した脳内設定とか。
 シラーさんは分厚くて高い心の壁を持ってて、一応正門もあるけど固く閉ざして頑丈な鍵も付けてて、その内側には誰も入れない人、というイメージ。壁の内 側に人をいれる=自分が脅かされる、みたいな不安と言うか恐怖心があるから。で、その正門を鍵ごとブチ壊して中に入って来るのがハビさん。勿論シラーさん は最初は抗議するんだけど、抗議しても聞いてもらえないのでハビさんには門を開放。パラさんはガードの甘い裏門からそっと入ってしれっとシラーさんの前に いる。あるいは正門をピッキングとかで開けてするっと入って来る。なので、ハビさん同様抗議しても無駄と判断した当サイトシラーさんは、ハビさん+パラさんにはそこそこ心を開いていて仲がいい、 と言う設定。
 で、シラーさんの堅牢な心の壁を見て、「仲間に対してここまで警戒しなくていいのに…」と思いつつ、シラーさんの意思を尊重して門の前で引き返すのがミ ケさん。ガチガチにガードした門を見ていらっとして、「所詮は他人、気にする事じゃない」と思いつつ、やっぱり気になってイラッととするのが玄武君。そんな 皆をつかず離れず見てる(だけ)が貴鬼とイオニア。シラーさんの心の壁なんてどーでもいい、と言うか他人に関心がなさそうなのがフドウとあの人。

 後、シラーさんと任務でペアになった時の事も考えてました。
ハビさんは「骨の折れる音を聞くぜぇぇ!!」と敵の真っ只中に突撃。作戦?なんですかそれ?状態。シラーさんは溜息つきつつ、ハビさんを陽動にしたり目隠 しにしたり弾よけにしたりしてきっちりと任務遂行。ハビさんが敵の攻撃を受け止めてるところで、遠距離から飛び道具で敵を狙い撃ち。いいコンビ。
 パラさん と組んだら、「女性を守るのが男の僕の役目だろう?騎士の真似事くらいさせてよ」とカッコつけてパラさんを後ろに庇って大活躍。でも、パラさん第二人格が 出てきたらビビってタジタジ。ミケさんと組んだら、ミケさんの方が年上で先輩なんだけど、作戦立案能力も戦闘の実力もシラーさんの方が上なので、双方納得 の上でシラーさんの指示にミケさんが従う。何事も無く手堅く任務遂行。
 玄武君と組んだら、シラーさんは先輩で年上で実力も上なので上から目線で指示出して 玄武君にあからさまにムッとされる。で、ムッとした玄武君に「文句があるなら自分の判断で動いて良いよ。でも、自己責任でね?君が危なくなっても僕は助け に行かないよ」と嫌味っぽく笑って言う。で、玄武君はムスッとしながらシラーさんの指示通り動いて結局完璧に任務遂行。上から目線でお高くとまってムカつ くけど凄い奴なのは確かなので内心複雑。貴鬼と組んだら、前線には出ないで二人で参謀になってそう。立てた作戦は完璧。イオニアと組んだら、シラーさんは一 応イオニアを立てて指示を仰ぐけど、「好きにやれ。私も好きにやる」と言われてしょっぱなから別行動。でも結果オーライ。
 そしてシラーさんは正に蟹だと思う。甲羅でガチガチに自分を守って、ハサミを振りかざして他者を威嚇するけど、ハサミを奪われて甲羅を剥がされたら脆くて柔らか い内面が露出して一気に弱くなる。ハビさんとパラさん、シオンはシラーさんの「甲羅を剥がされた時の脆さ」に気付いてる。ミケさんは薄々察してる。全然気 づいてなかった(というか、気付くほど接する機会が無かった)のが玄武君。んで、「拝謁」SSでタナトスに助けられて目覚めたシラーさんは「脱皮した(生 まれ変わった)直後の蟹」。甲羅もまだ柔らかくて外敵に襲われたらなすすべなく喰われて終わりと言う無防備状態。しかも本人に自覚が無いので厄介度倍率更 にドン。
 そんなシラーさんを見て、「仲間がフォローしてやればいいじゃん」とドーンと構えてるのがハビさんとパラさん。「ちょっと気をつけて見てやらないと」と思うのがミケさ ん。「危なっかしくて見てられねぇぇーー!!」ってなるのが玄武君。「皆がいるから大丈夫」と放置するのがシオン。放置する振りしてフォローするのが師匠 (デスマスク)。

 ミケさんはシラーさんを物凄く客観的に評価してそう。先輩で年上だけど、「同じ黄金だから、優劣を決めるのは年齢や年数ではなく実力」と 考えて、思う事があっても口には出さない。シラーさんはミケさんを「愚直な番犬」と揶揄しながらその生真面目さには好感を持って評価もしてる(けど伝わっ てない)。玄武君はシラーさんを「確かに年上だし先輩だし実力も上だけど、だからってお高くとまってなんとなくいけすかない奴」と思ってる。シラーさんは 玄武君を「生意気な後輩」と認識してる。でも、はっきり好悪の感情を持つほど接点はない。そんな設定。
 ハビさんパラさんとシラーさんが仲良く(?) なった経緯も考えてたんですが、任務の予定表を貰いに十二宮のてっぺんの教皇宮に行く(朝礼みたいのも兼ねてるので基本全員集合)→予定表を貰って自分の 宮に帰るけど、テレポート不可なので歩いて降りる→必然的にパラさんハビさんと長く一緒にいる→良いとこのお坊ちゃん風なシラーさんに興味を持ったハビさん が話しかけて、蟹と牛の間にいるパラさんが自然に混ざる…な流れかなと。で、ミケさんは無口なので雑談には加わらないけど三人の会話を一番長く横で聞いて る。貴鬼は十二宮にはあまりいない気がするので会話に混ざる事はないかなぁ。  

 最近、私の中の「シラーさんと愉快な仲間たち」に玄武君とミケさんが仲間入りして妄想が非常に楽しいです。非常識組がハビさんパラさんで、常識組がミケ さん玄武君で、シラーさん(一度死にかけて心境の変化があった後)はその真ん中という感じなのですが、実は一番アレなのがシラーさんと言う感じ。当サイトシラーさんは心 の底にはマトモな感覚が残ってるけど、同時に心のどこかが完全に壊れちゃってる人、です。裏社会に片足突っ込んでる上流階級と最低の生活という両極端の世 界で、独特の価値観+常識の中で生きて来たので、「一般常識」が完全に欠落してる。で、シラーさんは「自分が異端である、異常な価値観の人間である」と言う自覚 はある。あるけど、「普通の人」とどこがどうズレてるのか分かってない。ので、時々盛大にとんでもないことやらかす。ハビさんも「自分が異端な人間」という自覚は あるけど、一般常識は知ってるし、自分がどうズレてるかも把握してるので、この辺がシラーさんとハビさんの大きな違い。ハビさんは一般常識と自分の齟齬をすり合 わせたり誤魔化したりしつつそつなく世の中を渡って行けるけど、シラーさんは一般常識を分かってないのでとんでもなく危うい。常識だと思ってぽろっと喋ったことに対して「え?何それ?お前おかしいよ!」みたいな反応されたら焦る。即座に「都合の悪い情報を知った人 間=消す対象」になる。そしてそんな自分の考え・行為に何も疑問を感じていない。そんな危うさ。