| …瞬く間に時は過ぎて12月の半ば。 三巨頭は指定された集合時間より少々早く嘆きの壁の前に集合していた。三人とも、堅苦しくない程度のデザインのスーツにカジュアルすぎないビジネスバッ グを提げるという当たり障りの無い格好だ。ラダマンティスは持ち物を再確認し、ミーノスはゆったりと腕を組み、アイアコスは付箋だらけのガイドブックを熱 心に読み、三者三様に中途半端な時間を潰していると。 不意に空間が揺らいで銀と金の閃光が走り、三人はサッと姿勢を糺した。 ギリギリカジュアルにならない程度にスーツを着崩しシルバーアクセサリーを付けたタナトスと、非の打ちどころの無いセンスながらビジネスっぽさを感じさせずきちんとスーツを着たヒュプノス、そしてふたりの間には。 金色の髪にポンポン付きの毛糸の帽子をかぶり、ホームズのようなコートを羽織り、ふわふわのマフラーを巻いて、両手を双子神と繋いでいる小さな男の子が、青空のような瞳を好奇心で輝かせて立っている。 恐らくこの男の子がハーデスの魂が入った仮初の肉体なのだろうが、こんな小さな子供とは思っていなかった三巨頭はその姿に戸惑いぎこちなく一礼した。 「お前達、そう畏まる事は無いぞ。此度の地上観光は仕事では無く遊びだからな」 男の子の口調は聞き覚えのあるハーデスのそれだが、声は外見相応の幼いものだ。 大人の姿ではないしにしろ、聖戦時の瞬くらいの少年の姿で来ると思っていた三巨頭が無言で頭を垂れていると、タナトスがハーデスを見ながら口を開いた。 「ハーデス様の仮初の肉体をどのようなものにするか我々は幾度か相談したのだがな。魂に負担をかけず、地上で羽目を外す可能性も考慮したらこの姿が良いだろうと言う事になったのだ」 「うむ。余は…じゃなかった、僕は余り地上に行ったことが無いのでな、うっかりはしゃいでしまうかもしれぬ。子供の姿なら多少はしゃいでも大丈夫であろう?」 「え…ええ、そうですね」 「…で、俺達はこの姿のハーデス様を何とお呼びすればいいんです?『ご主人様』ですか?」 「この仮初の肉体の名前は『月桂樹』だ。故に『月桂様』か『樹様』と呼ぶのが良かろうな」 「ツキカツラ、イツキ?」 「何だか舌を噛みそうな名前ですね…」 「金髪碧眼なのに日本人っぽい響きですね。何だか『いかにも偽名です』って感じですけど」 アイアコスの遠慮の無い発言にラダマンティスとミーノスがぎょっとしたが、タナトスは我が意を得たりと言いたげな顔で頷いた。 「いかにも偽名っぽい雰囲気を狙ったのだから当たり前だ」 「え?」 「ツキカツラ・イツキと言う字を日本語で書くとゲッケイジュという文字になる。お前達、月桂樹と聞いて誰を連想する?」 「………。戦女神の弟でオリンポス十二神の一柱、予言神アポロン…ですか」 「そうだ。『月桂樹』は外国の名家の子息で城戸沙織の親類、という肩書で冥妃様や天馬星座達には話をしてある。が、彼らとて馬鹿ではない。ツキカツライツ キなどと言う名前も肩書きも偽物で、この子供の正体はアテナの弟アポロンだと推測するだろう。我々は敢えてそれを狙って、アポロンに似た容姿でこの肉体を 造ったのだ。どんなに押さえても神の気配は隠しきれぬし、うっかりハーデス様が秋乃様を『ベルセフォネー』と呼んでしまった時にも『実は彼はアポロンだから』と言い逃れ出来る故な」 「ああ、なるほど」 「そこまで事態を想定しておられるとは、流石は冥王の片腕たる神でいらっしゃる」 説明を聞いて三人が納得と感心の表情で頷くと、タナトスはますます得意げな顔で微笑んだ。 そんな銀の神をハーデスはニコニコと笑顔で、ヒュプノスはわざと白けた顔をして兄神を見遣って口を開いた。 「…ではタナトス、そろそろ行くか」 「そうだな。ハーデス様も早く地上に行きたくてウズウズされているようだしな。…ではお前達、俺の結界に入れ」 タナトスが片手間のような仕草で張った結界に三巨頭が足を踏み入れた途端、本能的な畏怖と恐怖が彼らを襲った。 余りにも大きすぎて理解の範疇を超えるほどの別世界に棲む者のテリトリーに踏み入ったような感覚。意識して顔を上げていなければ息をするように傅いてしまいそうだ。小宇宙を限界まで抑えても尚この威圧感…。 やはりこのお方は神なのだ。 タナトスの気さくさに忘れかけていた事実を三巨頭が改めて実感していると、その表情を死神は違う意味に解釈したらしい。 子供のように無邪気に微笑んだ。 「安心しろ、怪しい魔術を使う訳ではない。目的地のナゴヤまで移動するだけだ。では行くぞ」 「え?」 何か今、さらっと凄い事言ったぞこの神様。 と、三巨頭が思った次の瞬間。 エレベーターが降下し始める瞬間のような身体が浮く感覚が彼らを襲い、その直後、結界が銀と金の光と共に弾けて消えた。 「………」 一瞬目がくらんだ彼らが目をこすり瞬きして周囲を見れば、そこは既に嘆きの壁では無かった。荷物の無い倉庫のような殺風景な部屋の中、彼らの足元の床には魔法陣のような徴が描かれている。 そして魔法陣をぐるりと取り囲むように、只者では無い小宇宙を纏った人間が12人立っている。何となく見覚えのある顔ぶれだな…と思った瞬間、彼らが何者かを思い出した。 「出迎え御苦労、アテナの聖闘士達よ」 タナトスが彼らを見回して労いの言葉をかけた。その隣でヒュプノスも視線で兄神と同様の意思表示をしている。 …そうだ、彼らはこの時代のアテナの黄金聖闘士達だ。 どうやって人間に怪しまれずに冥界から地上に行くのかと思っていたが…なるほど、アテナの力で『着地点』を造り、聖闘士達が出迎えると言う訳か。 うっすらと二十年前の面影が残る聖闘士もいるが、和解が成立した今になって過去を掘り起こし無駄な諍いを起こす必要は無い。三巨頭が口を噤んだまま神々の後ろに控えていると、代表者らしい聖闘士が一歩前に出て財布を差し出した。 タナトスは中身を改めることもせず、いかにも子供向けなデザインの財布をハーデスに渡し(ハーデスは嬉しそうに渡された財布を肩に斜めがけしたバッグに入れた)、残りを三巨頭に差し出した。 これがタナトスの言っていた『城戸財閥が用意した日本で使えるカードと日本円』なのだろうと、三人は無言のまま一つずつ財布を受け取り懐に入れた。 「携帯電話は駅前の家電量販店でお受け取りください。それ以外の品はホテルの方に用意させました。後ほどご確認の程を」 事務的な黄金聖闘士の言葉にタナトスが淡く微笑んだまま鷹揚に頷くと、聖闘士は礼儀に叶った会釈をして一歩下がった。それを合図に別の聖闘士が部屋の観音開きの扉を開けた。 神々は堂々とゆったりと、周囲を囲む聖闘士を軽く睥睨しながら部屋を出て行き、三巨頭も視線を逸らすことなく後をついて部屋を出た。 「我々をアテナの聖闘士が出迎えるのは聖域が我々を丁重に扱っているという姿勢のアピールであり、同時に体の良い『入国審査』でもある」 倉庫のような部屋を出て、オフィスビルらしい建物の廊下を歩きながらタナトスは人間達の疑問に先回りする形で話し始めた。 「要するに、何かあった時に聖闘士共で対処できるレベルにまで小宇宙を押さえて来たかどうかの確認をしているわけだな」 「タナトスよ、余が封じたお前達の小宇宙など、タナトスとヒュプノスふたり揃っていれば簡単に解除できるではないか。なのに彼らはあっさりとお前達を通してしまったぞ。職務怠慢ではないのか」 「我々が揃っていれば封印解除が出来ることなど奴らは知りませんし、知ったところで対処のしようもないでしょう。それに、一応ですが聖域は冥妃様を『人 質』に取った形になっていますから、その事実は我々に対する十分な牽制です。ですから、先ほどの『入国審査』は互いに敵意の無いことを確認するための儀式 のような物ですよ」 「なるほど」 話しながらエレベーターに乗って一階まで下り、ビルの玄関を出たハーデスと三巨頭は目の前の光景に思わず目を見開いた。 乱立する巨大なビル群、轟音とともに走って行く新幹線、そして道を行きかう多数の車や人間達。 冥界から一瞬で地上に来た事に改めて驚く彼らを面白そうに眺めて、タナトスは正面に聳える大きな建物を指差した。 「ハーデス様達の携帯電話は、ナゴヤ駅を挟んで反対側にある電気屋で受け取ります。建物を迂回するのは時間の無駄ですし、駅の中も色々と面白いものがありますので駅を通り抜けて電気屋に行きます」 「そうか!では早速そのナゴヤエキに行こうではないか!」 「お待ちくださいハーデス様。シンゴウが赤です」 「?」 待ち切れず走り出そうとしたハーデスの手をヒュプノスが即座に捕まえた。怪訝そうな顔で見上げる主君に、眠りの神は信号機と足元の横断歩道を控え目な仕草で指した。 「進む先にあるあの赤い光が灯っている時は道を渡ってはいけません。緑の光がついてから、この白いラインを通るのが地上の規則なのですよ。大事な事ですからきちんと覚えておいて下さい」 「おお、そうか。うむ、そうだな、地上に来たからには地上の規則を守らねばな!」 人間の作った規則に冥王が従うと言うのも妙なものだが、滅多に地上を訪れないハーデスにしてみればそれさえも新鮮で面白いのだろう。双子神と手を繋いだままきちんと信号が変わるまで待って、流れるメロディに感心しながら弾むような足取りで道を渡った。 すれ違う人間達をことごとく振り返らせながら、少年合唱団のような格好の男の子とスーツ姿のイケメン五人という奇妙な一行は名古屋駅構内に足を踏み入れた。 駅構内は平日の中途半端な時間にもかかわらず大勢の人間が行ったり来たりしている。クリスマスが近いためかあちこちにツリーやリースが飾られていつにも増して華やかだ。 ハーデスだけでなく双子神も名古屋訪問は初めてなので、興味を惹かれるものがあれば立ち止まったり、目的地の方向を見失って案内図を確認したり、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしながらもそれなりに迷子を楽しんでいると。 神々の後ろをついていたラダマンティスがさりげなく歩調を速めてタナトスに追いつくとそっと耳打ちした。 「タナトス様。先ほどから我々を尾けている人間がいますが…」 「捨ておけ」 「ですが」 「我々は否応なく人目を引く。それに先ほども言ったが俺は半端に顔が売れているしな、人間がついてくるなどよくあることだ。話しかけてきたら対処すればよい。付いてくるだけなら気にするな」 「…畏まりました」 ラダマンティスが浅く顎を引いてタナトスから離れた時、ふとハーデスが足を止めた。その視線の先には長い行列があり、行列の先頭はどうやらデパートの中にあるドーナツ店のようだ。 怪訝そうな顔をする神々の横で、アイアコスが付箋だらけの手製ガイドブックを取り出した。 「どうやらあの人間達は、『クリスピー・クリーム・ドーナツ』という店のドーナツを買うために並んでいるようですね」 「ドーナツ?たかがドーナツを買うために並んでいるのか?」 「たかが、と言うがなラダマンティス。クリスピー・クリーム・ドーナツが日本に進出した直後は一つか二つしかない店に人が殺到して数時間待ちだったらしいぞ」 「はぁ?数時間?」 「そこまでして食べる価値があるほど美味なのでしょうか…」 「以前、秋乃様のお供をした時に食べてみたが、行列に並ぶ価値があるほど美味いか?と聞かれたら返事に詰まる味だったぞ。なぁヒュプノス」 「そうだな。ミスドとかいうチェーンの物とレベル的には大差ない味だった。甘みはミスドより強いから好みにもよるのだろうが…」 ミーノスの素朴な疑問を双子神が真っ二つにしたが、話を聞いていたハーデスは『行列に並んでも食べたいドーナツ』を食べたくてたまらなくなってきたらしい。かと いって電気屋に用事がある今、行列に並んでまでドーナツを欲しいというのも…と躊躇っている主君の姿を見て、タナトスが柔らかく微笑んだ。 「まぁ、今なら並んでも待ち時間は二十分くらいのようですし、噂の行列ドーナツを召し上がってみますか?」 「え!良いのか、タナトス?」 「そのくらい良いでしょう。此度の地上訪問の目的は観光ですから」 「でしたら、俺らが代わりに並んで買ってきましょうか?その間ハーデス様達はその辺ぶらぶらしてて下されば」 「それは構わぬが…携帯が無いのにこの人込みの中で合流できるか?」 「その点はご心配には及びません。我々は冥闘士、主君の神々の小宇宙などいくら抑えていても追跡できます」 「…なら任せるとするか」 三巨頭とて神々と片時も離れない状況では気詰まりだろう。 そう思った冥王と双子神は彼らにドーナツ購入を任せて名古屋駅の構内を見物することにした。 新幹線の改札の場所を確認し、硝子張りの壁からデパートを見遣りつつ飲食店や土産店の並ぶエリアにやってきたハーデスは、好奇心で目を輝かせて店の商品 を眺め始めた。エリシオンにもインターネットが導入されたおかげで地上の景色や流行りの食べ物は知識として知っていたが、やはり実物を見るのは楽しい。 器の肉体の見た目は『子供の外国人観光客』なので、店員や他の客も微笑ましそうにその姿を見ている。 すっかり保護者気分の双子神が穏やかな眼でハーデスを見ていると、菓子店のショーケースを見ていたハーデスが顔を輝かせて走り寄ってきた。 「タナトス、ヒュプノス!ちょっと来てくれ、面白い菓子を見つけたのだ!」 「?」 「こっちだ、こっち!」 ハーデスは双子神の手を引かんばかりの勢いで駅構内にある喫茶店のショーケースに二人を連れて来た。 これこれ!とハーデスが指した菓子を見て双子神も目を丸くした。 一応、カテゴリ的にはシュークリームになるのだろうが、その形が何ともユニークだった。魚、より正確に言うなら鯱の形をしているのだ。 タナトスが顎に手を当てて銀色の眼をくるりと回した。 「これは、名古屋のシャチホコがモデルでしょうか」 「シャチホコと言うと…確か名古屋城の天守閣に乗っているエビ反りの魚であったな。なるほど言われてみれば良くできている」 「『新・名古屋駅名物宣言』…シャチボンと言うらしいぞ」 「シャチは分かるがボンは何だ?」 「平凡のボンであろうか」 「これのどこが平凡だ。凄まじいインパクトと個性だぞ」 「名前の由来はともかく、この菓子は実に面白い。冥界の皆への土産にしたら喜ばれるのではないだろうか」 「そうですね。では冥界に帰還する前にこの店に寄りましょうか」 「しかし百個以上も土産にするとなると、事前の予約が必要でしょうね。アテナに便宜を図ってもらいましょう」 店のショーケースから少し離れたところでタナトスがアテナに電話をかけていると、ドーナツを購入したらしい三巨頭が随分と大きな箱を下げてやってきた。アイアコスは、ラダマンティスとミーノスの刺さるような視線を全く気にしてない風でドーナツを齧りながら歩いて来る。 その行動に突っ込んでいいのかどうか日本の文化に疎い二神が微妙な顔をしていると、アテナとの電話を終えたタナトスにアイアコスが声をかけた。 「お待たせしました!オリジナル・グレーズドって看板商品を買ってきましたよ!」 「………。ハーデス様より先にお前が食べてどうする」 「あ、申し訳ありません。『揚げたてのアツアツをお召し上がり下さーい』って店員に勧められたもんで。さ、ハーデス様も熱いうちにどうぞ」 「え」 「おいアイアコス。こんな場所で立ったまま物を食べるなど、行儀の悪い事をハーデス様に勧めるな!」 「いやだって、マジ美味いぞ?この揚げたてドーナツ」 死神の呆れ顔にも同僚のきつい言葉にもアイアコスは悪びれた様子もなく、ケロリとした顔でドーナツの箱を開けた。 油を吸った生地の香ばしさとグレーズの甘い香りがふわりと広がって、揚げたてドーナツの抗いがたい甘い誘惑にハーデスは何とも困った顔でタナトスとヒュプノスを交互に見た。 ヒュプノスは複雑な顔をしていたが、タナトスは紙ナプキンでドーナツをくるむと躊躇うことなく口に入れた。 「あ」 「あっ…」 タナトスはドーナツを齧りながら、空いた方の手でドーナツをナプキンに包んでハーデスとヒュプノスに一個ずつ渡した。 それでもまだ躊躇っている弟達を見て、タナトスはドーナツを飲み込むとグレースの付いた指をぺろりと舐めた。 「ハーデス様もヒュプノスもお前達も、せっかくの揚げたてなのだから熱いうちに食べるが良い」 「いいのかタナトス?」 「確かに行儀は良くないですが、日本のマナーや常識に著しく反する行動ではありませんから。ドーナツの立ち食いくらい、『観光客のガイジンサンだからねー』で人間達もスルーしますよ」 「…お前がそう言うのならそういうものなのだろうな」 遠慮がちにヒュプノスがドーナツを口に入れるのを見てハーデスもほかほかのドーナツに齧り付き、その姿にラダマンティスとミーノスもおずおずとドーナツを摘まんで口に入れた。 タナトスの真似をしてグレーズの付いた指を舐めたハーデスは満足げに微笑んだ。 「うむ、実に美味であった。たまには少々行儀の悪い行いをするのも面白いものだな!…ところで」 「?」 「甘いものを食べたせいか飲み物が欲しくなってきたぞ」 「ああ…ではせっかくですからこの喫茶店に入りますか?シャチボンも食べられるでしょう」 「あ!どうせ喫茶店に行くなら、この辺で有名なチェーン店に行きませんか?駅の近くに店があるらしいですよ」 アイアコスが再度お手製ガイドブックを取り出して開いて見せた。 ネットの画面を印刷したらしいそのページには、『コメダ珈琲』という店の紹介が書かれている。首都圏の喫茶店にはそれなりに詳しくなったタナトスも聞い たことの無い名前だ。ざっと中身に目を通すと、なるほど『文化の毛色が違って面白い』名古屋らしいメニューが紹介されている。 双子神が主君の意向を尋ねようと目を向けると、ハーデスがにこりと笑って言った。 「ありきたりな喫茶店はトウキョウにいくらでもあるのだろう?せっかくナゴヤに来たのだからナゴヤ独自の喫茶店に行こうではないか」 「仰せのとおりに、ハーデス様」 「アイアコス、地図はあるか?」 「はい、ここに」 タナトスの問いにアイアコスは即座に地図のページを開いて差し出した。 それを一瞥したタナトスは駅構内の案内板を確認してひとつ頷くと、ではこっちだと言って先に立って歩き出した。その後を小さな男の子の姿をしたハーデスが嬉しそうに付いて行く。 …アテナから連絡を受けた電気屋の店員が待ちぼうけを食らっているかもしれないな。 ヒュプノスとラダマンティスとミーノスはふとそんな事を思ったが、ハーデスが生き生きと楽しそうにしていることが嬉しくて、そんな考えはあっという間に彼らの頭から消えてしまった。 |
| 星矢部屋 | 総合目次 | SS・2012時代 | SS・神話時代 | SS・蟹座達 |
| 盛大にクリスマス(イブ)に遅刻して見事にフラグを成立させてしまったSSです。 前半で一番頭を悩ませたのはハーデスの仮の肉体の名前を何にするか、でした。ジャックとかジョンとか当たり障りの無いものにするか、ハーデスの別名にす るか、いっそ「ギリシア神話のオリンポス十二神の名前をもじった」という未来日記のキャラの名前でもパクろうか…と散々悩み、「仮初の肉体はアポロンをイ メージして作った」という設定を思いつき、じゃあアポロンの別名で何か使えそうな名前は無いか…とWikiを見たけどいまいちピンと来ず、「アポロンの象 徴の月桂樹が名前に使えればいいのにねぇ。………。使えるじゃないか!!」という紆余曲折を経て「月桂樹(ツキカツラ・イツキ)」という偽名が出来まし た。 そして、タナトス達が地上に行く時はどうしてるのか今まできちんと考えてなくて、漠然と「城戸財閥が管理してる建物にテレポートしてそこから地上に出て 行ってるんじゃないかなぁ」と考えていたのですが、このSSできちんと設定を造ることが出来ました。逆に星矢達が冥界に行く時は、アテナの力で冥界にテレ ポートしてるんだと思います。「着地点」は双子神の力で用意してあるんでしょう。 で、名古屋駅でのエピソードは完全に私の趣味です。実在の名古屋駅とは異なる部分も多々あるかと思いますが、その辺は大目に見て下さい。そして今回何よ りも衝撃だったのは、シャチボンが販売終了していたと言う事!以前、名古屋駅で見たのに買わなかったのが悔やまれます…。いつか休養から復帰してくれるん でしょうか、シャチボン。そしてシャチボンの「ボン」の元ネタですが、販売していたお店の名前でしょうか?? そして細かいポイントですが。シャチボンを冥界土産にしよう、というハーデスの言葉にタナトスは「百個以上も注文するなら…」と言ってます。つまりタナ トスは、エリスやヘカーテだけでなく、冥闘士全員にシャチボンをお土産にあげようと何の疑問も感じずに思ったわけです。その辺で彼の心境の変化を表現でき ればと。 そして、真面目一筋ラダ課長と世渡り上手で余り出しゃばらないミノさんでは話が動かないので、自由奔放そうなアイコさんに話を引っ張って行ってもらう事 にしました。クリスピークリームドーナツに関しては、お土産でもらった(=揚げたてではない)ドーナツを食べた私の感想を双子神に言ってもらいました。名 古屋のお店で揚げたて熱々ドーナツが食べられるかどうかは分からないです(笑)。 アイコさんが割と主導権を握ってることに双子神は特に嫌そうな顔をしてない理由ですが。「ハーデス様が楽しければそれでいい」「アイアコスの情報が豊富」「尋ねたら即座に的確な言葉が返ってくる(短気なタナトス的にここ重要)」の三つです。 当初の予定では、この後冥界御一行様がコメダ珈琲に行って、珈琲に柿の種が付いてるとかビーフシチューに焼海苔のってるとかコロッケに問答無用でソース がかかって出てくるとかシノワロール滅茶苦茶甘いとか色んな事にカルチャーショックを受けて、ビックカメラで携帯受け取ってついでにパソコン買ったり、ハ ンズに行ってタナ+ハー+アイコはやわらか戦車(これも更新終了ですと!!)とかフモフモさんに夢中になってグッズ大人買いして、そんな彼らを冷めた目で見てたヒュプ+ラダ+ミノさんは ドールハウス用の小物とか食品サンプルに心奪われてやっぱり大人買いして、パーティーグッズコーナーで下らない物に大受けして色んな物買いこんで、夕食を 食べに栄の味噌カツ屋に向かう途中で久屋大通にあるジャンプショップ(今でもあるのかな)に寄ってナルトやブリーチのグッズを大人買いして、その翌日は名古屋の喫茶店でモーニング を頼んで、パンとコーヒーのセットに赤だしとか茶碗蒸しが付いてくることに絶句したりとか、そんな話を考えていたのですが、どう考えても趣味に走っただけで本編に関係ないので、本編を完結させてから補足として付けたそうと思います。 |