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…供されたデザートや飲み物があらかた無くなった頃、ヒュプノスが控え目な仕草で腕時計に目をやった。 それはつまり時間を気にしていると言う事だが、和平交渉の為に地上に来た彼らが時間を気にする必要があるのだろうか。まさかハーデスに門限を決められてる訳でもないだろうし…と、星矢が俗っぽい事を考えていると。 ヒュプノスの行動の意味を正しく察した沙織が口を開いた。 「では…無事に和平は成立しましたし、今日はこの辺でお開きと言う事でよろしいかしら。お二人にも今後の予定がお有りですから、これ以上引きとめても御迷惑になってしまうし」 「とても有意義な時間が過ごせた。感謝するぞ、アテナよ」 「この礼は後日改めてさせて頂こう」 「なぁなぁ、冥界の神様がアテナと話し合う以外にどんな用事があるんだ?」 「エリスさんとどこか行くとか?」 「エリスは合コン行くとか言ってなかったか?」 聖闘士達が好奇心に負けて質問すると、タナトスは嫌な顔一つせずサラリと答えた。 「死神サミットだ」 「へっ?」 「死神サミットって…えっと、つまり、世界の死神が一堂に会して何かを話し合うって事ですか?」 「ああ。地上で『キラ事件』と呼ばれた騒ぎの当事者をどう処分するか決めるのだ。とは言え、元凶である異世界から介入した死神をどうこうする事は出来ぬから、処分できるのはその死神に与えられた力で神々の領域を犯した人間二人だが…」 「は?え?何?どゆこと?」 「キラ事件の元凶が異世界の死神??」 「何だお前達、アテナの聖闘士の癖に知らぬのか?あの事件は…」 「タナトスさん」 静かに龍神秋乃が死神の言葉を遮って、細い人さし指をそっと可憐な唇に当てた。 要するに『黙れ』と言っている訳だ。 何を言っても相手は冥妃だ。タナトスは怪訝そうにしながらも素直に口を噤み、何故秋乃がタナトスを黙らせたのかも含めて、星矢達の好奇心は半端に刺激さ れたまま宙に浮いてしまった。タナトスが黙った以上、ヒュプノスが口を開く事は絶対にない。聖闘士達が沙織を見ると、彼女はちらりと秋乃を見て神々と星矢 達に曖昧な眼を向けた。 「あの事件に関して、聖域に協力要請はありませんでした。ですから聖域関係者があの事件に関して知っている事は市井の一般人と大差ありません。要するに 『キラと称する日本人が不思議な力で犯罪者を殺していたが、世界警察の裏のトップLによって逮捕・拘束された』以上の詳細は知らないのです」 「そういう沙織さんは詳細を知ってるようですけど…」 「あの事件と深くかかわったヨツバ企業やK病院と城戸財閥は懇意にしていましたから…そちらのルートから噂と言う形で多少の情報を得ただけですわ」 「キラに力を与えたのが異世界の死神だと言う事を知っているのは、Lと彼の側近達、そして直接捜査に関わった数人の刑事だけ。国家元首や警察のトップですら、死神の存在はもちろんキラの能力も知らないのです」 しばしの沈黙が流れた後、星矢は目をぱちぱちしてどうしても我慢できずに疑問を口にした。 「あの…何で秋乃さんがそんなこと知ってるんですか?」 「………」 「ちょっと待て、今K病院と言いましたね?」 「K病院と言えば時々テレビで取材されるほどの大病院だけど、それがどうかしたの?兄さん」 「先日、仕事でK病院の事を調べる機会があったんだが…Lとコンタクトが取れると噂されるK病院の院長の名前は、確か、龍神冬彦…」 「タツガミ?」 珍しい名字だ。 龍神冬彦、龍神秋乃。『冬』彦、そして『秋』乃…。 聖闘士達の驚愕の視線を向けられた龍神秋乃は、ふふ、と笑った。 「ええ、龍神冬彦は私の実の兄です」 「え…じゃ、あの、ひょっとして…」 「さっき沙織さんが貴女を『世界的名探偵の助手として犯罪解決に貢献した事もあるし』って紹介してましたけど、それって…」 「その件に関しては追求しない事をお勧めします。好奇心から首を突っ込んだ人間は必ずと言っていいほど不審な死を遂げていますから。アテナの聖闘士と言っても所詮あなた達は人間、絶対的な神の力の前には無力でしょう?」 「………」 可愛らしい笑顔を浮かべながらの発言内容は恐ろしく物騒で、同時に恐ろしいほど説得力があった。龍神秋乃は全てを知るLの側近の一人で、彼女の後ろには Lと異世界の死神がいる。ついでに冥王配下の双子神もいるのだ、好奇心を満たそうと思ったら命がいくつあっても足りない。 聖闘士達が背筋が寒くなるのを感じながら口を噤んだ時、秋乃の携帯が鳴りだした。 ちょっと失礼します、と断って彼女は携帯を取った。 「はい、秋乃です。…ええ、今しがたお開きになったところです。まだ道が混む時間でもありませんし、一時間後にはそちらに着けるかと…え?どうってどういう意味…。……!ああ、そういうことでしたら」 秋乃は双子神をちらりと見てにっこり笑った。 「お二人とも超がつくイケメンですから期待していいですよって伝えて下さい。…ええ、絶対です。保証しますよ、って。…はい、精々警察に追いかけられない程度に急いでいきます。じゃあ」 電話を切った秋乃は、きちんと姿勢を糺して双子神に向き直り、こほんと一つ咳ばらいをした。 「ギリシアの死神タナトス様、ヒュプノス様。改めて自己紹介致します。私、『警察関係者の影のトップにして最後の切り札・L』の片腕を自負しております、 お抱えパティシエ兼運転手の龍神秋乃と申します。Lの指示により、お二方を死神サミット開催会場の霊界までご案内いたします」 今更ながらの自己紹介にただ驚いてぽかんとする双子神に、Lの片腕は屈託のない爽やかな笑みを浮かべて見せたのだった。 |
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| 今まで以上に趣味に突っ走って、デスノのキャラとか幽遊白書のキャラとか出てきます。 以下、当サイト独自の設定 L(エル)=竜崎(リュウザキ) 本名、年令、血液型など全て不明。 名前・顔・居場所の全てが謎に包まれた世界最高峰の私立探偵。警察では解決できない難事件をことごとく解決して来た、「警察関係者の影のトップ」あるいは「最後の切り札」と言われる人物。FBIを始め世界中の警察を意のままに動かすことができる。 原則的に10人以上の被害者・100万ドルの被害額が発生している事件の解決を専門としている。2002年当時、彼の能力は捜査機関5つ分、情報機関7 つ分だと言われていた。Lの死は凶悪犯罪と迷宮入り事件の増加に直結するので、彼自身の身の安全のために『Lとして』人前に出ることはない。いわゆる『安 楽椅子探偵』だが、ヒキコモリではないので適当な仮名を使って人前に出てくることは珍しくない。 椅子の上に膝を抱えて座る癖がある。相当な甘党。 凶悪犯連続殺人事件(通称キラ事件)で、『Lを信じ命をかけて事件を捜査する』と約束した刑事5人の前に初めて『L』として姿を出した。が、最終局面で その刑事達がLを信じずL独自の捜査方法に反対したために彼は捜査本部内で孤立、更に昔ながらの片腕を殺され自身も命の危機に晒される。 ↑ここまで公式設定 ↓ここからオリジナルと言うか妄想設定 九死に一生を得た後、日本警察とは繋がりを断ち、龍神兄妹や独自の仲間と共にキラ事件を捜査、解決に導く。 龍神秋乃(タツガミアキノ) 年令:24〜26歳 職業:Lのお抱えパティシエ 有名洋菓子店でパティシエとして働いていたところを、その才能を竜崎(L)に見込まれて彼のお抱えパティシエとなる。ヘッドハンティングされた際に店を プレゼントされており、個人の口コミ・ブログを含む一切の宣伝活動を禁止しているにもかかわらず彼女の店は常に繁盛している。ちなみに桂木弥子も店の常 連。 Lの下で働くまでに多少の紆余曲折があり、キラ事件を共に解決したこともあってLとは深い絆で結ばれている。キラ事件以前のLを知る数少ない人間の一人。 美人と言うより可愛いタイプ。見た目に似合わずテコンドーの達人で、しつこいナンパ相手を蹴り飛ばすこともしばしば。 普段は苗字ではなく名前の「秋乃」を名乗っている。これは「秋野」という苗字だと思わせるため。兄・冬彦を知る人物に対しては水戸黄門の印篭のような効果が(良くも悪くも)あるので、「龍神」という苗字はあまり名乗らない。 龍神冬彦(タツガミフユヒコ) 年令:31歳 職業:表向きは医者。裏ではLへの連絡役。 龍神秋乃の兄。日本屈指の大病院、K病院の表側の院長。「三次元のブラックジャック」の異名を持つ天才外科医だが、それは天賦の才ではなく本人の努力に 寄るもの。幼い頃読んだ「ブラック・ジャック」に感銘を受け医者を志す。医大入学時、K病院院長・如月達也の一人娘に一目惚れ、10年の交際を経て結婚。 いわゆる「逆玉結婚」だが、その確かな才覚は如月達也の正当な後継者として各方面から一目置かれている。 妹・秋乃の店のオーナーがLであることはキラ事件発覚後から薄々勘付いていた。Lが日本警察と決別したのをきっかけに彼を全面的に支援し、キラ事件解決 に多大な貢献をした。事件解決後は、死亡したワタリの後を継ぎ、Lの窓口の役割を担っている。このことは裏社会に通じる人間や警察上層部では半ば公然の秘 密となっている。 ちなみに義父の如月達也は、日本国内だけでなく外国の要人にも強いコネを持つ裏社会の超大物。 |